表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/36

22

※―※―※―※―※




渡来君は、場所が変わっても、周りにいる人間が違っても、とにかくどんな時でも皆に好かれる。

自分の外見の良さなんてまったく気にしない天真爛漫さ。困った人がいれば躊躇なく助ける優しさと、誰とでも親しくなれる屈託の無さ。


…そんな渡来君と自分とでは、つり合いなんか取れない…。





昼休み。古賀は、目の前に理子がいる事も忘れて思考の海に飛び込んだかと思えば、数秒ごとに溜息を吐きだした。


吉埜を見ていると、昔はもっと温かな気持ちになれた。それなのに、いつの頃からか…、一緒にいると苦しくなる一方だ。


吉埜に真剣に告白する女子達。仲良くなろうとする男子達。

その中でも亜海は別格で仲が良く、朋晴の存在は更にその上を行く。


自分が隣にいてもいいのか…。彼の周りには、もっと彼に似合う人がたくさんいるのに…。


中学の太っていた時と比べれば、今は随分と人並みの容姿になれたと思う。こんな自分に告白してくれる子さえいる。

でも、僕の場合はまやかしだ。いくら外見を整えても、それは即席の張りぼてにしか過ぎない。






古賀は、本来の性質が優し過ぎる事もあって、自分を高く評価する事が出来ないでいた。


今や、学校内での注目度100%の存在。

成績優秀で運動神経も良く、モデルのような容姿を持っている。

それなのに奢ることなく控えめで優しい。

そんな人間が好かれないはずはない。

ただ、その事に本人だけが気付かないでいた。


理子は、目の前の席に横向きで座っている古賀を見ると、少しだけ首を傾げた。


「古賀君」

「え?」

「そんなに溜息ばかり吐いていると、幸せが逃げてしまいますよ?」


ふわりと微笑む理子の天使のような柔らかい空気に、絡まりまくった古賀の心がフワッと解ける。


「ごめんね。少しボーっとしてた」

「考え事ですか?」

「…うん。ちょっと」


古賀は、元気が良くてテンションの高い同年代の女子が物凄く苦手だった。どうしていいのかわからなくなる。

けれど、理子は違う。

一緒にいて物凄く落ち着くし、心が安らぐ。

こんな女の子に出会ったのは初めてだ。


逆に、吉埜といると荒立つ感情が苦しい。

他の人間と親しくしているのを見るだけで、心がギュッと締め付けられる。

こういうのを独占欲というのだろうか。

これ以上近くにいたら、きっといつか耐えられなくなる。


息がつけなくなるようなこの苦しい思いが何からくる感情なのか、怖くて考えたくなかった。

認めたら、もっと苦しくなるのがわかっているから。

それなら、彼とは一定の距離を置いた方がいい。こうやって彼以外の人といる方が、心が休まる。

それに、自分のこんな感情を彼に知られたら、きっと気持ち悪がられてしまうだろう。

それがいちばん怖い。


…だから…、これでいいんだ…。


昼休みがもうすぐ終わる事を告げる予鈴のチャイムが聞こえると、これから吉埜の隣の席に着かなければいけない事を思って、古賀は静かに俯いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ