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「最近の古賀ちゃん、前みたいに吉埜にべったりくっついてないね」
授業の合間の休み時間。空いた古賀の席を見ながら呟いた亜海の言葉に、吉埜は「そうだな」と返した。
亜海に言われるまでもなく、最近の古賀が距離を置いている事に吉埜は気付いていた。
徐々に徐々に、緩やかに吉埜との時間を減らしていく古賀の行動は、そのままある行動に直結していた。
それは…。
「俺といるより藤川といる方が楽しいんだろ。古賀も男だし」
吉埜が笑いながら言う通り、古賀は最近、隣のクラスにいる理子の所によく顔を出していた。
一部では、実は2人が付き合いだしたのではないかという噂も出ている。
「吉埜にだけは言っておくけど、理子って古賀ちゃんの事好きなんだよ。だから、このまま2人がうまくいけばいいな~って思ってるんだ」
「そうなんだ。…まぁ、古賀も俺とばかりいないで、もっと他の奴とも付き合った方がいいだろうし、いいんじゃない?」
男子達から高嶺の花と言われている理子が、古賀の事を好き。
その事実に、吉埜は何故かチクリとした胸の痛みを感じた。
一緒にいる姿を見ても、しっくりくる2人。これ以上ないほど似合っている。
そう思うのに、「応援してあげようね」という亜海の言葉に、吉埜はハッキリ頷く事が出来なかった。
昼休み。ご飯を食べ終わった吉埜は、ポカポカとした陽射しの心地良さに、襲いくる眠気と戦うつもりもなく机に突っ伏していた。
浮き沈みする意識の中で本格的に深い場所へ落ちて行きそうになった時、制服のポケットに入れてあった携帯のいきなりの震動に、ビクっと肩が揺れた。
それにより完全に目が覚めてしまった自分に眉を寄せながら携帯を取り出すと、ピカピカと光が点滅している。どうやらメールを受信したようだ。
眠りを妨げたのは誰だ。そんな恨み事と共に開くと、なんの事はない、送信者は朋晴だった。
【今日早く学校終わるから一緒に帰ろうぜ。そっちまで行くから】
朋晴は、自分の方が早く終わるとわかれば必ずメールをくれる。
最初は、高校が離れてしまえばいくら幼馴染でも距離が空いてしまうだろう…と、寂しく思っていたが、朋晴のマメな性格に助けられて距離感はまったく変わらない。