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次の日。

またも吉埜は用事を頼まれ、ただでさえ長くはない貴重な昼休みの時間を、担任の河野の為に使っていた。


「河野ー、なんで俺ばっかり用事を押し付けるわけ?」

「渡来が可愛いからに決まってんだろ。愛情だよ愛情。っていうか呼び捨てにすんな」

「横暴教師なんて呼び捨てで充分だろ」

「ほ~、言うねぇ…。もっと用事を増やしてほしいか」

「すみません河野様」

「はい、このホチキス止めも追加」

「は?!馬鹿言ってんな!」

「誰が馬鹿だって?」

「河野様」

「………」


似たものコンビとでも言おうか…、この2人のやり取りに嫌味はなく、職員室という同じ空間にいる誰もが面白そうに見守っていた。


頼まれた資料を職員室にいる河野の元に運んだはいいが、追加とばかりに資料の山を示された吉埜は、手渡されたホッチキスを河野の手に無理矢理押し戻して職員室から逃走した。

後ろから、聞き覚えのない他の教師の「あ、逃げた」という声が聞こえたけれど、知るか、もう付き合っていられない。



職員室から出て、開けっ放しにしてあった扉を勢いよく閉める。

職員室と廊下が区切られた事でようやく一息ついた吉埜は、扉の脇に古賀が立っている事に気がついて目を瞬かせた。


「あれ?もしかして呼び出し?」

「違うよ。渡来君を待ってた。手伝えなかったから、せめてここで待ってようかと思って。…昼休みなのにお疲れ様」

「………」


なんでもないようにお迎え宣言をされた吉埜は、なんだか妙にくすぐったい気持ちになって顔を緩ませた。


予鈴まではまだもう少し時間があるから…と、慌てる事なくのんびりと教室へ向かう2人の姿に、女子からの視線が集中している。

憧れなのかなんなのか…、少数ながら男子からも好意的な視線を向けられているのを感じた2人は、互いに目を合わせた。


「古賀ってホントモテるよな」

「渡来君は男女関係なく人気あるよね」


同時に発した言葉の内容に、思わず苦笑する。

お互いが、この視線は自分に向けられているものではないと思っている。


まぁどっちでもいいか。


吉埜は肩を竦めた。







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