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教室内は、まだ時間は早いにもかかわらず誰ひとり残っていない。もぬけの殻状態。

いつもが騒がしいクラスなだけに、シンと静まり返った教室に違和感を感じるほど。


「亜海達も帰ったみたいだし、俺達も帰ろうぜ」

「うん」


机の上に置いていたバッグを肩にかけて横を見ると、古賀は真面目にも色々な物を自分のそれに詰め込んでいた。

なんだかとても重そうで、振り回したら凶器にもなりそうな厚み。


「待たせてごめんね」


そんな重そうなバッグを軽々と片手に持った古賀に驚きながらも、吉埜は表向きは淡々と頷いて歩きだした。



家が同じ地区にある事から、もちろん帰る道もほぼ同じ。

いつものように慣れ親しんだ道を並んで歩きながら、吉埜は揶揄混じりに古賀に問いかけた。


「あれだけ毎日告られといて、付き合いたいと思うような子いないのかよ」


住宅街の中のそれほど幅の広くない道を進みながら、隣を歩く古賀をチラリと見上げた。


顔を真っ赤にするか、動揺して視線を彷徨わせるか。

さぁ、どっちだ。


…と面白半分に様子を窺ったけれど、実際は吉埜の予想を見事に外した反応だった。


「………古賀?」

「え、あ、うん。ゴメン」


珍しい古賀の無表情に驚いて名を呼ぶと、そこでようやくいつものように焦った様子を見せる。

あまり負の感情を見せない古賀だが、今の無表情の中には、苛立ちのような苦しみのような何かが見えた気がして、戸惑った吉埜は眉尻を下げた。


「悪い。軽い気持ちで聞いただけなんだけど、イヤだった?」

「ううん!そうじゃなくて、僕の方こそごめんね。どう答えればいいのかわからなくて黙っちゃって…。…告白してくれた人の中に、そう思える人はいなかったから」

「そっか。…うん、まぁ別に、付き合う事だけが全てじゃないし」


いつもの空気に戻った事で、吉埜は笑いながら古賀の腕をパシパシ叩いた。


そこからは他愛の無い日々の話に戻ったけれど、古賀の表情に残された僅かな翳りに、吉埜が気付く事はなかった。









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