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気が付くと、亜海達と4人で行動を共にする事が自然になっていて、二ヶ月近く経てば、そこに違和感など存在しなくなる。
そうなってから尚更浮き彫りになってきたのが、古賀と藤川の性質だ。
奥ゆかしく、穏やかで優しいところが瓜二つ。
二時間目の休み時間、吉埜は、隣の席で次の授業の準備をする古賀を眺めて頬杖をついた。
「藤川とお前って、空気が似てるよな」
「え?」
「2人でいるところなんて、なんていうかこう、見事に馴染んでるっていうか…しっくりくるっていうか…」
「………そうかな」
何故かあまり嬉しくなさそうに呟いた古賀は、少しの間黙っていたが、何か意を決したように顔を上げたかと思えば、次の瞬間、
「…渡来君って、女子の中で梁川さんの事だけは名前で呼ぶよね?」
そんな事を言ってきた。
言われて初めて気が付いたけれど、確かに吉埜は、亜海の事だけは名前で呼ぶ。
「そういえばそうだな。…んー…なんでだろ、呼びやすいから?」
頬杖を外して首を傾げる吉埜を見て、古賀はそれ以上何も云わずにいつもの曖昧な笑みを浮かべ、前に向き直った。
「あれ?理子1人?吉埜と古賀ちゃんは?」
「2人ともそれぞれ女の子に呼ばれて行ってしまいました」
「今日は吉埜もか…」
放課後、1人でいた理子に問いかけた亜海は、返ってきた言葉に「ヤレヤレ…」と肩を竦めた。
古賀の放課後は、一日一告白と言われている事からもわかるように、必ず誰かからのお呼び出しで始まる。
そして古賀ほどではないが、吉埜もけっこうな頻度で呼び出しされている。
「じゃあ今日は久し振りに二人で帰ろっか!」
「はい」
にっこり笑って頷く理子と並んだ亜海は、歩くたびに周りからかけられる声に手を振って応えながら昇降口へと向かった。
ちょうどその時吉埜は、亜海達とすれ違いで教室に戻ってきたところだった。
自分の席で帰り支度をしていると、同じく呼び出しから戻ってきたらしい古賀も数分遅れで入ってくる。
「渡来君」
「あ、古賀も今戻ってきたのか」