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「朋晴ー。このゲームつまんない」
「ん?…ってそれ、面白いからオススメって言って俺に買わせたの誰だよ」
「あ?…あぁ、俺か」
吉埜は、コントローラーを片手に思わずハハハと誤魔化し笑いをした。
そういえば、朋晴が何かゲームが欲しいと言ったから、これ面白いんだってー、なんて無理矢理押し付けた記憶がある。
ヘラっと笑った吉埜を見て、朋晴は嘆息しながら苦笑した。
土曜日の夜。毎週末恒例の三井家訪問で遊びにきていた吉埜は、朋晴の部屋で、まるで自分の家かのように寛いでいた。
これも、生まれた時から一緒という幼馴染ならではの気安さ。
隣に住み、互いの両親同士が親友となっている今、血のつながった親戚よりも親戚らしい家族ぐるみの付き合い。
渡来家と三井家は、どちらに行っても自分の家同然なのだ。
「うわ、また殺られた…。…あー、俺もうコレ駄目。クリアする気も失せた」
「そんなに難しかったか?」
吉埜の後ろに回り、その両側から手を伸ばした朋晴が代わりにコントローラーを持って適当に戦い始める。
「あ?なんだ、そんなに難しくないだろ」
朋晴が言う通り、画面の主人公は次々と敵を倒していく。
という事は、ゲームがうんぬんではなく、ただ単に吉埜が下手だったという事。
耳元でフッと笑われた吉埜は、八つ当たりとわかっていながらも、真後ろにいる朋晴の腹に肘打ちを食らわせた。
月曜日になり、玄関から姿を現わした吉埜が眠そうに欠伸をしているのを見た古賀は、不思議そうに目を瞬かせた。
「おはよう渡来君。眠そうだね」
「おはよ。…土日の間ずっと朋晴の家にいてさ、昨日も遅くまでゲームしてたから朝起きるの辛くて」
そう言いながらまた欠伸を噛み殺す吉埜に、古賀は「そっか。仲良いね」と微笑むだけだった。
入学から一週間も経てば、慌ただしい行事はほとんど片付き、本格的に授業が始まる。
生徒同士でもそれぞれの人間関係が徐々に築かれはじめ、学校内での個人の立場も確立されてきた。
例えば、亜海。
彼女はクラスのムードメーカーであり、その元気で可愛い様子から男女共に慕われ、どこにいてもとにかく目立ち、クラスでは学級委員に任命された。
例えば、隣のクラスの理子。
彼女の清楚で儚げなその独特の空気と、性格の上品さ、穏やかさから、男子の中で高嶺の華として話題に上りつつある。
例えば、吉埜。
亜海と同じくクラスのムードメーカーを担い、明るく裏表の無い性格と、甘く可愛らしいにも関わらずどこかキリっとした空気を漂わせる容姿が人気に拍車をかけ、既に校内のアイドル化している。
そして古賀。
彼の場合は、理知的で端正な容貌、スリムだけど引き締まった長身。更には、同年の男子達にはありえない程紳士的で穏やかな物腰が、校内の女子に絶大な人気をもたらしていた。