11
どうやら一人の女子を囲んで盛り上がっているらしい。
隣に並んだ古賀も、首を傾げてその集団を見ている。
そんな2人に気付いたのは、その集団の中でも一番目立っていた亜海だった。
「2人とも、理子が可愛いからって見惚れないように」
ニヤニヤと笑いながら揶揄の言葉を放つ。そのせいで、女子4人集団がいっせいに振り向いた。
「うわっ、カッコイイ!亜海のクラスの子?」
「あの子ジャ〇ーズっぽい!」
なんだかとても楽しそうで、そして仲が良さそうな彼女達につられて微笑んでしまった吉埜だったが、次の瞬間その視線が女子の真ん中に立っていた1人の生徒に吸い寄せられた。
華奢で色白。綺麗なロングストレートの黒髪と清楚な容貌で、まるで日本人形のような子。
「うわー、ホントに可愛いな…」
思わず声に出してしまった。と同時に、その子の顔が真っ赤に染まる。
困ったように伏せた眼といい、その反応といい…。
「……古賀の女子バージョン発見?」
「え?」
吉埜の呟きに、古賀は意味がわからず目を瞬かせた。
身体測定が終わり、教室に戻ってから詳しく話を聞けば、彼女は亜海の幼い頃からの親友で隣のクラスにいるという。
名前は藤川理子
外見だけではなく、性格も見た目通り大人しく優しいとか。
絶滅危惧種指定の大和撫子そのものらしい。
知れば知るほど、古賀の女子バージョンにしか思えない。
まだ入学初日にも関わらず、まるで旧知の友のように親しくなった吉埜と亜海は、せっかくだから一緒に帰ろうと話が盛り上がり、今現在、吉埜・古賀・亜海・理子の四人で正門までの道のりを歩いている。
「2人とも中学でモテたでしょ?」
「んー…、俺の幼馴染がとにかくモテてたからな~」
「ぇえ?!2人よりもモテるって、それってどんななのよ?!」
吉埜は、あえて古賀の中学時代の事を言わずにさらりと受け流したけれど、どうやらそれは成功したらしい。亜海の目が、未知の人物へ向けての好奇心で驚愕に見開かれている。
それにしても、さっきから喋っているのは2人だけ。古賀と理子は楽しそうに話を聞いているが、まったく言葉を発しない。
こんなところまで似た者同士だ。
チラリと横目で古賀を見ると、「ん?」と首を傾げてにこにこと微笑まれる。
そんな時。突然亜海が悲鳴を上げた。
「ちょっ!ちょっとちょっと見てよ吉埜!あの子凄いカッコイイ!」