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2人が通う高校は男女共学の普通高校で、県内でも中の上くらいのレベルだ。
あらかじめ受け取っていた書類に記載された内容から、またも同じクラスになったと知った2人は、同じ中学という事からもわかる通り家もそれなりに近かった為、特に異論も無く一緒に登校する事に決めていた。
この学校は、近辺の高校の中では唯一の学ラン・セーラー服の制服だ。
ファスナータイプの濃紺の制服は、理知的な容貌の古賀によく似合っている。
「はよー」
「おはよう渡来君」
玄関のドアを開けた先で、制服をキッチリと着こんだ古賀が立っている。相変わらずのふんわりとした微笑みに、朝から和やかな空気が漂う。
「こうやって改めて見ると、ホントに古賀って格好良いよな」
「え?…か…格好良い…って。でも、渡来君も、可愛い…よ」
そこで思いっきり古賀をド突いた吉埜だが、自分は絶対に悪くないと思う。
「格好良いって言え!なんで俺だけ可愛い扱いなんだよ」
「ご、ごめん」
顔を真っ赤にしている古賀は、慌てた様子で謝った。
それを見た吉埜は内心で、こんな外見で中身も良くて…、ホントに高校生活無事に送れんのかな…、と、今日から始まる新生活を目前に不安を拭い切れなかった。
それでも最初から知らない人間に言い寄るような勇気ある輩はいなかったようで、入学式は何事もなく無事に終わった。
視線の集中度合いが凄かったとはいえ、直接的何かが無ければいいか。
そんな風に思っていた吉埜が考えの甘さを実感したのは、翌日の事。
今日も同じく一緒に登校した2人が教室に姿を現わした瞬間、一斉にざわめきが起こり、それに驚いている古賀を席に座らせた傍からクラス中の生徒に囲まれてしまった。
これにはさすがの吉埜も、目を瞬かせて固まるのみ。
「ねぇ!2人とも名前は?」
「昨日も一緒にいたよな?同じ中学かよ」
「2人とも彼女いるの?」
「絶対いるだろ」
………朝から凄いテンションだなオイ…。
吉埜が顔を引き攣らせるくらいだ、古賀に至ってはビックリして固まっている。
そんな中、明るく力強い声が2人を助けた。