オープニングトーク
部長さん:中二病
僕:恋愛系が好き
夕陽に照らされて高台にある校舎を赤く染める。吹き込んでくる涼風に黒髪をゆらせている少女の顔は、逆光で見えない。私は、よく見えない少女の顔色をうかがいながら教室に足を踏み入れる。
「申し開きは?」鈴の音を想わせる凜とした声が少女の口から発せられる。機嫌が悪そうだ。それもそうだろう彼女は、私が所属するクラブの部長なのだから。
「すいません。ホームルームがのびてまして。」
「違う・・」少女・・・部長は、怒気を強めて言う。
「夕陽に赤く照らされた校舎にたたずむ美少女。コレを見てアナタは、何も想わないのか。」
自分で美少女というのは、どうかと思うが部長が切れ長の瞳に美しい黒髪、白磁の肌をもつ美少女であることは、まぎれもないしこのシチュエーシに合うのは、美少女しかないのだ。部長は、スリッパの音を鳴らして接近。息がつくほど顔を寄せ。
「私が魔物使いだったらどうする?」
夕陽に真っ赤にそまった教室。そこにたつ美少女。それらのロケーションが部長をつき動かしたのだ。卒業せぬ厨二病患者である部長は、その手の作品によくあるロケーションにでくわすと物語の登場人物になりきってしまうのだ。他の部員がいないのは、このロケーションを見て私一人で行くのが適任だと判断したのだろう。私は、手っ取り早く終わらせるべく部長を手刀で軽く切る。するとノリのよい部長は、大げさに切られた振りをして適当に転がり回ってから。
「10点、さっそく活動を始める。」
と何事もなかったかのように着席して机の上のファイルの束に目を通すとソレを私にも渡す。
「来月の予定だ。」
ファイルに並べられている来月刊行予定となっているライトノベルのタイトルを蕩々と読み上げながら部長は、幸せそうにわらう。私の属するライトノベル研究会、通称ライ研の活動は、月一回来月以降に発売されるライトノベルについてタイトルやあらすじから中味を妄想して感想を言い合う研究会である。