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第八話


ゆきぃ~平和がきたよぉ~」


「だ、だいじょーぶなのいっちゃん…」


幼稚園の中でゆきの手をとってくるくると回る。おそらくこれが大人だったら精神科へと連れて行かれるだろう。

さて、この一週間をまとめてみせよう。


――トラックを引いて山を回っていた。


…うん、意味不明だ。

帰ってきたときには、インフルエンザということになっていて、ゆきが死んだような表情をしている俺の顔を覗き込んだことにより、平和というものを実感した。

ゆきは平和だ。心のオアシスだ。

家が戦場としたら幼稚園児のゆきがいる半径3メートルは、和風のお茶室。

――のほほんとお茶でも飲みたい気分ですな。


ゆき、もう離れない。」


「ふえ!?う、うんっ私も一生離れないよ!」


幼稚園児だからこそ許されるプロポーズまがいの言葉。

――いや、冗談じゃなくて本気なのだけど





さて、家は戦場というたとえをいったが、はっきりいってしまえば、たとえとはいえない。

戦場だ、戦場。平和ボケジャポンの一般市民Aという存在である俺にとっては戦場だ。

気を抜けば寝技をかけられ、トラックをひかされる。問答無用だ。

生死を分けた戦いがそこにある!(主に貞操の生死的な意味で)


ゆき~なんで母さんはあんなに鬼レベルで強いの?」


「え?いっちゃんのおかーさん?あったことないよ?」


あぁ…そういえばそうだったなぁ、遊びにいかせれば何かすごいことしそうだからいかせないようにしてたんだ。

母さんはゆきを見た瞬間に「他の女に乗り換えるのね!私はお遊びだったのね!」とかいいそうな気が「アナタに…お義母さんとはいわせない…」

……え?

ギギギッという油さしが足りていない機械のような音をたてて、後ろを向くと、修羅がいた。

顔は笑顔、雰囲気は修羅。


「な、なんでいるんですか?おかーさま…」


そういえば、にっこりとしながら一枚の紙を渡す。

『授業参観日』そう書かれていた。


「幼稚園に授業参観日なんてあるのか!?」


「しらなかったの?いっちゃん。」


聞いていなかったというか、幼稚園の行事については無頓着というか。

家のことについて色々と事が起こりすぎていて、そちらのほうに手をだせなかったというか。


「…母さん。来るの?」


「いや、来たのさ。」


――今日だったんですか。

いや、まぁここにいる時点で気づくべきかもしれないけど…


「さていこうよいっちゃん!最高の愛を見せてね!」


ずりずりと襟首をつかまれ引っ張られる。


「うぉおおお…なぜだ、なぜ俺は…」


「もうあきらめたほうがいいんじゃないかな?」


ゆき…キミって以外とシビアなんだね。











「今日は絵を描きましょう、お母さんの絵をかこうね!」


「「「「はーい!!」」」」


元気だなァ…と年寄りじみた事を思いながらも俺はクレヨンをとって描き始める。

最高に才能を活用して書き上げてやろうじゃないか

そう思って集中してみると、教室がある程度静かになっていく。

そうすれば――お母さん方の声が聞こえてくるわけで






「お姉さん?」


「なんでここにいるのかしら?」


「小学生だよね…?」





はっはー、だぁれのことなのかなぁボクわかんないやー(現実逃避)


「いっちゃんっ!おかーさんがみてるよー!」


「…え?お母さんだったの?」


――よし、よくわかった。よくわかったからこれ以上やめてくれ。


「え、あの――アナタおか…「待ちなさい、鈴木さん」はい?」


誰か母さんに『本当にお母さん?』とでも聞こうとしたのだろうか、それをとめる人物がいた。

ナイス判断だ、なぜとめたかはわからないけど、これ以上言わせれば言ったお母さんがあのアルバイト君みたく星になるだけだ。


「え、あの、何か――?」


「あの人は人型核弾頭という異名を持つ人類最強の人間よ。キングコングを絶滅させたと言われているほどの人物よ。」


…いやツッコミどころの多さは理解できたのですが、それ以前にキングコングって生きていたんですか?というかキングコングって種族の名前なんですか?


「斉藤さん、ご冗談を――ふぇ?」


鈴木さんが冗談だと思って笑おうとしていると、その肩を掴むものがいた。

――俺の母さんだった。

母さんは鈴木さんの肩をちょっと引いて後ろに下がらせると、斉藤さんの肩に手をおいた。

にっこり笑って――一言










「しゃべりすぎよ?」








鶴の一声ならぬ、修羅の一声、泣く子も黙る以前に泣く子が気絶する一声を浴びせる。


「すすすすすすすいませんでしたッ!」


…斉藤さんがガクガク震えはじめる。…母さん。












――そんなことがあったなんて忘れた。

俺はずっと絵を描いていたのだ。うん描いていたんだ、描いていたんだよな?


「ふぅ、終わった終わった。」


写真のような一枚ができあがって、息を吐く、終わったしのんびりとしていようか。


「終わったの?」


見上げればみゆき先生。コクリと頷けば絵をとってみて――唖然とする。


「すごっ!?うぇぇええ!?」


声を上げて、すぐに口を手で無理やり閉じる。

そして絵を返し


「だ、題名をつけましょう。」


そういってくる。題名か…


「母さんじゃ、ダメ?」


「お母様にフォーリンラヴなら最高よ。いっちゃん!」


「…なんで普通に話にはいってきてるのさ。」


「基本的に描いている子供の側に近づいてもいいのよ?」


そうなの?という視線をみゆき先生にしてみれば頷かれる…事実のようだ。


「じゃ、題名は母さん、でいい「お母様にフォーリンラヴ」…えっと「お母様にフォーリンラヴ」…はい、それでいいです。」


お母様に恋に落ちる…どんなマザコンかね、俺は…


「うへへへ、愛の言葉受け取ったよいっちゃん!」


「しまった!?地雷だったか!」


「続きは家で!」


続きはWEBで!というノリで言わないでくれ

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