第五話
朝起きれば――
野原のど真ん中にいた。
「Whaaaaat!?」
「あ、起きたんだねいっちゃん!」
声がしたほうをみれば母さん――母さん?なにをやってるんだい?縄なんかくくりつけて
「な、なにやってんの?なんでトラックに縄をくくりつけ――なんで俺にもくくりつけられているの?」
「ここはとある山よ。」
「俺になにをしろっていうの!?」
「とりあえずトラックはオモリだから。」
いや、ごめん、話がかみ合わない。とりあえず母さんのいったことだけを整理しよう。
・ここはとある山
・トラックは重り
うん、わかんない
「俺になにをしろと!」
「走ればいいの」
「えぇ…トラックをつけて?」
「うん☆」
うん☆じゃないよ!?というかいつ俺たちはここにきた!起きたっていってもいつねたんだ俺は!?
っていうかとある山ってだけじゃ不安だ!ここはどこだ!?
っていうかなんでトラックつけてんの!?走れっていきなり何事!?
あぁもう突っ込みどころがありすぎてどこから突っ込めばいいかわからない。
「大丈夫☆おかーさんもわかんなかったから☆」
知らないよ!?ってお母さん『も』…だと!?
「母さんもやったのか!?」
「うん、じゃ、やりましょうか。言っておくけど地面につけて引きずるだけじゃ軽い軽いなんて思ってるかもしれないけど。」
「いや、いやいやいやいやいや!思ってないよ!?思ってるやつがいたら今ここで地面に額をこすりつけて頭を踏みながら謝罪をつげさせるよ!?」
「おかあさんおもっちゃった☆」
「うん、母さんは不思議じゃないね。」
「…チッ」
「(舌打ち!?)」
「てへっ☆」
舌を出して頭をコツンッとやる母さん。
――見た目年齢的にやったら、一部の趣向の方々には『萌え~』といわれるだろう。
キュンキュンする人たち続出だ。
でもこの人は母さん。
はっきりいうと俺の中でこの行動は
なにやってんだこのおばsドゴンッ…いやなんでもない。うん、目の前の地面が何か殴られたかのように陥没してるとかないよ?
「か、母さん、どどどどーしたのかなー?」
「…プチッとされたそうなのがいたから☆」
――これ以上なにか考えたら潰されること間違いなしですか、はい。
「か、母さん!やろう!」
「うれしいわ、いっちゃん!私の愛を感じたいなんて!」
「だが断るっ!」
全力逃走開始だ!
「えうぉぅ!?」
何かにひっぱられ、こける…腰に紐が…そしてそこにはトラックが括り付けられている
「逃げられない…だとッ!?」
「いっちゃーん、I LOVE YOU!FOREVER!」
どうすればいい!というかどうしてこうなった!
逃げられない逃げられない逃げられない!
いや、もうあの手の愛情表現とか慣れてるけど、服の中に手を入れるのだけはいただけない!
紐を切るか!?ってワイヤーかよ!
――どうするどうする!
そういえば一瞬だが持ち上げる力がでたよな!あの感覚を思い出せ!
「うぉおおおおおおおおりりりりりっぺぶっ!?」
走り出したら数cm動いた、だが――そのまま足を踏み外してこける。
「いっちゃーん!」
「またこれかァァァ!」
ちょやめっ服の中に手をいれる、うわっちょどk
―過激な描写のために省略します
「ハァ…ハァ…」
「若返るわー」
疲労した俺と、顔がテカテカツヤツヤした母さんがいた。
若返るって、それ以上若返ったら幼稚園生じゃなんでもない。
「さて、お遊びはこれまでとして、いってらっしゃい。」
「…は?」
「数cm動いたってことは、いくらでも動くってことなの。」
初耳ですお母様。
「だから山を一周すればいいわけさ」
……は?
「一周って…何時間…いや何日かかるんですか?」
「大丈夫、おなかがへらないようにするから。」
「いやいやいや、幼稚園はどうするんですか?」
「そういえばさっきから敬語だよ?お母さんさびしいよぉ…」
HA NA SHI WO SO RA SU NA
「幼稚園はどうするんですかぁー?」
「さびしいよ、悲しいよ…」
あー、もう駄目だわ
「あーもういくよ母さん?」
「うんっ、がんばってにー!」
いきなりテンションをあげてニパッと笑いながら手を振っている母さん。
はぁ…とそれを見て溜息をついて体に力をいれる。
「ふんぬぬぬ…」
ちょっと、動いた。
・・・・ちょっとだけど
「どないせいっていうんや…」
何故か似非関西弁になりながら、足を踏み出していくことにした。