表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

第二話

母親マジチート

風見かざみゆき

俺が助けた幼女の名前だ。

その後何故か懐いてくれて、共に遊ぶことがよくある。


「じゃーねー!いっちゃーん!」


「あぁ、じゃあな。」


今日も今日とてゆきと遊び、元気良く笑う名前のとおり、雪のような輝く笑顔を見ながら、俺は微笑しながら手を振り替えした。

この頃の女の子といえばお人形遊び、というあまり女性経験のない自身が勝手に思ってたのだが、男の子のような遊びもしていたことがわかった。

―区別するだけ無駄か

なんて思いながら俺はゆきと遊ぶ日々を送り、いつも通りに帰る。


「ふぅっ」


走り回って疲れた汗を拭いながら、自分の家へと足を向ける。――足が重い。


「がんばれ俺っ、幸せにするって決めただろっ」


自分自身にがんばれといって、足をパンッと叩く。

そして顔を前に向ける。





こんなことをやっているが、俺は虐待などを受けたことはない。

飯をだされないことなんてない、家族と不仲なわけではない。




――むしろ逆

そう、仲が良すぎるのだ、一方通行だけど


「た、ただいまー」


なるべく小さな声で、ただいま、という。

こんなことで防げるわけではないことはわかっているのだが――


ドタドタドタッ!!


「(あぁ、きたか……)」


そう思いながら目を瞑る。

いつものことだ、だからもう逃避している。The 現実逃避


「はぁーいっ!い・つ・き・ちゃーんっ☆」


でてきた小学生みたいな体格をした女性――これが俺の母親だ。

有羅場あらば春子はるこ』身長は121cm、いつになったら伸び盛りなの?なんて聞きたくなるような身長をひっさげて、彼女は俺に抱きついてきた。


「か、母さん……」


「おかえりなさい、いつき、ご飯にする?それともお風呂?もしかして、あ・た・し?キャハーンッ☆」


「落ち着いて母さん。」


「でもぉいつきちゃんならぁ、いいかもっ?えへへっ将来有望だもんねっ、だって水樹みずきさんとの子供だもんっ」


「ねぇ母さん?」


水樹みずきさんは死んじゃったけど、私が大きく育てなきゃ……おいしそうに。」


……よし、今のは聞かなかったことにする。

―とりあえず、今ので気づいた方もいるだろうが、俺には父親がいない。

幸せにする、と決めたわけだが、その後飛行機事故で、単身赴任から帰宅するときに死んでしまった。

それでも、母さんが幸せになれば幸せになってくれると信じているからこそ、俺は今母さんを幸せにしようと思っている。


「母さん、聞いてよっ」


「ん、なぁに?いつきちゃん。」


「―あぁ、やっと聞いてくれた。」


……話の流れというか、なにも聞かないでおかしくなっている母を止めるために呼び止めたのだが、何を言いたいのか決めていなかった。

どうしよう?えぇと、適当なことを聞こうか。


「き、今日の晩御飯は何?」


「んー?いっちゃんの好きなハンバーグ。」


「うん、ありがとー!」


「あぁもうかわいい食べちゃいたい。」


「わーい、うれしいな、うれしいーなっ!」


はしゃぎながら、瞬間的に力をいれ、一気に走り出す。

ダッシュだ、この空気から逃げ出して自分の部屋に引きこもりたい気分だ。というか面倒。


「えへへへ、鬼ごっこ?鬼ごっこ?」


「いや違います!」


母さんは勘違いでもしているのか、笑いながら追いかけてくる。

――まさに鬼にみえるのは俺だけだろうか、人間を食べようとしている鬼に


「うふふふ、お母さん嬉しいな、いっちゃんとっても強く育って。とっても足が速いのね。」


「ありがとう!おかあさあぁああああん!」


春子はるこ――俺の母親は、はっきり言うとありえないほどの高スペックを誇る。

俺の身体能力や学習能力というものが、どんなに知られようが不気味に思われないのがこの母親の所為だ。



『50m走5.3秒』

『握力98.6㎏』

『習得言語18ヶ国』

『全武術全国制覇』



武勇伝は色々とある。

マフィアの本拠地へいって潰してケロッとして帰ってきたとか

首相を暗殺から護ったとか

戦争を一人でとめたとか



――そんな彼女を愛したのはまったく普通の男性だったけど




その小学生な体にどこに力があるんだと叫びたくなるような体。

――まぁつまり、この俺の体でも勝てないわけで。


「つーかまえたっ☆」


「ぐぁぁっ!?」


「うふふ、いっちゃんの愛を感じるわぁ~、だからいっちゃんもお母さんの愛を受け止めてね!」


「きょ、拒否します。」


「恥ずかしがらナーイ☆」


「うわっひきっ引きずらないでっ、ヤメテー!」


「さーてお母さんの部屋へいこーっ!」


ぱたんっ

……母親の部屋からいつきの悲鳴が聞こえた。







有羅場あらば春子はるこ

身長:121cm

性別:女性

性格:天真爛漫

職業:翻訳家

能力:規格外



それを愛した男性


有羅場あらば水樹みずき

身長:172cm

性別:男性

性格:平和主義

職業:大学助教授

能力:ちょっとした霊感くらい






「――霊感があるだけでおかしいけど、母親がこんなんだから普通に見える…」


服を直しながら、疲れた溜息を吐いて、俺は溜息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ