表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

第十九話


――


―――


――――



泣き声が聞こえる。

ミストの声だということはわかっている。

俺はミストの手を引きながら、何も言わずに歩き続ける。

光に飲み込まれた街を背景に、振り向かずに。


たくさんの土の山、それがお墓というのは一目瞭然だろう。

俺はその風景を思い出して、ギュッと、ミストの手を握っている手に力をいれた。


――俺は、無力だ。


それを痛感して、それでもなお、俺は歩こうとする。

――母さん、俺は強くなるよ。


手を引いているミストをちらりと見て、思い出すのは手を引いてくれた母さん。

重度の息子馬鹿だけど、それでも、大切な家族だ。

だから、俺は母さんみたいにこの子の手を握っていなきゃいけない。


俺はそっとミストの腰のあたりをつかんで、力を入れて上にあげる。軽いなぁなんて思いながら、俺は肩車をした。

ミストはキョトンとすると、すぐに泣き始める。

そして俺はそのまま走り出した。















―元の世界―


「おかしいわね…」


「うん…」


心配そうに二人の女性がいつきの家の前にいる。

その後ろには一人の男性が、ヤレヤレといった感じで息を吐いた。


由梨ゆりはまったく、素直になれないんだから。」


ポツリと漏らした言葉が耳にはいったようで、由梨ゆりは顔を真っ赤にしながらビシィッという音がでそうな迫力で兄であるくれないを指し、叫ぶ。


「べ、別にあいつが心配とかないわ!」


「ハイハイ」


少々ニヤニヤしながらいう兄に、由梨ゆりはウーッとうなり声をあげて威嚇するが、くれないはアハハと笑って受け流す。

その様子にさらに由梨ゆりの怒りのボルテージがあがっていくが、その怒りは発生した金属音でかき消された、思わず音のほうに兄妹は視線を投げかければ、そこにいたのはゆき、そしてその女性の手には――玄関のドアの取っ手部分。


「――ゆ、ゆきぃ…?どうしたのそれ…?」


「とったの。」


「いや、とったって…」


「いっちゃんを探すのに、なりふりかまってられないの。」


その言葉に由梨ゆりはクハッと思わず笑ってしまい、くれないはひきつった笑みを浮かべる。


「あっはっは!そうねそうね!もういつきのやつあったらどうしてやりましょうか!」


「うん、とりあえず思いっきり抱きしめてから考えよう。」


「くく…やっぱゆきにはかなわないわね。じゃ、証拠集めにいくわよ?」


「うん!」


そういって二人の女性は歩いていき、くれないはその後ろ姿をみる。

――ものすっごいひきつった笑みを浮かべながら。


「(男としてはうらやましいはずなんだけど…)」


家族であるところを抜いても由梨ゆりは美人だ。

ゆきもきれいになった。

――でも、でもね、いつきくん。


「(自身がこの状態になるっていったら絶対辞退するだろうね。)」


そんなことを思いながら、空をみてくれないはクスリと笑い。


「(がんばれ!ずっと見てることにするよ!)」


このことに関していつきに対し、何かしら干渉をすることをやめた。


「(怖いからね!)」
















「じゃ、手分けしてさがしましょ。」


「うん!じゃあ私いっちゃんの部屋ね!」


「なんでそこ限定になってるのよ…」


ゆきの言葉に由梨ゆりの突っ込み、とりあえずくれないは提案をしようと前にでる。


「みんなで探せばいいよ。僕は一階にいるから二人ともいつきくんの部屋を探せばいいじゃないか。」


「そうだね!」


「そうだね!じゃないわよ、なんでいつきの部屋限定なのよ!」


「じゃあゆきちゃんはいつきくんのへ「なんでそうなるのよ!」…ふぅ、やっぱり二人でいきなよ。」


「…むぅ…わかった。」


やれやれ、とため息をついてくれないは一階を探し続けることにした。


ドタドタという音が上からするのに苦笑いを浮かべながら、くれないは下を探し続ける、すると、いきなり音がやんだ。


「…?」


不思議には思ったが、まぁ落ち着いたのだろうなんて思って捜索を開始する。












そして30分がたち、くれないはさすがにおかしいと思い上へいってみることにする。


「由梨…?」


妹の名前を呼ぶ、返事はない、寝ていたら風邪をひくかもしれないと思っていつきの部屋へはいり、見回す。


「…なんだ、これ?」


自分を反射しない鏡、それをみつけてくれないは鏡を叩いてみる。

だが、音もしない、衝撃も起こらない、…おかしいと首をひねり。


「…ま、不思議なことには慣れてるから、ね。」


そういってくれないはクスリと笑い、そのまま鏡にズプリと指をいれる。

そして、そのまま入っていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ