第十一話
「どっせい!」
「おりゃああああ!」
「ぶぅぅるわぁぁぁぁ」
「おんどりゃー!」
「うぉぉぉーっ」
拝啓お母様、未だにぶっ壊してしまうのですがどうしたらいいですか?
力任せにやるんじゃダメだと思い、一点に集中するように打ってみますが、打撃とは波紋のように広がるもので、砕けてしまいます。
ぶち抜くってどうしろと?
「そもそもぶっ壊しているだけでもいいと思うのは俺だけだろうか?」
岩を破壊するなんてどこぞの漫画の筋肉キャラだよ。なんて思いながら額に手を当てて溜息を吐いた。
いい加減疲れた、ちょっと休もう。
ヤケクソでやること事態間違っているのかもしれない、頭を冷やして今一度考えてみよう。
そう思ってその場であぐらをかいて座り込む。
「うーんむ…」
一点集中っていうのはいいと思うんだけどなァ…攻撃してしまえばどっちにしろ威力は広がっていくし…
そうだッ!拳を半円にするんだ!
岩に向かって口となるような半円を拳で描けば、円内に力がたまるんじゃないかな!
「そうときまればさっそく…痛たたたたっ!?」
――ですよねー
「…なにやってるのいっちゃん。」
母さんの声が聞こえ上を向けば、そこにいたのはやっぱり母さん。呆れ顔なところが何故か無性に腹が立つ。――おっと、これは絶好のチャンスというやつでは!?
「ねぇねぇ母さん母さん。」
「なにいっちゃん?頼みごとはおかーさんタイム二倍よ?」
「大きすぎだよ!?」
「お母さんの時間を奪う代償はそれくらいなの。」
「息子に愛を!」
「いっちゃんがもっと欲しいなんてっ!…じゃあ二倍…っと」
「いやもういいですはい!二倍でいいから岩をぶち抜いていただけるとうれしいですはい!」
もう何を言おうとも二倍コースからは逃れられないことは確定した。
OKいいだろう、二倍なんて耐えてしまえばいいのさ。
「じゃーまた二倍、よかったねいっちゃん!お母さんの愛がもっと感じられるよ。うへへ。」
そういってさらに二倍された、
――ですよねー
スキップしながら、母さんは岩の目の前にいくと、ふっと息を吐くと肩より上に腕に振り上げる。
「すっ」
息を少し吸い――
「破ッ!」
瞬時に吐いて、上から岩に攻撃する――
ドォンッという音をたてて――岩より後ろに轟音をたてた。
「は?」
何事かと思い、岩の後ろをみれば、岩の槍のようなものが突き刺さっている。
――岩をみれば、穴が開き、後ろがみえる。
ぶち抜いた、というのが完璧に当てはまっている。
それが完璧な状態なのだとすぐに理解でき。
「(こんなんできるかっ!?)」
とりあえず心の中で叫ぶ。
「コツとかないの!?」
「じゃあ二倍…っと」
ええいもうOKOK!いいだろう畜生め!
あぁもう母さん、涎を拭きなさい!なんか怖いから!
「コツは…力を一点集中することかな?」
「いや…もうそれやってるんですよ…」
「力っていうのはたくさんあるじゃない。いっちゃん♪」
「――力…あ…あぁっ!」
「わかったようだね?」
『勇気』か!
そう思い立ち、俺はすくっと立ち上がる。
腕に勇気をまとわせて、一点集中。
「フハハ!この私に不可能はないッ!せいやああああ!」
ドゴォンッ!(岩が破壊される音)
ガラガラ…(粉砕して破壊された岩が崩れていく音)
「……フッ」
「恥ずかしいいいいいいいぃぃぃぃ!」
俺今不可能はない!とかいっちゃったよ!?どこの中二病だよ!
それで失敗しちゃ元も子もない!
ハッ!母さん、母さんはみてないよな!?
そう思い、見回せば母さんの影はない。
――よし、大丈夫だ。
母さんはたぶん、俺に教えにきてくれただけなのだろう、やれやれいい母さんだな。
「ふぅ…よかったよかった。」
独り言をいいながら恥ずかしさを紛らわす。とりあえず勇気というヒントは得た。
これからどうするか、だ。
「使い方を試行錯誤すればいいのか?」
とりあえず母さんが貫いたときにでた石の槍のようなものをみよう。
そう思い、近づいて…『ガチャンッ』…これ以上いけない?
――あれ?…って鎖か…あとちょっとなんだけどな。
「ふんぬぬぬぬっぐぎぎぎぎぎっ」
鎖は伸びることはないために、目に力をいれてみる。――形的には、らせん状になっている――らせん状か。
――つまり。
「つまり、円を描く…か。」
そう思い立ち、すぐに勇気をまとわせ、円を描くように力をみれてみる。
「っ――できた、か?」
ぎこちないものの、できあがったものは円、正確には楕円だろうが。
それをみて、ちょっと嬉しそうにしながら、構え――ぶち抜くッ!
「はァァァァ!」
轟音――
崩れる音は…なかった。