1-8 あなたを認める
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手際よく2人の採寸を終えたノナは、その詳細を書き留めたメモを片手にマネキンに向き合い、あっという間にサイズの調整を終えてしまった。
「わぁ、すごい。流石に手際がいいわね…」
「ふふ、本職だからね。…さて、肝心のお手伝いはここからだ」
「そう言われても。何を手伝えばいいの?もう完成してるじゃない」
ノナが手直しをしたうっすら白く光る洋服は、素人目にも上質だと見て取れる生地でできている。それだけで十分様になる仕上がりだと思うが、
「それなのに、これ以上何をする必要があるの?」
「まだ完成じゃない。これはただの器だよ。
ーーーここに、祝福の魔法をかける必要がある」
「魔法?」
「そうだ。
ここに辿り着いてしまったということは、君たちは世界から認識されにくくなっているということ。それはヒナタから聞いたね?」
昨日のヒナタの話を思い出す。
魂・肉体・存在を世界に認識されることで成り立つ実在が何かしらの理由で不足し、世界から見逃されてしまう『知られざるものたち』
それが2人の現状だと言う。
「でも、私たちには肉体も魂も…」
「ああ、現世に肉体も残されているし、魂は今ここにある。
とすれば、消去法で、君たちは今、世界から認識されにくい状態…『世界に存在することを、認められていない状態』にあると考えるのが妥当だろうね」
「世界に、存在を認められていない…」
ノナは、俯き加減のナツのそばに歩み寄ると、言い聞かせるようにゆっくりと説明を続ける。
「心配いらないよ、ひとつずつ、紐解いて行けばいい」
「そもそも、存在を認められなかった覚えなんでないのに…どうすればいいの?」
「…まず、私が認めよう。ここに君たちが実在することを」
「えぇ?ノナが認めるって、どうやって…」
「必要なのは、他者からの承認。そのために私が、君たちの存在を認めて、祝福するドレスを作ろう。
そして、君たちの仕事は、君たちの存在を拒んでいるもの…その根本の原因を探すことだ」
「え…」
そんなの、分かるわけないじゃない。と言いかけたが口には出せなかった。
出会ってから今まで、いつでも冗談混じりで楽しげに微笑んでいたノナが、やけに真剣な目でこちらを見ていたからだ。
「それが何か…ノナは知っているの?」
「いんや。それはナツにしかわからないさ。でも、一緒に探してやることはできる」
「……」
「心配しなくていい。ここに来た子供たちは、みなそれを見つけて旅立って行ったよ。きっとナツにも、ハルにも。見つかるはずだ」
どうしてか、眉を寄せて困ったような表情をしたノナは、小さな子供に言い聞かせるように穏やかに、慰めるように告げた。
ーーわたしはじきに、この世界での暮らしには終わりが訪れることを知っている。
そして、残された時間は長くないことも。
ならば、
「弱気になっててもしょうがないよね」
強がりで口に出したのは、残された時間で、無理にでも前を向くためのおまじないだ。
「…ええ、そうね。じゃあ早速取り掛かりましょ。紅茶でも飲みながらね」
それに続くように、ノナはつとめて明るく振る舞った。
ナツの強がりを認め、後押しするように。
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