迷い
朝日が昇る。朝日が、家に入り、部屋を照らした。鳥が鳴き始め、1日が始まる。ガンテロンは、目を覚ました。涼しく、とても気持ちのいい朝であった。重い腰を上げ、ベットから出るとストレッチを始めた。朝のルーティンである。ティファはまだ寝ていた。今日も寝顔が可愛いとガンテロンは思った。こんな日常が続いてほしいと心から願う。しかし、それを実現するには、金がいるのであった。
戦争が、終わって二年もたつ。それなのにまだ状況は、落ち着いていない。それもそのはず、100年間も続いていたのだ。人々は、戦争と共に生きていた。戦争で、人が死に、それは日常であった。しかし、急に終わった。今でも失業者は絶えない。王国は、失業者対策に乗り出しているようだが、その効果は少なくともガンテロンには、実感がなかった。仕事を失った傭兵どもは、野垂れ死ぬか、盗賊になるかなどの犯罪に手を染めるかである。ガンテロンは、どっちも嫌だった。それが無理なことは知っている。それでも人としての尊厳は捨てたくなかった。友人ギガスは、犯罪組織に身を投じている。ギガスは、ガンテロンよりも規律や尊厳を重視していた。そんな彼も今や犯罪者。その事実は、ガンテロンを絶望させる。ギガスは、言っていた。
― 拾った少女と住んでるんだろ?お前には、責任が生じてるんだ。つべこべ言ってられる状況じゃねえだろ ―
確かにそうであった。ガンテロンには、責任が生じている。いまさら捨てるなどできないし、したくもない。路頭に迷うティファなど見たくない。立派に育ってほしい。将来、幸せな家庭を築いてほしい。家族を持たなかったガンテロンにとってそのことが、唯一の望みであった。
ティファがベットから起き上がった。
「おはよう。 昨日はごめんな、帰れなくて。」
「うんん ダイジョブだよ」ティファは欠伸をし、眠そうな目を擦った。「ひとりでお留守番できるから。でも少し怖かった。」
二人は、朝食を食べ、外に出て遊んだ。鬼ごっこからかくれんぼ、石集め。ティファと思いっきり遊んだ。
それは、今日が日常の最後であるかのように。ガンテロンが、危険に身をさらされるのを暗示しているかのように。それは、嵐の前の静けさでもあった。
酒場は、静かであった。それもそのはず、朝だから。昨夜騒いでいた奴らは泥酔して、机に突っ伏している。そんな中でただ一人ギガスだけは、きっちり座ってた。まだ酒を飲み続けている。ギガスは、酔わない。昔から酒が強かった。だから、皆と一緒に酔うことを体験できない。彼は、それにひどくコンプレックスを持っている。そのせいか酔おうして人の何倍も飲む。今日は、何杯飲んだか忘れた。
「マスター、マネキズ酒もういっぱい」冷静に注申した。
「もうないよ!飲み過ぎだ。いくらなんでも」マスターは、目にクマができていて眠そうであった。
「朝っぱらまでなんでいるんだ?」
「友人を待っている。返事を待っているんだ。仕事のオファーのね」
「俺ならおまえの仕事依頼なんて断るね!あんな物騒なところに身を捧げるのなんておまえしかいないよ!」マスクーは目を細めいった。
「友人さんは、来ないからさっさと帰りな!」
「いいや。来るさ、必ず」
予言していたかのように、酒場の扉が強く開いた。ガンテロンが、息を切らして入ってきた。目は殺気だっていた。
「来ると思ったよ。必ずね」ギガスは、ガンテロンを見た。
ガンテロンは、ギガスの胸ぐらを掴み叫んだ。
「ティファが、拐われた! お前の仕業か!!!」
「それは、どうかな」ギガスは、冷静に冷たく答えた。
「真相を知りたければ、仕事の件受けてくれるか?」