良き時代
酒場を出て、それから街を出た。おぼつかない足取りであった。ガンテロンは、飲みすぎたことを後悔する。こめかみが、じんじんする。時々立ち止まりながらガンテロンは、えずいた。
「きつい..キツすぎる」一人でそう呟く。かなり虚しいかった。希望などない。金を稼ぐことがこんなにも大変だとは思わなかった。ガンテロンにとって戦争があった時代は、かなり良い時期だったのだと終わってから気づいた。一歩ずつ一歩ずつしっかりと足を踏み込み、歩き続けた。ティファが待っている。家が、見えてくる。扉の前まで近づいたが、そこで倒れてしまった。冷たい土の中でガンテロンは、心地よく眠ってしまった。
男たちの喚き声が聞こえる。叫び、剣を振り上げる。あるものは、弓で、クロスボウで、大剣で。男たちが獣のように叫ぶ。ここは、ストロボルグ要塞。今現在包囲されている状況であった。ガンテロンは、ハシゴで上がってくる兵士を必死に斬り、時には蹴落とした。
「絶対に突破されてはならぬ!我々の栄光は今ここで決定する! 兵士たちよ! 立ち上がり!剣を掲げ!!我と共に戦え!!!」
そう兵士たちを鼓舞するのは、フレミア王子。現在の王 クレガー・デンの息子。第一王子であり、次期デン王国の国王。そんな彼が窮地に立たされている。彼は、王子でありながら、剣を持って戦っている。ガンテロンは、彼の横に立ち、必死で守った。城壁にかなりの数が乗り込んできていた。城門も攻城兵器が近づき、今にも壊れそうである。そんな中でも、デン王国軍は、士気を失うどころかむしろ士気を高めていた。飛んでくる矢、振り下ろされる剣。誰が敵かなど正直わからなかった。それでもとにかく斬る。太陽が沈みかけている。太陽の光が、光り輝く。天使が、舞い戻る時の光のように。フレミア王子が目を眩ませるとその隙に右腕を斬られ負傷した。敵は、押しかけ確実に殺そうとしてきた。あたりは乱戦状態で誰も王子と認知していなかった。味方も今殺そうとしてくる敵兵さえも。そんな時、ガンテロンは、王子の危機を察知し、かけつけた。敵の腕を斬り落とし、頭を跳ねた。フレミア王子を担ぎ、城へと運び出した。
「すまぬ。お前には、いつも助けられるな。ガンテロン」
疲弊した表情で、彼は言った。「本当にかたじけない」
「私にとっては、名誉です。王子!」
ガンテロンは、フレミア王子を尊敬していた。勇敢で、慈悲深く、決して尊大な態度はとらない。次期国王に相応しい存在。だからこそ今死なせてはいけなかった。
人が死に、多くのものが不幸になった戦争である。しかし、ガンテロンにとってやはりこの時期が幸せだったのかもしれない。彼自身は自覚していないが、尊敬する人物と良き仲間たちと共に活躍した時代であった。ストロボルグ包囲戦は、国王軍が、助けに来たおかげでなんとか勝利を収めることができた。人々が歓声を上げる。ガンテロンも、輝く太陽を背に右腕を振り上げた。
ガンテロンは、目が覚めた。どうやら戦争時代の夢を見ていたらしい。起き上がると全身泥だらけであった。ガンテロンは、こんなとこで眠ってしまった自分を責めた。太陽はまだ出ていない。とにかく家に入ろう。そう思い、ガンテロンは、扉を開けた。
中は、静まり返っていた。ベットの上でティファが寝ている。寂しい思いをさせてしまったようだ。ガンテロンは、汚れをある程度洗い、服を着替えてベットに入った。ティファの髪を撫でて、謝った。
「早く帰って来れなくてごめんな」
ガンテロンは、また眠りに落ちた。