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流れゆくもの

作者: 音無悠也

むせかえるような暑さに目がさめる。

都会の仕事に追われる毎日から解放されるために、逃げるように有給を使って田舎に帰省してきた。

家の窓から聞こえてくる川の音を聞いていると二度寝しそうになる。

携帯を開くと、ちょうどアラームが鳴った。


仕事に行く時と同じ時間に起きてしまうのは、なんとも解せない。

この田舎で朝早くから起きたところで、することなんてないのに。

そう思いつつも、体を起こして身支度を始める。

とはいえ、仲のいい友達とかは共に上京していたり、別のところに移ってしまっているので、本当にすることがない。

それでも、せっかく地元に帰ってきたので多少は栄えている、駅の方などに行こうと車を出す。


いつもの通勤時なら好きな曲を流して、都会の雑音を聞かないようにしているけれど今日は窓を開ける。

風が田んぼを駆けていく音が心地いい。

栄えている中心部に近づくにつれ、少しばかり都心の雰囲気を感じるがどことなく流れる空気のゆるさは気持ちいい。


この地元の中で1番大きな商業施設の中に停めて、適当にぶらつく。

ちょっとした吹き抜けのスペースに大掛かりな噴水が設置されている。

割と力入れたのが見え見えで少し笑える。

ただ、水の流れる音は落ち着く。


全国チェーンのカフェで季節限定とやらの飲み物を片手にこの後はどうしようか考える。

目的はないけどお店を練り歩いてみることに。

意外と流行りのブランド店とかが入っていて、都会の方のショッピングモールとなんら変わりなかった。

全然、買うつもりなんてなかったのに、お気に入りのお店を見つけて衝動買いをしてしまった。


ストレス発散のウィンドウショッピング、恐るべし。

仕事漬けの日々のおかげで、貯金はあれど使い道がなかった。

そのおかげで、今日のストレス発散買い物は一旦車に荷物をお気に行くほど買ってしまった。

都会とは違った暑さで、思ったよりも疲れてしまった。

一通り、お店を見て回って、お昼も済ますと外も日が翳ってきて少し風が出てきた。


日が沈む前には帰らないと、車でさえ少し怖いくらいには家の周りに灯りがないので、急いで帰る。

帰り道、田んぼの横を走らせていると、心地いい風が車の中に入ってくる。

家の近くまで来た時に、少しだけ停めて、タバコに火をつける。

家の中じゃ、家族がうるさいので、虫の音とそばを流れる小川の音に耳を澄ませて、煙を吐き出す。

夏の暑さを纏った煙がゆらゆらと昇っていく

稲が揺れる音と水の音のハーモニーに身を委ねていると、家から呼ぶ声が。


車に戻り、後部座席にある、たくさんの荷物を見ながらどうやって説明して持って帰ろうか考えながら、家に向かう。

家に戻ると案の定、母親から突っ込まれるが、それも心地いい。

夏の川で水の掛け合いをした時のように、キラキラした笑顔で。

清々しいような気分で、家族との食卓を囲む。


この何もない田舎で、明日の休みは何をしようか。

サラサラと聞こえる、川の流れのように、止まることなくすぎてゆく時間に目を閉じて。

ゆっくりと、流れに身を任せて。


きっと明日も、むせかえるような暑さに起こされるんだろうなと思いながら。

夢に沈んでいく…。

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