私が婚約破棄された時に喜ぶのやめていただけますか?
「ルリアナ・ナキサル!お前との婚約を破棄させてもらう!」
国立高等学校主催のパーティーで私の婚約者であるレンド・リグナー侯爵令息がそう宣言した。クラスメイトのカリナさんがレンドの横でこれ見よがしにふんぞり返っていた。
家同士の強制的な関係ではなく、少しでも心から婚約者でいてほしいと思ってくれるよう努力をしていたつもりだけど……ただの自己満足だったみたいね。
私は彼のことを愛そうと努力したけど、やっぱり嫌な所は目についてしまったし、そういう浅はかな部分を見破られたのかもしれないわ。
間違いなく私の落ち度ね。
「よっしゃ〰️!!」
私が不幸な目にあって喜んでいる人もいるわ。人に優しくするよう教わってきたし、自分でも教えの通り振る舞ってきたつもりだけど、結局私は何もできていなかったのね。
「よし!よし!!」
……ちょっと喜びすぎじゃない?
感傷に浸ってたから自分のことを責めましたけれども、良く考えたらこの場面で喜ぶ奴の方が非常識では?
一体誰なのかしら。
「きたー!!」
……ってロイドじゃない!!あいつ幼なじみだからって何でも許されると思ってるんじゃないでしょうね!冗談でもやっていいことと悪いことがあるじゃない!
「ちょっとロイド!私今婚約破棄されて傷ついてんだから、そういうのやめてよね!」
私はロイドに近づいて文句を言う。
「よっ……ル、ルリアナ。そ、そうだよな。ごめんな。つい自分のことで嬉しくなっちゃって」
こいつ人が婚約破棄されてる時に嬉しいことあって叫んでたの!?馬鹿だとは思っていたけどここまでとはね……
「で、何よその嬉しいことは。私の婚約破棄よりもすごいことなんでしょうね!」
「あ、そ、その……」
「どうせたいしたことじゃないんでしょ?怒らないから言ってごらんよ」
「そ、その……ルリアナが婚約破棄されたこと……」
「はあ!?」
はあ!?なにこいつ!?私が婚約破棄されたから喜んでたの!?本当に!?頭沸いてんじゃないの!?
「ち、違うんだルリアナ!」
「は?何が違うのよ!」
「君が不幸な目にあってるから喜んだわけじゃないんだ!」
「じゃあなんだってんのよ!」
「その……君がフリーになったから喜んだんだよ!」
ロイドが会場に響きわたるぐらい大きな声を出す。
フリーになったから喜んだってことは……その、もしかしてそういうこと!?
私は顔が急に熱くなるのを感じる。
「僕は本気だよ」
ちょ、急に目を見つめてくるのやめて!なんかカッコよく見えるのなんなのよ!馬鹿ロイドの癖に!
「よ、よろしくお願いします」
心の声とは裏腹に、口から出た言葉は正直だった。
それから私とロイドは婚約し、とても楽しい毎日を送っている。……ロイドにとても楽しいなんて言うのは癪だから、彼と喋るときはそこそこ楽しいわよっていつもごまかしてるけど。
あとレンド侯爵令息とカリナさんは別れたらしい。何でも思ってたのと違ったのだとか。今考えるとつくづく身勝手な野郎だ。婚約破棄されてロイドと婚約できた私は、実は幸せ者かもしれない。
……今のも絶対ロイドには言わないからね!
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