僕と彼女とクラブハウスと
どうも、藍玉です。
宝石の国のパパラチアが大好きでゲームなどでユーザーネームは大体パパラチアなのですが今回はお洒落に和名で藍玉です。
宜しくお願いします。
普段から無性に何かを書きたくなる時に書き殴ったものを載せてみています。
話の導入も何もない短編と呼べないような何かです。
拙い文章ですが読んで頂けますと幸いです。
読んでくださった方はよく分かると思いますが、わたくし西尾維新様の大大大ファンでございます。
黒い吸血鬼もどきとその恋人のように見えて仕方がないと思いますが、それでも構わない方だけ楽しんでもらえるとおもいます。
まだまだ携帯のメモには書き殴った話達が眠っていますので、これからここに上げることがあるかもしれません。
その時は温かい目で見守ってもらえますよう宜しくお願いします
「なあクラブってこんなにも人がいないものなのか?」
「いや、これは悲惨な方の例よ。」
「そうだよな。敵ながら可哀想になってきたよ。」
「貴方は敵に哀れみを持てるほどの寛大な心の持ち主なのね」
「いやまあ普通に考えてクラブのDJをやっていて踊っている人が1人もいないのって、憐れみの感情を持たざるを得ないじゃあないか」
「ふむ...まあ言わんとしていることは分かるわ」
-本当かなあ.....
「どの道これはチャンスよ。この機会を逃すなんて勿体ないわ。」
「そうかなあ、なんだか怪しさも妖しさも満天で罠のような気がするけれど......」
「罠でも引くことが出来ないのが今の私たちの立場よ。さっきあんなにも大見栄を切っておいてそんなことも忘れたの?」
「いや忘れてない。わかっている、全力を尽くすよ。それで?何をするつもりなんだ?」
僕は心の中で決意を固め直す。
「荒谷君、貴方ダンスは踊れる?」
「生憎踊れないよ、おじいちゃんっ子だったもので社交ダンスなら嗜む程度だけれど。」
「社交ダンスを嗜む理由としておじいちゃんっ子というのはどうかと思うけど。それならこう言えば良かったわね。荒谷君、Shall we dance?」
「いやここで社交ダンスをするのか!? この人っ子1人いないけれどロックな曲が旋風を起こしているこのクラブハウスで社交ダンスを踊るっていうのか!?」
「ええそう言ったのだけれど、低脳すぎて言語の理解能力を失ったのかしら?」
「いいやそうではない。お前の出した案が突拍子もないから確認をしているんだよ! 冗談じゃあないのかってな!」
「さあ踊りなさい。」
「え、組まないのか?」
「ええ、私はやるべきことをやってくるから先に1人でシャドーをしていて頂戴。」
「本気かよ。」
「さあ行きなさい、振り返ってはなりません。」
「御伽噺かなにかかよ。」
「振り返れば貴方の四肢は爆発四散します。」
「しかもハードなやつ、うっ」
僕は背を蹴られ、親猫から引き離された子猫のようにフロアに立ち尽くした。
リズムなんて取れたものじゃあない。とりあえず鳴り響くロックはガン無視して頭の中にShall we danceを流して踊る。
ーあぁ、DJの目線がきつい....頑張って盛り上げていたのに社交ダンスなんか踊られたらキツイだろうなあ。
人のいないフロアが盛り上がるかどうかは置いておいてだ。等と考えていたその刹那。
曲が変わった。頭を割るようなガンガンしたロックな曲がお淑やかなワルツに変わった。
場違いが過ぎる。この場でただ僕にだけ合っていた。音の大きさも心なしか心地よくなっていた。
そこに彼女が戻ってきた。
「良いシャドーだったわ。貴方がこの場で浮いている様が見るに耐えなかったから曲を変えてきてあげたわよ。」
お前に踊らされていたんだけどな、
「ここからが本番よ、さあ、Shall we dance?」
「はぁー、Yes,let’s. No,let’s not. -」
僕は映画「shall we dance」の中で解説されていたShall we dance?の返しを華麗に返した。
「それで、どういう作戦なんだ?」
「..さ..く...せん......?」
「ないのか!? クラブハウスのダンスフロアで社交ダンスを踊らせておいて、その踊りに何の意味もなかったのか!?」
「いい気味だわ。」
ー現在進行形でお前も踊っているわけだが。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない。」
「そういうことではない気がする。」
「とにかく2曲踊りきるわよ。何も考えずステップを踏みなさい。」
「なにか考えがあるんだよな? 信用していいんだよな?」
「ふふっ、」
「頼むから答えてくれ。」
そうしてワルツの流れるクラブのダンスフロアで僕たち荒谷ペアは2曲を踊りきった。
「お疲れ様、良いステップをしていたわ。」
「ああそっちこそお疲れ様、お前も踊れるのな。」
「嗜む程度よ。さあ彼処でうずくまって泣いているDJ君にお礼参りをしましょう。」
「お礼参りの使い方が間違っている。涙を流している彼に更に追い討ちをかけるだなんて、この世でそんな仕打ちは許されないよ」
「どうもDJ君、とても良い選曲だったわ。」
ーとんでもねえ皮肉だ。
「これからも自分のセンスを信じてバイブスを上げまくってちょうだい。それじゃあ、この携帯は返してもらうわね。」
三角座りで泣いているDJが俯いたまま頷いた
そう言って彼女はディスクジョッキーの横にあるスピーカーに繋いである携帯を引き抜く。
ワルツがぷつりと止まる。
「これ繋ぎ直しておくわね。」
頭の割れるロックが流れ出す。
DJの涙の流れるスピードが心なしか加速する。
ーDJなのにディスクで曲を流していなかったんだな。
「さて行きましょうか。」
「あ、ああ。」
そうして僕たちは深夜のクラブハウスを後にする。
外はまだ朝日の影すら見えず薄ら暗く冷たい空気をしていた。
帰路のなか、白い息を吐きながら僕は口を開く。
「なあ、結局なにが目的だったんだ?」
「そんな事も分かっていなかったの?」
彼女は目を丸くした。
「そりゃあ何も言われていないからな。」
「全てにおいて説明をしてもらわないと何も受け取れないFラン大学生なのね。」
「それは大学生に失礼だし、まだ僕は進学高の高校生だ。」
「落ちこぼれのが抜けているわ」
「それは言わないでくれ」
「-それで目的はなんだったんだよ。やっぱり言ってくれなきゃ分かんねえよ。」
「仕方ないわ、人類の底辺で土を舐めながらでしか生きることが出来ない愚かな荒谷君の為に事細かに日本語とは何かから教えてあげるわ。」
「日本語は理解しているから教えてもらわなくて大丈夫だよ。」
「......ん?...え......嘘でしょう? 今、日本語を理解していると言ったのかしら? 荒谷君如きが? 荒谷君の地位で日本語を?」
「僕のことをどんだけ低く見ているんだ。そして日本語への崇拝度合いが高すぎないか?」
そうして僕は彼女から8割がた悪態の説明を聞きながら砦へと帰った。