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新しいルーティーン

 「はい、では。これから授業の反省会を始めます。」


 授業など仕事と呼ばれる関係では敬語を使うように意識している。

 敬語といっても基本的に丁寧語にするくらいの軽いものではあるけれど。


 授業が終わった部屋で私たちは反省会を開催していた。

 反省会は今回から始めたことで、参加者は私とノエル、エマとセルジュに加え、イーヴやノエル専属のララとレア、ドニ、ジルで、来年以降の講師側の養成も同時に担うことになる。


 「まずは各々思うところがあるでしょうが、お疲れ様でした。今回は他の領も関わってくるので勝手が違うでしょうが、振り返ってみましょう。」


 「じゃぁ、僕からでいいね、姉さん? 僕は最初のお便りは読むだけだったのですが、もう少し注釈をつけたほうがよかったかと思います。姉さんが代わりに説明をしてくれたわけですが、配慮が少々足りなかったかもしれないと思いました。とはいえ、これに関しては姉さんの言うとおり、勝手がわからないので報告を待ちましょう。2年目組の授業は、会話形式でうまくできたと思いますが、例を先に出さずに読んでいたらどうなっていたかな、とも思います。導入で興味を持ってもらうという点で、今回のは成功と言えるでしょうが、初見の文章を読むという力を考えるのなら、少し別のアプローチが必要だったかもしれません。迷った結果、今回のになったわけですから、結果をみてから考えます。」


 ノエルとはその点はかなり話し合った点だったんだよな。

 最初に導入をしてしまったら、興味をもった状態や、イメージをちゃんともった状態で読むことになる。

 それは、皆に興味をもってもらえるが、一人で新しい文章を読むという力には繋がらない。


 「うん、ありがとう。ノエルの言うとおり、それについては私も考えたところです。皆も考えているところでしょうが、目的によってアプローチ、教え方は異なってきます。必ず目的を意識するように気をつけましょう。私は全体の発表ではちょっと、2年目の人たちへの比重が大きすぎたかな、と思います。目的を考えると、お便りもそのまま発表するのは好ましくなかったかもしれません。しかし、そのまま伝えなければ、こちらが悪いことをしたような気分になりますから、難しいところではあるのですが。では、エマとセルジュは気づいたこと、反省点ありますか?」


 次に講師をしていた二人に振る。


 「はい、お嬢さま。私は概ねうまくやれたと思っています。緊張はしましたが、笑顔でハキハキとやることはできましたので、そこはよかったと思います。でも、持ち方とか説明するときに、お嬢さまが使ってたみたいな大きな紙に絵が描いてあったらもっと分かりやすかったと思います。文字を一文字ずつ教えるときもちょっと考えてみます。」


 エマが反省点を述べた。

 エマが見ているノートにはメモが散乱していて、文字の雰囲気から授業中も気づいたことがあったらすぐにメモをしていたことが窺える。


 「私は、授業の速さについてです。もう少し時間を空けた方がよかったかもしれません。文字を真似して書くというのに、もっと時間がかかったかもしれないので。緊張して早口になった部分もあったかもしれないので、もう一息置くように意識したいと思います。あとは、算数の方でしょうか。我々と違ってカードゲームをしていないと聞いていますから、我々よりも念入りに、違った方法で教えなければいけないなと思っています。」


 「うん。ありがとう。じゃぁ、授業受けていた組、気づいたことありますか?」


 私は他の人たちを見回す。


 「お嬢、俺はエマとセルジュの授業聞いてて、遅くて退屈と感じたんだが、これが初めての人らにとってみたら、速かったのかなって思うと、俺の考えが足りないと思った。で、そうやって聞いてほしいって人の立場にたって考えると、お嬢の最初の発表の時に使ってた紙、アレに絵が沢山描いてあるのはそういうことなんだなって今思い直した。」


 イーヴがまず発言した。


 「えぇ。確かに絵を多用するように気をつけたのは相手が文字を読めない人たちだからです。おそらく、イーヴがこれから担当することになるであろう準備生みたいな子たちは、もっとだから、難しいかもしれないけれど、考えなければならないと思います。実際にその子たち相手にやってみる、などが方法として存在します。私たちと違って、相手はしっかりとフィードバック、どうだったかを教えてくれるような子たちではないと思うので。」


 「なるほどなー。お嬢、分かった。孤児院かなんかで練習してみることにする。」


 イーヴは子どもたちに好かれそうだからって理由で準備担当をお願いするので、多分、古巣の孤児院でも小さい子たちと仲がいいだろう。


 「他に、あるひとはいますか?居ないようですので、反省会は終わりにします。今後、他の領地での様子は報告書が届くと思うので、それを確認しながら修正していきましょう。では、お疲れ様です。ありがとうございました。」


 こうやって、毎回話すようにしていって、それぞれに発見があるといいなって思っているこの頃。

 エマとセルジュは練習期間が短かったけど、次は、もっと早くから練習をさせてあげたい。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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