表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/216

効果を実感した方々からの声をお届けします

 「皆さん、こんにちは。エナム王国エマール領からお送りします。」


 放送が始まった。


 「今日はお集まりいただき、ありがとうございます。初めての人も、そうでない人も、改めまして、私はセシルと言います。そして、隣にいるのが弟のノエルです。」


 「よろしくお願いします。」


 挨拶をしながら礼をした。


 「本日は初回なので、まずは私からこれからの授業について話します。初めての皆さんは、授業について知ってもらって、これからの授業について見通しをもてるように聞いていただけたらと思っています。エマール領でこれから新しい教科書に入る皆さんは、私の発表方法について見ていてください。私もまだ未熟ですが、それも含めて、良い点と悪い点を探しながら見て欲しいと思います。」


 ノエルに目で合図をして、資料を広げてもらう。


 「はい、では私から授業について3つ。目的と、効果、そして、お願いを発表します。よろしくお願いします。」


 私はもう一度頭を下げた。

 イメージは塾かなんかの保護者会。

 教える側も教わる側も対等で、目的や効果を理解してもらった上で納得して授業に臨んでもらうこと。


 「まずは一つ目、授業の目的、最終的に目指すところですね。昨年も、授業を開始するときに申し上げましたが、誰もが研究することができる下地を身につけてもらうことです。これが最終目標ではありますが、分かりづらいと思うので、簡単に1年後のゴールを設けました。こちらをご覧ください。」


 ノエルが次の資料に変える。

 そこには2つのイラストとその下に文字が書かれていた。


 「大きく二つ。一つは文字を自由に扱えることです。文章も自由に読み、また、文章を書くこともできるようになること。もう一つは計算、特に一桁の足し算引き算が息をするようにできるようになることです。こちらの文字については国語という授業で、計算については算数という授業で練習をしていきます。」


 私は手元にある国語と算数と書かれた丸い紙を説明しながら資料に貼り付けていく。


 「計算というのは数えずとも数がわかるようになること、です。これからの授業でゆっくりと扱っていくのでその時にこれなんだと思ってもらえたらいいなと思います。」


 ノエルは私の説明がそこまで進んだことを聞いて、資料を次のものにした。


 「蛇足ですが、2年目のゴール、というか大事にしたいこともお伝えしておきますね。2年目は考えることと伝えることです。伝えるというのは、今、私がしているように大勢に話して伝えること、文章にして伝えること、などたくさんありますね。誤解を与えないようにというのは勿論、聞いていて印象に残りやすい話し方についても考えていきましょう。加えて、算数の授業ではまた計算について進めていきますが、これまでの知識を生かして、初めての問題も解けるように考える授業をしていきましょう。」


 ノエルに目線を送ると資料を次のものに変えた。


 「このように、まずは文字を扱うこと、計算ができるようになること、を意識して授業に参加して欲しいと思います。次に、授業の効果についてです。今回、実は、エマール領で既に授業を受けた人たちにアンケート、質問をしてきました。」


 ノエルが次の資料に切り替えると、そこには「授業を受けて良かったことは?」という質問が大きく一文だけ書かれていた。


 「そう、ズバリ!!授業を受けて良かったことは?です。授業を受けた皆さんに、授業を受けてどんな効果があったのかについて聞きました。その答えがお便りで届いていまーす。このお便りも、皆が一生懸命勉強して身につけた文字を使って書かれています。このお便りそのものが授業の効果といってもいいのですが。今回はこのお便りを紹介させて頂きます!ではノエル!!」


 「はい。姉、セシルの助手をしているノエルです。よろしくお願いします。」


 ノエルがお便りの束をもって挨拶をした。


 「まずは文字の読み書きができるようになったことについて。エマール領に住む男性からのお便り。母に手紙で普段は恥ずかしくて言えない感謝の言葉を伝えることができました。母も感激して泣いてくれて、親孝行ができて良かったと思いました。だそうです。」


 「手紙というのは言葉を文字で紙に書いて相手に伝えるものです。相手を目の前にすると恥ずかしかったりして言えなくなってしまうことも言えるのが特徴ですよね。」


 私はノエルのお便りに注釈を加える。


 「次に、エマール領に住む女性からのお便りです。私は他人の恋愛話が好きなのですが、文字を読めるようになってから、恋愛小説なる本を読みまして、もう、毎日が楽しいです。だそうですよ。」


 「教会にはたくさん本を置いて、誰でも読めるようにしてあるので、文字が読めるようになったら是非読んでみてくださいね。」


 「続いては、狩りを生業としている方々からのお便りです。右と左から敵が来たときに2と3で敵の数は5だと瞬時に分かるようになりました。他にも、どれくらいを食べて、どれくらいを保管するのかもすぐに判断できて、助かっています。これは算数で計算を習得したことによるものですね。」


 「はい。仕事が効率化したという話はよく聞きますね。算数、特に計算は全ての根幹となります。どんな仕事にも応用可能だと思いますよ。」


 「最後に、とても多かった内容です。文字を書けるようになってからは、忘れてしまう前にメモができるので、思い出す手間がなくなった。という話ですね。どこに何を植えたのか、や、何が欲しいのか、などが多く見られます。」


 「忘れる、ということは誰にでも経験があると思いますが、予防する手段にもなるんですよね。」


 「他にもたくさんお便りをいただきました。送ってくれた皆さん、ありがとうございました。」


 ノエルは感謝の言葉を言って礼をした。


 「ノエル、ありがとう。なんとなく、授業で身につけたことが役に立つと思ってもらえたでしょうか。そう思ってもらえると嬉しいです。そして最後に私から、授業を受けるに当たってお願いがあります。」


 ノエルは新しい資料に切り替える。


 「まずは、習った内容を使うことを意識してください。知識というのは使ってこそ自分の身になります。例えば、文字を習ったら、たくさん日常生活で文字を書いてみてください。知っていること、使えること、使いこなせること。知識についてこの三段階あり、それぞれで全く異なるものです。授業で知ったら、使えるように、使いこなせるように頑張って欲しいと思います。どうやって使ったらいいのか、については適宜、説明をしていくつもりではありますが、皆さんも意識して欲しいと思います。」


 「次に、分からなかったら教え合うこと、です。授業を聞いていて分からないことってあると思います。そうしたら、分かる人を見つけて質問してください。そして、質問されたなら、頑張って教えてみてください。人に教えるためには、自分はより理解をしなければなりません。だから、人に教える、というのは一つの効果的な勉強法だと私は思います。是非、分からなかったら質問する、質問されたら頑張って教える、ということをこなしてください。もし、解決しない場合は、こちらへ手紙を書いてくれればお答えします。手紙が書けないのなら、書ける人に伝えて書いてもらうのがいいでしょう。」


 ここで私は一呼吸おく。


 「私は知らないこと、分からないことを恥だとは思いません。世の中には知っていることの方が少ないのですから。ただ、こういう言葉があります。"聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥"聞かないで知らないままでいる方が、よほど恥ずかしいという意味です。プライドとかで聞くのが嫌だという人もいるかもしれませんが、ここは一つ壁を乗り越えてください。」


 もう、面倒なので、それぞれで対応してもらおう。


 「最後に、授業に楽しく参加してください。私たちも授業が楽しいものになるよう、力を尽くしていきます。何故、楽しむ必要があるのかというと、楽しい方が覚えるのが早いからです。是非皆さんで楽しい授業にしていきましょう。発表は以上です。ご静聴、有難うございました。」


 私とノエルは深く、頭を下げた。


 「ここからは本格的に授業となりますので、担当のエマとセルジュに引き継ぎます。私とノエルはここまでです。今日は有難うございました。そして、2年目の皆さんは後でお会いしましょう。ではさようなら。」


 私とノエルは画面外に退出し、エマとセルジュが緊張した面持ちで画面に入った。

 彼らは画面に入った瞬間、なんとか笑顔になり、授業を始める。


 私は皆がいる部屋から出た瞬間にしゃがみ込んだ。

 終わったんだ。終わったことを考えても仕方ない。今は次だ。

 私はゆっくりと息を吐いた。

閑話 : カステン辺境伯領 が追加されています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ