閑話 : エナム王家 第一王子周辺
<エナム王家>ーー王都・エナーメル/王家直轄領・ケルリス
先代王 ランベール・フォン・エナム
先代王妃 オティリー・フォン・エナム
王 クリストフ・フォン・エナム
王妃 エヴリーヌ・フォン・エナム
第一王子 フィリップ・フォン・エナム
第一王女 エミリエンヌ・フォン・エナム
---以下、洗礼を受けていない---
第二王子 アラン・フォン・エナム
第三王子 エヴァン・フォン・エナム
「マティアス、暇を出す。少し、領地に戻れ。」
執務室で第一王子フィリップは言った。
「ど、どういうことでしょうか?」
パルテレミー公爵家の次男で第一王子の側近である、マティアス・フォン・パルテレミーは困惑して聞き直した。
「別に、お前に何かあったわけじゃない。陛下が、俺に仕事を任せてきた。その地盤が整うまでは通常の仕事を止めるとのことだ。これをエミリエンヌとアランを巻き込んで行うようにと。」
フィリップは資料の束をマティアスに見せた。
「これは...?これを第一王女殿下と第二王子殿下と共に行うと?」
「あぁ。あまり、不特定多数に知られぬようにやる必要があるそうだから、側近らは纏めて領地に帰ってもらうことになった。要は休暇だ。そっちでもお前は仕事があるだろうから、まともな休暇にはならないだろうが、久々に顔でも見せるといい。」
「まさか、平民も含めた全ての民に文字を扱えるようにする、とは。」
「お前とて年初めの夜会で聞いただろう?エマール領では既に実現したことだ。実務はそれぞれで行う必要があるそうだから、人手は必要だが、やってみる価値はあると判断されたんだ。」
「つまり、それを王家直轄領で行うということで?」
その質問にフィリップは首を横に振った。
「いや、それらは先王陛下たちが行うそうだ。俺たちに任せられたのは、王都に残る各家の使用人たちだ。加えて、できるところから王宮に使える者たちにとのことだ。」
「それは、大変な業務になるかと。」
「まぁ、そうだろうな。陛下はこれの出来で我々の力量を計るおつもりだろう。下手な貴族に見つかっては妨害されかねん。そこら辺も政治状況をうまく判断しなければならないな。誰が味方で誰が敵なのか。」
「それこそ、側近がついているべきでしょうが、分かりました。下手な憶測を呼ぶ前に多くを遠ざけておくということですね。では、早速領地に戻ります。」
「おう、元気でな。」
マティアスは自らの領地へ旅立った。
彼が向こうの領地で似たような施策を任されることはまだ知らない。
ここまでで授業前の様子は一応終了となります。




