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セシル・カルチャーショック・アゲイン


 「お嬢?そんな字あったか?」

 「上から王様に近い順に並べられている?すごくわかりやすいよ!これなら一夜漬けじゃなくてもいけるかもしれないわ。」

 「この本を読みながらこれだけのことを?信じ難いですが、素晴らしい才能。洗礼式が楽しみです。」


 イーヴ、エマ、セルジュはセシルのメモを覗き込んでそれぞれ感心していた。

 この世界には図で関係を整理するなんて文化はない。

 セシルは知らず知らずのうちに、とんでもないことをしていたのだ。

 本人にとってはぐちゃぐちゃでも、十進数である地球の数字を除けばあり得ないほどに整理されたメモなのである。


 「?この合計ってやつ、全部の数を合わせた数ってことだよな?こんなに早くどうやって出したんだ?それとも適当?」

 「数えてみればわかるでしょう。」

 「エマ?お前、どれだけ時間がかかると?よし、お前が手伝うならやろうじゃないか。」

 「いいでしょう。お嬢さまの才能を確認するのです。手間は惜しみません。」

 「いうじゃねぇか。」


 イーヴはエマと共に貴族の家の数が200であることを確認することにした。

 「あぁ、まずは王家で1だ。次からお前が公爵家・侯爵家の数を数えろ。俺は2から数える。」

 「了解!!」

 「2 3 4 5 6 7 11 12 13 14 15 16 17 21 「ストップ!! 」 」

 「おぉ。ここまでか。ちゃんと数えてたか?」

 「当たり前よ。疑う気??」

 「いや??なら次だ。辺境伯家な。」


 そのやり取りを冷めた目で見つめてるのがセシルだ。


 (数えなきゃ、分からない??足せばいいじゃない。足せば。というか、足し算をどうやるかなんて説明したことないんだけど、どうやってたんだっけ?一桁の計算とかはひたすら覚えてたのか?)


 あとどれ程かかるか分からない貴族の家を数えるイベントをセシルは放置して、避けてきたことをセルジュに聞くことにした。


 「セルジュ。」

 「なんでしょう、お嬢さま?」

 「この本によると、1年は14(じゅうよん)じゃなくて17(イーショウナー)ヶ月あるそうだけど、ひと月は何日あるの?」

 「67日ですな。そういえば時間や日付のお話はしていませんでした。詳しく説明しても?」

 「お願い。でも、ちょっと待って。新しい紙を用意するから。」


 セシルは新しい紙を広げていそいそと準備をしている。

 (まずは、一年が17(**)ヶ月だから14(10)と。で、ひと月は67(**)日。67(10)じゃなくて、計算すると49(10)日か。49=7**2(ななのにじょう)=7*2だね。とことん7が好きだなここの人たちは。)

 取り敢えず判明したことを書き留めているセシルをセルジュは静かに見守り、書き留めたメモを覗き込んでいた。


 「準備できたよ。お願いできる?」

 「承知しました。これをご覧ください。」


 1月 1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日休息日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日休息日 21日 22日 23日 24日 ...


 渡された本には日付と休息日という文字が羅列されていて改行も適当に行われていた。"67日"の次には"休息日"と書いてありその後から次の月が始まるようだ。

 現代でカレンダーを見慣れてきた七瀬ことセシルがどう思ったかは容易に想像がつくだろう。

 (見にくい。)

 ただ、その一言に尽きるのだった。


 「このように、7がつく日は休息日となっておりまして、基本的にお休みになります。それが7回続くと次の月になります。」


 (成る程ね。一週間という概念はないみたいだけど、7日が休息日というのなら一週間は7日としてそれが7週。必ず1日が週頭から始まるという点では有り難いかもね。"西向く侍は31日がない"という暗記も必要ないわけだ。7日が休息日ってことは日曜日に当てはまりそうね。綺麗ではないかもしれないけどひと月分カレンダーもどきを書いてみようかしら。少しは楽になるでしょう。曜日も変わることがないから万年カレンダーの完成ね。!?待てよ?7日が日曜日というなら頭に持ってくるべきかしら?でも、せっかくの美しい正方形を乱したくないよな。なら、右端が日曜日のカレンダーってことで。マス目は書くと汚いからなしで。)


 セシルは、セルジュの説明一つで思考を開始し、上機嫌で紙に記録していった。それは、この世界で発明とも言える、カレンダーの誕生だった。

 セルジュは、我を忘れてセシルの書くメモに集中していった。


 (曜日は、今はなしでいいかな。あとでそれらしきものを見つけよう。流石に月火水木金土日を使うわけにはいかない。ファンタジーな異世界で魔法があるなら、属性とかいいんじゃないかな?候補としてメモしておこう。あとは、1年が何日か、だけど。49(10)x14(10)か。二桁同士の掛け算って荷が重いな。7の3乗に掛ける2した数だね。ふむふむ。私は珠算とかができるわけじゃないから、普通に筆算する。686(10)だね。あぁ。やりたくねぇ。これを異世界数に換算して、まずは7で割るとあまりが0ね。わかってたけど。商はさっき因数分解したからわかるとおり、49x2だね。もう一度7で割ると余りは0で商は14。もう一度7で割ると余りは0で商は2。さらに7で割ると、余りが2で商が0になる。つまり7進数に換算すると、2000(7)ってことだ。さらに異世界数に直すと、0の概念がないから、繰り下げていく。答えは、1667(**)。)


 「なんと!その数字は!?」

 「どうしたの?セルジュ。」

 「昔、研究に詰まったエマール伯爵家の人間が狂いながら1年の日数を数えた数と一致します!!」

 「!?わざわざ数えたの??」

 「お嬢さまは数えていないので?」

 「数えたくないよこんなの。絶対無理。」

 「では、どうやって??この数を??」

 「どう、もなにも、計算しただけだよ?」

 「計算??」

 「なにか不思議??」


 (まさか!?計算の概念がないのか??いや、流石にないでしょ。計算することなんていくらでもあるし。)

 その、まさかである。

 (確かに、エマやイーヴは謎の数えをしていたけれど、まさかね?)

 そう、そのまさかである。

 セシルは、あまりの衝撃に、気のせいにしたいが、計算なんてないのである。

 掛け算の筆算はおろか、一桁の足し算ですら浸透していないのだ。

 その事実を確認せず、セシルは現実逃避した。


 「セルジュ?大丈夫?あとは時間を教えて欲しいのだけど?」


 そういうと、セルジュは家の時計を持ち出してきた。


挿絵(By みてみん)



 「あ、はい。時間ですね。まず一番細い針が1周すると77秒で1分です。そして長い針が一周すると77分で1時間です。そして、短い針が1周すると7時間でこれを3回繰り返すと1日です。お分かり頂けたでしょうか。お嬢さま??」


 セシルはめり込むように落ち込んでいた。


 (日付で油断した。そうだった。こういう世界だったよ。泣きたい。なんだよそれ??ゾロ目なら許されると思ってんのか??黙れや。77(**)??つまりは56(10)だろ??7x2x2x2なんて約数のバラエティ少なすぎるだろ。というか、こんな世界なら、数学発展しててもいいよね??いいんじゃない??この時計読めるとか、かなりの計算力必要じゃない??1日の長さも違うとか。気にするに必要はないとは思うけど、私、本当に2歳か??実は3歳だったりしない??そういえば、0の概念がないなら、生まれた時は何歳なんだ??昔は地球でも生まれた瞬間に1歳だったらしいけど。いや、どうでもいいね。すごくどうでもいい。こんな数学に優しくない世界。)


 「大丈夫ですよ。お嬢さま、この丸い時計は皆読めないものなのです。」

 「は!?」

 (声に出してしまった。)

 「丸い時計が読めなくて落ち込んだのでしょう?大丈夫です。誰も読めません。作った時計職人も読めませんから問題ないのです。」

 「は??」

 「ここの真ん中にですね、時間が映し出されるのでそれを読めば大丈夫です。一番左に朝・昼・夜とあるので、これを見れば、短い針が何周目かがわかります。誰も読めないのにこの形にするのは女神さまの好みと浪漫だと時計職人は主張していまして、その証拠に洗礼式で時計職人に与える固有能力が出た際には、"この形が好みなの"という絵が描かれているそうです。」

 「デジタルか!!」

(どこまでもギャクみたいな世界だな。読めない時計になんの意味が?日本じゃ、アナログ時計読めない人なんていないだろうに。そして、女神??あなたは何もの??それほど人気で信仰されているなら10進数を流行らせてくれ、頼むから。)

 「"で・じ・た・る"とはなんでしょう?」

 「いや、なんでもない。気にしないでくれ。」


 セシルは、現実逃避しながら黙々と計算を続けた。


 「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 「あんた、何やってんのよ。」

 「あとちょっとだったのに!!」

 「もう3回目よ??次こそは成功させましょう。」

 「もう一回行くか!!」


 イーヴとエマは未だ貴族家の数を数えられていなかったのでした。


 そして、セシルは計算を途中で諦めた。


 挿絵(By みてみん)

<<セシルの計算について>>

セシルのノートに書かれた計算は間違っています。

疲れて頭がまいってしまったのでしょう。

参考までに現代の利器電卓を使った計算結果を掲載します。

<地球>

1日=24時間=1440分=86400秒

一年=365日=31,536,000秒



<異世界基準>

1分=56秒

1時間=56分=3136秒

1日=21時間=65856秒


一週間=7日

一ヶ月=7週間=49日

一年=14ヶ月=686日=45,177,216秒


1年-異世界1年=31536000秒-45177216秒=-13,641,216秒

13641216秒÷86400秒= 157.884444… = 157余り76,416

86,400x157=13,564,800

158÷30=5余り8


<<異世界数に換算したい人へ>>

異世界数への換算が面倒な人は下のPythonプログラムを使うと自動計算してくれます。

素人なので試行錯誤した痕跡、すなわち無駄な計算式がある上、見た目が整っていませんが、ご了承ください。




#十進数を異世界数に変換するプログラム

target = input("十進数を入力してください。")

#十進数=target

before = target


def DFW_n(target):


amari = [] #あまりを入れるリスト


while int(target) != 0:

#七進数に直す

r = int(target) % 7

target = int(target) // 7#商

if r == 0:

amari.append(7)

target = int(target) - 1

else:

amari.append(r)


#リストの要素を逆順にして返す

amari.reverse()

return amari


print(before, "を異世界数に変換すると" , DFW_n(target), "となる。")



#異世界数を十進数に変換するプログラム

n = input("異世界数を入力してください。")

#異世界数=n

length = len(n)

int(n)

m = 0

#十進数=m


for i in range(length):

r = int(n) % 10

n = int(n) // 10

l = r * 7 ** (i)

m = m + l



print("十進数に直すと" , m , "となる。")



気にならない人は無視してください。

もし、こうした方がいいよって方がいたら教えてください。

勉強になるので歓迎します。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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