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書籍「エマール伯爵家」を読んでみた

 エマール伯爵家はエナム王国に仕える貴族である。

 我々は代々、領地運営と研究に力を注いでおり、王族にも直々に認められるほどに豊かな領地を築いてきた。国への献上は伯爵家としてはかなり多く、その手腕をかわれて王族ともよい付き合いをしている。

 エマール伯爵家は代々の功績により、王族から領地経営に専念することを許され、"年初めの夜会"を除く社交を免除されている。面倒な、いや、煌びやかな社交を免除して頂けるとは光栄の極みである。"年初めの夜会"の出席を免除されることこそ、我々エマール公爵家の悲願であり、是非とも成し遂げてもらいたい。

 いくつかの家とはとても懇意にしている。彼らは我々に感謝し協力してくれるが、社交の場へ引っ張り出そうとする厄介者でもある。うっかりパーティーに出席させられないように、会話は慎重に、言質を取られぬようにしよう。特に、王家を含む公爵家・侯爵家・辺境伯家といった爵位が伯爵家よりも高い家の者たちは、言質をとるとどうあっても引っ張り出そうとする。何より、いつだって言質が取れるように仕掛けてくる上、録音までしている。下手に爵位が高いだけに、逆らいづらいので気をつけるように。爵位を上げることで彼らの要求を突っぱねることは誰しもが考えるだろうが、それは厄介な社交を増やすことにつながるので、是非とも伯爵家序列最下位という社交免除ができ、なおかつ面倒なしがらみのない位置を保とう。

 結婚については政略などいらない。好きにしたらいい。家が絶えることは領民にとっていいことではない。混乱をもたらし、彼らにとって悪いこととなるだろう。だから、取り敢えずは子供は欲しい。結婚は誰とでもいいから、問題のない安全で、年に1度の社交に耐えられる人で、領地運営ができる人なら、身分は問いません。家を継がない人は、結婚はしてもしなくてもいいでしょう。好きにしたら?偶に、懇意にしている家から縁組について相談されるが、本当にやめてほしい。爵位が高い家からの申し出は適当に断りづらい。やめてほしい。しかし、彼らは、全くエマール伯爵家に合わない者や、事故物件は絶対に紹介しないため、その方面では安心しても良い。社交会に連れ出そうとされたら断固断ること。芋づる式に自分だけでは済まない可能性がある。後世のためにも、絶対に必要以上の社交は断ってほしい。絶対に、だ。

 どうでもいいことだが、何故か貴族家の数を覚えろと言ってくるお節介な輩がいる。念の為、最低限を記しておく。奴らは貴族名鑑全てを覚えろという無茶なことをいう。人の顔など違いがわかりにくく、そんなに覚えられるものではない。関わって、性格や好み、職業などと共に覚えるものだ。だから、彼らがギリギリ許す最低限を攻めてみた。これ以上を覚えろと言われたら適当に返事をしてバックれよう。問題ない。

 王家から順に、公爵家・侯爵家が17、辺境伯家が1、伯爵家が26、子爵家37、男爵家47、騎士爵制限なし。

 懇意にしている家は王家・アズナヴール公爵家・バルテレミー公爵家・カステン辺境伯家・シャノワーヌ子爵家・ダンデルヌ子爵家・ラコルデール男爵家・ローラン男爵家だ。

 以上。面倒だろうが、これだけ覚えておけば誤魔化せる。いや、誤魔化させねばならない。これ以上は無駄だ。無理。

 領地経営では彼らの衣食住と仕事の達成感を重視する。孤児院から使用人を選出するのは勿論、それ以外にも仕事を斡旋すること。新しい魔道具が貴族で流行り始めたら、いち早く手に入れて、領民の生活に役立てること。彼らがいるからこそ、我々の研究が成り立っていることを忘れずに、研究の成果もなるはやで領民に還元しよう。領民、というか平民は文字の読み書きができない。領民に文字を浸透させる試みは幾人もが行ったが、教える側の人数の圧倒的不足と、彼らの仕事が忙しすぎて達成されたことがなかった。もしも、よい方法があるのなら、失敗を恐れずに挑戦してほしい。また、後世のために失敗の記録も是非残してほしい。

 使用人についてだが、尽くしすぎる奴らが多すぎる。一般的な貴族は年17ヶ月のうち14月から4月の11ヶ月もの間王都エナーメルに滞在するから王都のタウンハウスに常駐させるのも悪くないだろうが、我々は1月の"年初めの夜会"の時に一週間滞在するのみだ。絶対に常駐させるな。どうしても、という聞き分けのない使用人は、王都へ出立する一週間前にタウンハウスで掃除することを妥協して許してやることで納得させること。また、王都のタウンハウスにはものを一切おかないこと。警備もせずにおくため、盗みが入っても盗むものがない状態にしておこう。

 研究は誰もやらないことをやることを勧める。他の貴族たちは魔法の詠唱や魔道具作りに熱心だ。それは我々がやらなくても勝手に進んでいく。エマール伯爵家は代々魔法に関わらない研究を主軸としている。勿論、魔道具を農耕に導入するという画期的な研究をして領民の支持を集めた者もいるから一概にはいえない。なんの役にも立たないと思われる土を研究した奴は災害を未然に察知して被害を防いだ。なんでも良い。ただ、極めろ。研究をするにあたって、文書に残すことは大事だ。絶対に欠かさないこと。

 研究の成果を王家や他の懇意にしている家に持っていくと、感謝されたり、社交を免除してくれたりするから、積極的に研究を広めていこう。

 7歳7ヶ月7日の洗礼式では自分に適した固有能力や自分が望んだ固有能力が得られる。その日までに研究の方向性を固めていれば、研究に最適な固有能力が得られる可能性がある。是非とも興味のあるものを見つけてほしい。また、固有能力から研究内容を決めるのもまた、良い手段である。女神さまはそれぞれの才能に合わせた固有能力をメッセージと共に授けてくださる。固有能力とはまさに自分の才能を具現化したものであるから、固有能力に合わせた研究は良い結果をもたらすことが多い。ある者はモデリングという名前のよくわからない能力を発現したが、とても有用であった。詳しくはその者の研究を読んでほしい。

 最後に、研究の成就を祈る。

(「エマール伯爵家」より抜粋。)


 まずは1冊読んでみました。

 感想

 ①わかりにくい。図で書いてほしいし、セクションで分けてほしい。

 ②筆者の気持ちがダダ漏れ。社交が面倒なところには激しく同意。

 ③なるはやって語彙どうしたの?

 ④洗礼式があるんだね。モデリングってあれだよね?

 ⑤1年って12(10)ヶ月じゃないのね。ウザい。メンドい。クソ。

 ⑥結婚は意外と気楽でよかった。

 ⑦消しゴムがほしい。侯爵の侯は気候の候じゃなかった。

 ⑧色ペンがほしい。まとめがぐちゃぐちゃ。

 ⑨私が髪を束ねた時や男装がさっさと受け入れられた理由がわかった気がする。


 貴族は貴族でもこの家に転生してよかったと心から思ったよ。

 変なことしても大体は受け入れられるのは、マイナーな研究をずっとしてきて、変なことでも極めたら有用になった経験からなんだろうね。

 それに、社交が少ないのは嬉しいし、是非とも一族の悲願である、"年初めの夜会"免除を成し遂げたいと思ったよ。

 あとは、1年のアレは、かなり嫌な予感がしているからもう一度調べ直すとして、クソだ。

 2歳だけど、実は3歳だったりするのか?

いや、考えても仕方がないな。

 異世界だもの。

 指の本数が違うくらいだもの。

 時間の流れや成長速度が違ったっておかしくはないわ。

 地球の時間に当てはめるのは不毛だからやめにしましょ。


 私は左側に本を開きながら、初めてもらった紙にインクをつけたペンでまとめていた。


 平民は文字の読み書きができない?

 これだけの生活ができる時代ならできると思ってたけど。

 イーヴやエマにセルジュもできてたし。

 というか、彼ら孤児院出身なの?

 でも、その活動は意味があるだろうね。

 あれ?

 孤児院出身の方が有利とかなって孤児院がパンクしたりしないのかな。

 ふむふむ。

 一介の高校生には勉強になることが多いな。

 でも、文字の読み書きを広めるのがそんなに困難だったのか。

 学校に通ってたから、それなら生かせると思ったのだけど。

 失敗例を見てから考えよう。


 以下は私、セシルが書き留めたものです。

 まだ指にうまく力が入らないので至らぬところはお許しください。


挿絵(By みてみん)

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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