閑話 : 和菓子組・大福探求会
"蛟"改め、"瑞稀"は契約を終えて自らの力が最も発揮される寝ぐらがある湖へ向かった。
ある時に結成された一団、和菓子組・大福探求会である。仰々しい?名前が付けられているが、実態はただの飲み会サークルである。
「よー、みっちゃん。遅かったじゃねぇか。」
瑞稀を迎えるのが佐助だ。
「佐助、撤退が早すぎじゃ。」
「いいじゃねぇか。どうせ俺以外にも色々いるんだぜ?」
「ふむ。それもそうじゃが。」
「皆んなには話してあんぜ。どーせ、噂である程度広まってるだろうがな。」
佐助は鳥居のようなものの上に乗っかって盃を掲げた。
「みっちゃん、名前変わってもみっちゃんだな。」
「瑞稀さま、響きがいいですな。」
「今度のご主人様につけてもらったんだろうな。」
鳥居をくぐった先の境内前の草原には数人が車座になって座って瑞稀を待ち構えていた。
「うむ!今宵は宴じゃ。飲め、歌え!!」
「おぅ!!」
飲み比べ大会を含めた飲み会が始まった。
「んで?セシルとかいう、新しいご主人様はどうなんだ?」
「俺はぁ、好印象だぜ。なんつったって俺らと当たりメェのように話せんだ。」
佐助は自慢するように言った。
「んじゃ、前のご主人と同郷ということで?」
「多分な。」
佐助はググッと一杯盃を飲んだ。
「我はそろそろと思ったが、他はどうする?」
「人間の転生者というのは、前例がなく判断しづらいな。」
「魔法のことなら協力しても良いのですが。くすくす、まぁ、時機が満ちれば会いますよ。」
「んな、面倒なこと考えてんのか?」
「まさかっ?威厳のためだ。」
笑いながら語らい合う。
「んだ、今後ますます、引っ越ししてくる者が増えますな。」
「そうね。ここは暮らしやすいもの。それに加えて転生者までいるとなると、これは大所帯になるわ。」
「幻の種族が何をいう。」
「瑞稀さま、あなたも別の意味で希少種なんですよ。幻と言っても過言ではない。」
「何を?」
「まぁまぁ。ツチノコってわけでもねぇんだ。」
「佐助、あなたたちのそのツチノコ信仰はなんなの?そこまで幻で価値が高いものなのかしら。」
「そりゃ、知らねぇ。ずっと伝わってるってだけだ。」
佐助は無愛想に言った。
夜が更けてゆく。
今宵もまた彼らの宴は続いていく。
明日にはもう、瑞稀という名は定着しているに違いない。




