今日はもー疲れたっ!!
嵐のように現れて、嵐のように去っていった客人たち。
あまりの唯我独尊に我ら三人とも呆然と固まってしまっていた。
「......取り敢えず、通常業務に戻りましょうか。」
「ん。そうだね、姉さん。もう、忘れよ。何もかも。あぁ、でも、算盤は忘れないよ。練習続けるし。」
「俺も。将棋以外は忘れるわ。将棋は、取り敢えず、勝ってみたい。」
どうやら、ノエルは算盤に、レオンさんは将棋に強い興味をもったようだった。
「えっと。もう、何かが出てきたら困るからサエラさんの手紙は置いておいて。他の領でも授業ができるようなマニュアルを制作と。」
計算ができなくとも点数を出すことができるようにチェックのマスは最初からついているし、テスト問題等は使い回す予定。あとは、カードゲームの下地がないから演習時間を長く取るように指示をして、そうだ!小学生の時の夏休みの算数教室のような、面白く、捻った問題を作っておこう。演習を増やすなら、面白くしないと飽きてしまうからね。
他には、施策はこの間まとめた報告書通りに進めるとして、授業の予定表をコマとして時間割みたいに纏めると。放送時間で内容を変化させる。あとは、それぞれの講座に対象年齢を設けると。流石に同じ2年目だからといって、子どもができる内容と子どもができる内容は変わってくるからね。ついでに、1年目と2年目の合同イベントを一つ、題材は七夕。1年目はまだ字が完璧でないから、短冊には名前のみ。代わりにといっては何だが、飾りつけの作成に力を入れてもらおう。
あとは丸付けは当たり前にできるよね。
で、広報誌はそれぞれの領で作成してもらった方がいいだろうから、その作成手順を纏める。
ウチのラジオの代替として手紙を自由に書いてもらって、それを手紙で送り返すという取り組みを入れてみる。
「んー。」
「ん?大丈夫?」
レオンさんがいつの間にか近くで私の顔を見ていた。
首を傾げるのがあざとい!!可愛い!!
「う、うん。大丈夫。できれば今日中に完成させますから。」
遅くてもレオンさんが帰る前に公爵さまに提出したい。
「無理しないでね?ダメなら後で取りに来てもいいんだから。」
いや、終わらせる理由はそれもあるけど、単純に、この休暇が終わったらまた授業に追われるからです。
というか、来月くらいからもう始めたい。
「来月には授業を始めないとと思っているので。こっちと合わせないと、余計面倒が増えるだけですから。」
「そっか。じゃあ、できることは手伝うよ。あと、気になっていたのだけど。」
「なんですか?」
「さっきの神獣のミズキさん?にすら敬語使わないのに、なんで俺には敬語なんだ?」
うっ!!
ちょっと語気が強まった。
「いやぁ、その、瑞稀さんはちょっと敬語で話す気が失せちゃうっていうか。つられてタメ口になっちゃうというか...。」
酒豪で飲み会大好きな人って感じがして、敬語抜けちゃうんだよな。
「別にいいんだ。その気持ちは俺も分かるし。本人?だって問題ないっていうんだから。」
うん。だよね?
「だけどさ、俺はセシルにタメ口で話してほしいのに、呼び捨てしてほしいのに、ずっと敬語だよね?」
ギクッ!!
「そ、それは、無理...かと、思われます。」
無茶だよ。レオンさんにタメ口だなんて!!
「なんで?」
「いや、なんでってそれは......アレはなんか違うでしょう?」
いや、なんか違うじゃん?アレは人じゃないみたいだし、身分とかもよく分からない。
でも、レオンさんは違うじゃん?だって、公爵家の嫡男さまだよ?
「俺より後に会ったのにもう仲がいいよね?」
そりゃ、前世のことも知れ渡ってるみたいだし、あんなに日本的な感じだと馴染むよ。懐かしいというか、ノスタルジックというか。故郷を思い出すんだ......あんなに変じゃなかったけど。
でも、それを言うわけにはいかない。
「レ、レオンさんとも馴染めたと思うのですが?」
「そう?んーならいいか。で、手伝えることある?」
ふぅ。レオンさん流れてくれてよかった〜!!
「そう、ですね。......もし、よければ、これ読んでくれませんか。マニュアル、誰でも仕事ができるように書いた説明書なんですが、読んで理解してもらえるかどうかを確かめたいので。分かりにくい点、質問点、があれば教えてほしいです。」
「分かった。読ませてもらうよ。」
これで不明点が出て、大きなものなら修正、そうでなければQ&Aとしてまとめるつもり。
「姉さん、僕にできることは?こっち、一旦片付いたから、優先順位が高いものからと思って。」
今度はノエルに仕事を振るのか。
「なら、これを完成させてくれないかな?時間割表ってやつなんだけど、見方わかる?」
「あーなんとなくわかる。取り敢えず、1ヶ月分あればいい?」
「うん。ありがとう。授業計画と擦り合わせながらやらなきゃいけないから、かなり面倒なんだけど。これ、変更もあるだろうから、広報誌に毎回載せようと思っているの。だから、まずは原案を。」
「理解した。うまく授業内容考えながらやるよ。」
「頼む。」
よし。これで面倒な仕事が一個減った。
というか、授業内容考えられるようなレベルにいるノエルが恐ろしい。
これまで、適当にやってきたからな。
スケジュール管理もノエルだし、ノエルの方が得意そうな分野ではある。
さて、私の方も続きをやらねば。
算数わくわく問題集の執筆も並行して、これを授業前段階と1年目に使う。
お!
そうだ。○ペン先生みたいな通信講座の添削を検討していたけれど、これを2年目の人たちに頼めばいいのか。
テストのまる付けとかはちゃんと屋敷とかで管理させるけど、手紙を何度も書くという意味では流石にきつい。
会ったことない相手と文通ってのも面白そうだし、見識を広げるにも一役かいそうだ。
まぁ、すぐに始められるものでもないから、取り敢えず置いておくと。
「セシル、いいか?」
お、レオンさんだ。
「はい。」
「この、広報誌というのが分かりにくいとおもう。それぞれの領で作成するとなると、内容などが難しいと思う。読んだところ、この広報誌の目的は身近な文字をつくることだろう?だからそれぞれの領で作って、興味をもちやすい身近な記事を掲載すると。」
「そういうことです。ですが、レオンさんの言うように、難しいというのなら、一部の記事は引用しましょう。ノエルの算額の記事や四コマ漫画などは引用して、あといくつかはそれぞれで書いてもらう。で、補助的に内容にお題を決めるとします。」
「なるほど、書く内容をあらかじめ決めておくのか。しかし、それでは似たような内容になってしまわないか?」
「そこは、お題を出すこちらが工夫します。例えば、この時期に取れる農作物というお題ならば、それぞれの領で内容が変わってくるでしょう。月に2度発行するとして、28(10)だから、4x7で、37(**)お題を考えると。」
「そうか。そういったお題になるのか。問題は誰が書くかだが、あまりに貴族意識が高い使用人には任せられないから、人を選ぶ必要がありそうだ。で、もう一つ。掲示板というものの説明が少し分かりにくいと感じた。あとは、エマール領ほど領主一家がちゃんと見て回っているところはないだろうから、この手紙やテストの回収というのももう少し欲しいな。」
「分かりました。掲示板は各教会の入り口に板のようなものを立てたものを呼んでいます。そこに広報誌を毎度はるのです。そうすれば、誰でも読むことができます。」
「なるほど。その説明ならば分かりやすいな。できれば雰囲気が伝わるように、こっちみたいな絵があるといいのだが。」
「では絵を加える、と。あとは、手紙とテストの回収ですね。エマールでは必要なかったので記載しませんでしたが、ポストをつくるのがいいでしょう。」
「ポスト?」
「えぇ。例えば、こんなものなんですが。」
私が手近なノートにポストの絵を描いた。
「入れるところは狭く、出すところは鍵付きで決まった人だけが出せるようにします。このような箱に手紙やテストを入れてもらい、定期的に回収するのです。こうすれば、一人一人から回収せずとも、一つのところからそれを持っていけばいいだけですから、手間は格段に減ります。」
「なるほどな。一度入れたものはもうどうにもできないと。」
「その通りです。まぁ、テスト専用のポストは別につくった方がいいと思いますが。」
「分かった。これを教会ごとに設置するんだな。これならなんとかできそうだ。」
「それならよかったです。回収時間をポストに書いておくのも一つの手だと思います。逆に、こちらからの届け物も受け取り専用ポストを作成するか、司祭さんに預けるのがいいでしょう。」
「それも詳しく記載してもらえると助かる。」
「はい。分かりました。」
そうやって、問答を続けて、その日のうちにマニュアルを書き上げた。
夕食時に公爵さまに提出、それが例の最新型魔道具で王家他いくつかの懇意にしている貴族家にその日のうちに送られた。
来月から、全授業がいくつかの領に放送されることになった。2年目授業も時間をずらして行うので全ての授業が放送されることになる。自分の授業の時だけ見にいけばいいということだ。
今日は色々あった。
もー疲れた。
寝よう。




