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手紙を読み進めたいのに

 花札を楽しんでしまった。


 「分かったか、餓鬼ども。これが大人になるってこった。」


 佐助は上機嫌に花札を見せつけているけど、賭博やゲーム、賭け事をすることは大人の条件ではないよ。変なことを教え込んじゃダメだからね。


 大変だ。

 手紙を読まなきゃってことだったのに。


 さて、サエラさんの手紙の続きは...?


 [薬草関係で欲しいものがあったら連絡よこしな。アンタが授業やってることは知ってる。実験器具もドワーフに注文してやるからそれも一度こっちに預けるといい。奴ら、曖昧に書くと変な機能を付けてくるから。職人の永遠の病だ。こればかりは治せない。]


 助かる!!

 実験をしようと思っていたのだけれど、内容が難しいと思っていたんだ。

 これなら、ヨウ素液でも頼めれば唾液による消化の実験ができる!!!


 私は早速手紙を書いた。

 ヨウ素液をこちらの言葉で、ドイツ語でどう書くのかも分からなかったので、まずは日本語でヨウ素液と書いた。加えて元素記号の I を加えて、周期表を大まかに書いて元素記号だと伝える。さらに、でんぷん、パンなどにかけると青紫に変化すると書いて、実験内容と、誰でも扱えるように安全にすることを加えた。

 本当はベネジクト液も欲しいことを書き加える。

 とりあえず、実験内容を全て書いた。


 急ぎじゃないけど、これで実験ができるな。


 実験を授業で取り扱う前には、私がまずやってみる。次に説明書きと私の説明でノエルにやってもらう。最後にセルジュやエマ、イーヴに試してもらう。これらの過程を経てからだ。しばらく後になるだろう。


 あとは追伸として、ワインの蒸留実験もやりたいことを追加すれば、うん。通じるよね。

 通じなかったらもう一度書けばいいよね。


 これはそれとして次の文。


[王都にもいくつか集落がある。こちらとも交流があるから、王都に行く時は連絡を入れること。忍者もそちらの情報を集めている。手紙があってもそちらから送れるだろう。]


 それは助かるな。数ヶ月後に王都に行かなければならないことも手紙で伝えておこう。


 大事な情報ばかりだから進まないな。


[亜人と呼ばれるものの集落はいくつかある。オークやリザードマン、獣人や湖には人魚のような幻の種族もいる。吸血鬼を含む鬼の集落もあるが、吸血鬼は凶暴なものでなく、血を吸う代わりに対価をたんまりとくれるから、かなり優しい存在とされている。飢えていても、生きていれば血を提供できる。血を提供すれば飢えずに済む。そして、とても芸術に精通した存在だ。]


 吸血鬼は思っていたのとイメージが違うな。

 貧民の救世主みたいな書かれ方しているし。


[魔物というのは意思なきモノ。魔力が多い動物のことを指す。亜人とは意思があるもの。女神さまの洗礼を人間と同じように受けている。人間の教会とは別に教会はそこらに点在しているのだ。]


 そうなんだね。


[土地神に近いような存在は神獣と呼んだりする。亜人とも魔物とも違う、意思あるモノたちだ。意思があるのなら当然女神さまの洗礼を受けることができる。]


 うーん。大事なのは意思の有無なんだね。

 意思があるものたちなら仲良くしたいな。


[ドワーフは知っての通り、工学に精通している。吸血鬼は芸術と血を媒介とする魔術・魔法。エルフは弓矢や結界魔法、稀に薬学。オークは高度な魔術。リザードマンは身体能力。湖に住む種族は真珠などの養殖が盛んと聞く。高速移動が持ち味のハーピーも高山には住んでいるそうだ。]


 色んな種族がいて、びっくりだよ。


[魔族というのもいる。意外と曖昧な定義ではあるが、魔王を頂点とするその国の者という意味合いが強いから、実際には多種族が混同している。]


 へー。

 まー、きっかり分かれることなんてないよね。


[人間は他の種族よりも基礎としての力が弱かったため、女神さまからの洗礼が少し大きく、洗礼を改造するということで有名だった。しかし、それがいつしか、洗礼頼りになり、魔法もそのほかの技術も衰退し、洗礼の改造技術も衰えた。今や、人間の強みは多い人口のみで知識も技術も他の種族に大きな遅れをとっている。排他的なところも人間の特徴で、技術の衰退と同時期に他の種族との交流が断ち消えた。]


 なるほど。女神さまからの洗礼がアドバンテージだったと。


[それらを聞けばアンタなら亜人との交流を深めていくに違いないだろう。亜人側としても客が増えれば儲けも大きいうえ、食糧事情はそちらの方が充実しているといえる。]


 まぁ、そうだよね。

 市場は大きいに越したことはない。

 人間との交流でそれが広がるなら嬉しいと。


[ということで、アンタの話は亜人たちの間じゃ有名になったから、ここらの土地神さまである神獣がアンタに会いに行くそうだよ。]


 へ??

 ナニソレキイテナイ。


[土地神さまと呼ぶけれど、女神さまとは全く違う存在で、どちらかというと、領主のような、ここら辺の土地を見守っている存在のことだ。気負うことはない。]


 突撃されるの?土地神さまに?


[ここの土地神さまはとても優しく大きな器をお持ちだから気にしなくてもいい。どんな格好だろうと無礼だとかは言わないだろうから心配いらないよ。とても気さくでお茶目な人だ。]


 いやいやいや。

 大問題でしょ。


[契約とかするつもりだろうけど、害にはならないから問題ない。むしろ利点が多いよ。]


 契約?

 クーリングオフとかできますよね?


[窓から覗き込んでノックしてから入ってくるから玄関で待つ必要はないよ。]


 窓から侵入してくる??


 ゴンゴン


 そのとき、窓の方から音がした。


 へ?


 窓を見ると、白い美しい大蛇が覗き込んでいた。



 手紙を読み進めたいのに

 全く手紙が読み終わらない

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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