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閑話 : 男の談義

 ノエルとレオンが追い出され、セシルが悩みを吐露している頃ー。


 「セシルについて知っていることがあるなら教えてもらえないだろうか。」


 「いやいや、本人からでないとさぁ。」


 家の外もまた騒がしかった。


 時は遡り、追い出された直後。


 「で?手前らはあのセシルのなんなんだ?」

 (まぁ、なんとなくは知ってっけど。)


 忍者が初めに尋ねたのに対して、二人は


 「僕はノエル。弟だ。」

 「俺はレオン、セシルの婚約者だ。」


 かなり喧嘩腰で答えた。


 「なにがそんなに気に食わねぇんだ。」


 不満をあらわにする忍者。


 「名乗られたら名乗り返すのが筋では?」


 レオンの言葉に隣で激しく頷くノエル。


 「あ゛~、忘れてた。中のにも言ってなかったな。俺は、サスケって名だ。」


 佐助、猿飛佐助、これが忍者の名前だった。

 忍者の集落では日本語由来の和風な名前が多いが、これほどまでにストレートに忍者という意味の名前な者もまた珍しいだろう。


 「サスケと言ったな。まずは一つ。君が話している言語はドワーフと同じものか。」


 レオンが尋ねたが、佐助は挑発で返した。


 「いきなり質問攻めとはいい御身分だなぁ。貴族さまはよぉ。情報料、対価はねぇのか?」


 「対価?」


 「無料で情報をやるわけがねぇだろ。」


 佐助の言葉に逡巡し、レオンは口を開いた。


 「ならば「普通はそうなんだが、」


 佐助はレオンの言葉を遮った。


 「手前らがマトモに払えるような情報なんざ少ねぇことはわかってら。それに、その質問はそれほどのもんじゃねぇ。ドワーフの言語とは全く違うもんだ。恐ろしいほどにかけ離れた、な。ばあさんが使ってた言葉の方がちけぇらしい。」


 追加情報まで付け加えて説明をした。


 彼の説明に付け加えるとするのならば、アメリカの外務省の出した外国語習得ランキングで最難関に示されたのが日本語だ。日本語が難しいというよりは、英語からかなりかけ離れた言語であると言えるだろう。


 「それを、話したということか......。」


 レオンは佐助の言葉を聞いて、より恐ろしさが身に染みたようだった。


 「まぁ、珍しいことでもねぇらしいがな。俺もほんの少しなら分からねぇこともねぇし。」


 その言葉を完全に聞き取れたものはいないようだった。


 「サスケ、姉さんが以前、通貨の話を僕にしてくれた。それを流通させるなら皆が当たり前に計算ができなければならないとも。それが流通しているというなら、サスケの集落は当たり前に全員が計算できるということで間違いない?」


 レオンの質問に区切りがつくと、ノエルが通貨について質問した。


 「あ゛ー、あぁ。間違いねぇ。」


 「なら、どうやって皆が計算できるようになったの?」


 どうやら、授業の参考にしようとしているらしかった。


 「んなもん、寺子屋で誰でもできるようになる。」


 当然のように佐助は言った。


 「テラコヤ?」


 「学校みたいなとこ、っつっても分かんねぇのか。学校を元にしたものと伝わってるが......。要は、そこで教えてんだよ。読み書き算盤をよ。寺ってのは教会みてぇなとこだ。」


 「ソロバン?」


 またも分からない言葉が出てきてノエルは混乱していた。


 「算盤ってのは計算するための道具だ。集落なら誰でもできるぞ。」


 「よかったら!!それ、教えてもらえませんか??」


 ノエルは興奮して佐助に教えを乞うた。


 「構わねぇが、ここに算盤がねぇから今は無理だ。」


 「そうですか......。残念です。」


 そして、冒頭のシーンに戻る。


 「セシルについて知っていることがあるなら教えてもらえないだろうか。」


 「いやいや、本人からでないとさぁ。」


 レオンが佐助にセシルについて尋ねているシーンだった。


 「婚約者ってならさぁ、信用でもなんでも築いて話して貰えばいいじゃねぇか。」


 (転生者ってのは特殊な悩みがあるらしいからな。それをばあさんが聞いているんだろうし。それを、どんなに大事な人でも話さないってなっても仕方ないというのはコッチじゃ共通認識だしな。)


 佐助はレオンを揶揄いながらも、転生者の特性を考えていた。

 少なからず悩みを抱えていたことはそこらでは有名な話だった。


 「!!.....確かに俺はあって数日だ。信用を得られずとも仕方ないと思うが、お前たちの方が会って間もないだろう。」


 レオンが言った。ノエルも同意するように頷きながらも、下唇を噛んでいる。


 「チッ 別に信用されてるってわけじゃねぇよ。ありゃ、そんな理由じゃねぇ。」


 あっけからんと佐助が言うと、それに対して眉間にシワを寄せた。


 「バレてると思ったから言っただけだろ。言わずとも理解しているなら隠す必要もねぇ。それで良い交渉ができるのなら尚更な。」


 佐助の指摘は正しかった。

 セシルはドワーフに首振りエンジンの説明書きを書いた時点では言うつもりはなかった。しかし、ドワーフが英語を使うと分かった瞬間に話すと決めたのだ。前例があるのなら知りたいと思ったのだ。そして、英語を話したときからバレることは想定内だったということだ。


 「姉さんが、信用してくれれば話してくれると思いますか?」


 「さぁな。信用してても、信用しているからこそ、言えねぇこともあんだろ。それをどう考えるかはソイツ次第だ。さっきの様子じゃ、信用とは別次元のように思ったが。」


 (信用しているからこそ、言えないことがある...?)


 ノエルは年不相応に大人びているが、やはりまだ幼い。佐助の言葉の意味をじっくりと考える。

 レオンもまた考えていた。


 「手前らはなんでそんなに知りてぇんだ?放っておけばいいだろ。」


 その言葉にまた二人はしゅんとした。


 「姉さんが心配......だから。」

 「セシルは自分にどれだけ価値があるのか分かってなくて。」


 「あ゛?ありゃ、一番に分かってんだろ。」


 佐助の言葉に目を見開いた。


 「手前らにどう映るかは知んねぇが、ありゃ、どう見たって自分が及ぼす影響を考えすぎてる奴だろ。」


 「まさか...!?」


 「そんなに意外か?まぁ、手前らの常識じゃ量れないからな。俺も分かんねぇが、なんも考えてねぇわけじゃないだろうぜ。」


 あ゛ーったりぃ...と言いながら息を吐いた。


 「で?何が気に食わねぇんだ?テメェらが悩むことじゃねぇだろ。それともなんだ?好きな奴でもいんのか?ませてんな。」


 佐助は餓鬼の面倒を見るのがいい加減疲れていた。


 「......」


 「図星か?まぁ、ありゃ、よくも悪くも他人に関心がねぇ。自分にも。人を見ているようで実際に見ているのはソイツの書いた文や作品、その他数字だ。友人未満くらいの付き合いなら簡単じゃねぇの?」


 忍んで多くの人間を多くの者を観察してきた故の考察だった。


 「自分を恋愛対象になるとは思ってねぇし、誰かが恋愛対象になるわけでもねぇ。で、恋愛経験もねぇだろう。男も女も関係なく接するだろうなぁ。奴にとっちゃ、どうでもいいことだ。婚約も、家と家との関係を繋ぐなら、とでも言ったんだろ。なんなら独身でも構わないくらいにな。」


 恐ろしいほどに当たっている考察に若干二人は引いていた。


 そして、(4歳に恋愛経験なんてあってたまるか!!)と二人は思っていたが、佐助の予想は前世も含めたものだから、あながち的外れでもなく、そして、当たっていた。


 「まぁ、それを変えねぇ限り、幸せな家族は築けるだろうが、そこにあるのは家族愛だ。悪いことはねぇ。奴もそのために尽力だってすんだろ。......その相手がそれで満足できんならな。」


 沈黙がその場を支配した。


 「っ!!ばあさんとの話が終わったみたいだぜ。そろそろ出てくんじゃねぇか?」


 佐助がそう言ってから数秒後、セシルが家から出てきた。


 レオンとノエルは少し赤くなった目に驚いた。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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