視察 XI 追及
前回までのおさらい
♪ピーンポーンパーンポーン♪
高校生だった七瀬が転生して伯爵令嬢セシルとなった。
色々とあって弟のノエルと婚約者?のレオンさんと我が領エマール領の視察に訪れていた。
私はカイダタ牧場近くで文明にそぐわない建物を発見したため、その建物を調査した結果、ドワーフと会うことに成功。
彼らドワーフはとても高い技術力を持っているため協力してもらおうと交渉に臨んだ際、何故かドワーフは英語を扱うことが判明したため、ノリに乗って自分の話せる範囲で英語で会話をしてしまった。
そして、今ココ。
私は、正確には私たちは、妖精(仮)=ドワーフとの交渉を無事に終え、件の建物を出た。
交渉中、完全にノエルとレオンさんの存在を忘れていたのだが、今は忘れさせぬというように強い力で両サイドで手を繋いでいる。
そして、沈黙が続いていて、超緊張する。
「ふぅ。まさかドワーフと交渉することになるとはね。」
「人間にとても近しい容姿をしていましたね。少し背丈が低いくらいでしょうか。」
レオンさんとノエルがなんてことない会話をしている。
「まさかドワーフが人間とは異なる言葉を扱うとはね。文字が同じで助かったよ。で、セシルは何故会話できたのかな?」
「えぇ。姉さんが会話できた理由はずっと気になっていたんだよね。紙に書いて会話していたのを考えると、完全にという訳ではないみたいだけど。」
鋭い目線が向けられた。急に突っ込むなよ。
「偶然だと思いますよ......?」
なんとか誤魔化せただろうか。
「偶然、ね。俺たちは別言語が存在することすら知らなかったんだ。人間以外と交渉できることもね。伝説上に存在したと聞いたことはあったけど、それが人間と話せるということや、どんな言語をもつかということは知らない。」
「隠れ住んでいた、という癖に姉さんが一筆書いただけで話を聞いてくれたことも気になるよね。僕だってただそこにいた訳じゃない。」
追及が続いていく。
「ほ、本で、読んだだけで......。」
嘘じゃない。
だって、前世本で読んだし、散々勉強したもの。
「へぇ?どんな本で読んだのかな?俺も読んでみたいな?」
「あとさ、姉さん、次のところにエルフが居ると教えてもらっていたけれど、また接触する気なのかな?」
両サイドから美男子に攻められるこの状況、後ろめたいことがなければいいのだが、そうでなくともプレッシャーに押し負けてしまうに違いない。
そして、この世界の人間の本に英語について書かれているものが存在しないということも、ドワーフの話から容易に推測できる。
さて、どう答えるのか。
「エルフとも接触するつもりですよ。」
とりあえずノエルの質問にだけ答えた。レオンさんの質問はスルーだ。
「エルフとの接触か......。心配になるが、下手に妨害して一人で交渉される方が怖いからな。」
「そうですね、姉さんなら強行突破しかねませんから、むしろ許可してついて行ったほうがいい気がします。」
ふぅん。
ついてくるのは別に構わないけれど...。
「ドワーフとの交渉の時、なにも話していませんでしたけど、それでよかったのですか?」
エルフとの交渉の際も同じようなことになるのではないかな。
「それは姉さんが勝手に交渉をどんどん進めているせいで会話の流れが分からなくなっていたからでしょう?」
「うん、発端はセシルが何故かドワーフと未知の言語で会話を始めちゃったことだからね?」
やばっ、根にもたれてた?
私も確かに聞かれたくない話とかは英語でやっていたけれど、なんか、根にもたれているのは怖い。
「俺もその言語について知りたいんだけど、それ授業で取り扱ったりする?」
「いいえ、しませんよ。私だって完全でないし、教えられるほどでもありません。ドワーフたちがその言語用の文字を扱っているのかもわからない状況下です。する、しない、ではなくできないんですよ。っあ。」
授業という言葉につられて言ってしまった。
イッテシマッタ。
「僕も話してみたいんだけどな。」
そんな顔で言ってもダメです。無理なんですから。
「今後、交流が増えたら教えてもらったらいいんじゃありませんか。」
もう、どうしようもない。
「はぁ。何を言っても話してくれる気はないみたいだね。こうなったら、仕方ない。次の視察での監視を強化せざるを得ないな。」
「そうですね、レオンさん。僕も姉さんを甘く見てました。これは思った以上に......。」
追及が止んだと思ったら、監視が強化されるだって...??
頼むよ、ただでさえ、両サイドで手を握られていて自由にどっかに行けないんだから。それ以上に拘束するってどうするつもり?




