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視察 X ドワーフ

 日の出の前に私たちが件の建物に行くと既に妖精(仮)と思われる人がいた。


 「もう既に居るとは。登場シーンを見たかったのに。」


 「妖精、実在したんだね。人間とほとんど変わらないようだけど、背丈が少し低いかな。僕よりは高いけど。」

 「セシルに危害を加える奴じゃないといいんだけど。」


 ノエルもレオンさんもそれぞれに感想を口にしている。


 そこに居たのは一人。

 私の知るドワーフのような見た目をしている。


 「ディジュゥライトゥディスレラー?」


 その人が喋った。


 「オーアィゴッダミステイク。」


 ドワーフらしき外見をした人は懐から紙とペンを取り出し、流暢に字を書いた。


 [お前が手紙を書いたんだな?言葉通じないだろうからこれで伝える、お前も分かるんだろ?]


 見せられた紙に書かれた文字を読んで理解した。

 そして私は持ってきたノートに書いて返事をした。


 [えぇ。初めまして。セシルです。会えて嬉しいです。早速ですが、何故ことばが違うのに文字はわかるのですか?]


 それを読んで彼はまた紙に文字を書いてみせた。


 [俺はドーリと呼んでくれ。ドワーフという種族だ。もう、人間では知っているものも少ないだろうがな。文字が分かるのは女神さまからの洗礼で受け取る文字が皆共通だからだ。]


 なるほど。

 どの範囲からかは分からないけど、洗礼を受け取る種族ならば文字が共通で通じると。なるほど。

 

 あと、もう一つ気になっていることを確かめるとしようか。


 「 Thank you. Did you speak this language? I can speak it a little. (ありがとう。あなたが話したのはこの言語ですか?私はこれちょっとだけ喋れるんです。)」


 「 Are you serious? I see the human who speaks English for the first time!! (マジで?英語喋ってる人間初めて見たわ!!)」


 やっぱり英語だったか。

 賭けだったが、当たりか。

 私もこちらで随分と生きているし、向こうでもちゃんと喋れるレベルじゃなかったから心配だったんだけど。

 まあ、この場合は伝わらなかったら筆談すればいいんだけどね。


 「 I can't speak English well. Could you write down if I cannot understand. (うまくは喋れないんです。もし私が理解できなかったら、書いてくれますか?)」


 まぁ、文法が間違っててもしゃーない。


 「Yeah. We've lived so that it wouldn't be found out by the humans for hundreds of years. But I had to see you. (あぁ。俺たちは数百年間人間に見つかんないように暮らしてきた。だが、あんたには会わなくちゃいけなかった。)」


 「Why?(なぜ?)」


 「Because of this letter. (この手紙のせいでな。)」


 ドーリはそう答えた。

 思惑通り、彼らの興味関心の対象にはなったようだ。


 「 I have another question. Why have you lived like it? I think I cannot understand your answer. Could you write down your answer? (別の質問。なんでそんな風に暮らしてきたの?あなたの答えを聞き取ることができないと思います。書いてくれませんか?)」


 like it で合っていただろうか?これはテストじゃないから、伝わればいいんだけど。

 というか、理解できないって部分、失礼に伝わってしまったらどうしよう。


 「OK. I got it. (オーケー。わかったよ。)」


 ふぅ。

 ひとまずほっとした。


 まさか、死んでから英語使う機会に恵まれるとは。


 [俺らが人間と関わんなくなった理由は人間が技術を捨てたからさ。女神の洗礼に頼る余り、それで満足してそれ以上を求めなくなった。そして、学ぶことを辞めた。人間のことを完全に知っていたわけではないから、確実ではないが、理由は戦争か貴族が平民の蜂起を恐れたことだとドワーフでは伝わっている。今では文字もまともに扱えず、簡単な四則演算さえできない。まぁ、最近のここらは違っているから少し手を貸したりもしているんだがな。ドワーフは女神さまの洗礼を使いながらも、学ぶことをやめず、魔法と能力に依存しない技術を確立してきた。どうしようもないところは借りているがな。だが、人間はそれを蔑んだ。平民は基本的にそんなことはしないが、貴族はそうだ。このエマールでは代々違ったが、それ以外だと隣の貴族だな。あそこはダメだ。ここと同じ建物をつくって食料を調達しているが、以前、見つかった時に差別を受けたと聞いている。]


 「Don't worry. I'm sure your English is great. Just be confident. (心配するな。あんたの英語はいい。自信を持て。) 」


 慰めてくれたのか。


 「 I'm glad to hear that. (それを聞いて嬉しいです。)」



 で、人間を避けた理由は......?

 なるほどね。

 嫌気がさしたと。


 [なら、失われる前の技術を知っているということで間違いありませんか?]


 [あぁ。それ以上の技術を蓄えていると自負している。]


 [尊敬します。道具が良くても扱うだけの頭脳がなければそれは宝の持ち腐れです。地下道を作るだけの技術があることは何となく推察しています。その技術をこの領の発展のために教授願えませんか?勿論、報酬というか対価は用意します。]


 [あんた、そんなの払えんのか?]


 [えぇ。対価は私のココにあります。]


 [そりゃ、手紙に書いてあったようなのか?あれは皆に好評だったぞ。あと気になってたんだが、貴族のお嬢さんのように見えるが?その周りのは坊っちゃんだろ?]


 [えぇ。本名をセシリア・フォン・エマールと言います。身分を明かさなかったことについては聞かれなかったから、ということにしてください。私は貴族でなく、ただのセシルとして交渉に来たつもりですから。]


 [そうか。なら、周りの奴らはなんで来たんだ?]


 [置いてこようと思ったのに、ついてきたんですよ。過保護すぎると思いません??]


 [あ゛〜〜。そうか。というか、周りの奴らは話している時理解していなかったと思うが。お前はどう勉強した?人間の書籍なんかに載ってたりするのか?]


 まあ、確かにね。

 私としては何故ドワーフの言語が英語なのか気になるのですが。


 「 Can you believe I have memory of the previous life? (あなたは私に前世の記憶と信じられますか?)」


 「 !? ... Hahahahaha. It's interesting. Yes, I can. I believe it. (そりゃ興味深い。あぁ、できるよ。俺は信じる。)」


 「 Why? (なぜ?)」


 「There used to be a man who had memory of the previous life, and he made this language. (昔、前世の記憶を持つ男がいたんだ、そして彼はこの言語をつくった。)」


 そうか。前例があったのか。

 その人が英語を話す人だったと。

 なぜ、英語を教えたのかは謎だが、この際どうでもいいだろう。


 「 I see. I learned English when I was in previous life. I'm not native speaker. (なるほど。私は英語を前世で勉強したんです。ネイティブではなかったので。)」


 「No way!! You learned English as second language? (まじか!! あんた第二言語として英語を勉強したのか。)」


 「Yeah. But I think it's more difficult to write in other language. (えぇ。でも他の言語で書く方が難しいと思いますよ。)」


 「 Do you think so? I'll try to learn human's language. (そう思うか?人間の言葉も勉強してみようかな。)」


 「 I think you master the language soon. Already you can write the sentences, All you have to do is reading letter. (すぐにできるようになると思いますよ。既に文章は書けるんですから、やらなきゃいけないのは読むことだけですよ。)」


 「ha ha!! Your English is so cool!! I want to talk in English but I write down the sentences. (あんたの英語はとてもいい。もっと英語で話したいところだが、文を書くぞ。)」


 [手紙によれば今日ここを発つそうだね。だが、ドワーフ側としてはもっと話がしたいし、街に招待してもいいと思っている。あんたの事情によるところか、あんたたちのアイディアは貴重だ。そちらの二人には何も言ってないだろうが、その言語を始めた人もたくさんの話をしてくれた。残念ながら当時の技術で理解ができないものは無くなってしまったが、当時もたくさんの技術が発展した。もし、それが望めるのなら、こちらはいくらでも手をかそう。酒は欲しいし、食料は必須だが。]


 前世云々を英語で話した意図も理解してくれたか。


 [なるほど。願ってもない話だ。私一人じゃこの情報は手に余るのでね。私のあやふやな記憶で良ければいくらでも提供します。ここを発つのは都合によってずらせません。本当に残念です。そして、これからなのですが、私も大量の仕事がありまして......。近頃、多くの民が文字を扱えるようになったでしょう?そのプロジェクトを私が進めています。その仕事が大量で、潰れそうなんですよ。今回は都合により、誰でもできる部分を押し付けてきました。けど、いつまでもというわけにはいきません。]


 [それもあんたのアイディアか。なら、納得だな。その伝わっている彼も誰もが文字を扱い、学んで当たり前と思っていた。それを実践したのだろう。彼は人間から技術が失われる前の時代の人だった上、ドワーフだったと聞くから以降文字が人間に広まることはなかったが。]


 [そうでしたか.....。私は貴方に会えたことを幸運に思います。そうですね、週に一度以上はこの地域をエマール家の者が訪れるのですが...そのとき、いや、私でないとダメか?]


 [街に招待するならあんたがいいな。理由は分かるだろ?]


 [えぇ。まぁ。]


 [できれば時間をつくって欲しいが、無理も言えない。伝え聞くのみだが、彼も相当仕事をしていたそうだ、それこそ寝る間を惜しんでな。だから、あんたに無理をしろとは言わない。だから、手紙を書いて欲しい。わかっているとおもうが、ココに置いてくれれば俺が受け取りに来る。ここに置くくらいなら誰かに頼めるだろう。街からもたくさん手紙がくるだろうが、最小限にと頼んでおこう。返事は、街が纏めたもの、大使のハンコが押してあるものだけはちゃんと見て返事をしてくれ。それ以外は、返事をくれるとありがたいが、無理にとは言わない。]


 [大使がいるとは思いませんでした。公式のものはMUSTで後は余裕があればということで。しかし、肝心のハンコというものを知らないのですが。]


 [あぁ、その紙、貸してくれるか?というか、ここに実物を押してもいいか?]


 [えぇ。]


 私はそれを手渡すと、懐からハンコを出して押した。


 [本物はこれが封蝋になっている。]


 [なるほど。]


 [会えなくなるのは惜しいが、そろそろ時間だろう。日が登って暫く経つ。そこの二人も限界間近だしな。そろそろ帰ってやれ。ちなみに屋敷に戻るのか?]


 [ニルンプカという場所に最後の視察です。この山の近くの大通りを挟んだ向かい側、ってこの説明でわかりますかね??]


 [あぁ、ならエルフがいる。とても知識を持っているから声をかけるといい。得られるものは大きい上、ある程度敬意を持って接すればいい結果が得られる。また違う言語を操るが、彼らは少しなら人間の言葉を話すことができるらしいからな。ドワーフとの会話はもっぱら筆談だ。]


 [情報ありがとう。是非会ってみます。知識や技術を持つのなら大歓迎です。いくらあっても足りない。]


 [好奇心旺盛だな。ではまた。]


 「 Have a great day!! (良い日を。)」


 「 Thank you so much. And you too. (ありがとうございます。そして、貴方も、良い1日を。)」


 私はその建物を去った。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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