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視察 VII ムエ教会とその周辺地域

 ムエ支部は大通り沿いの林の中にあって、支部の入り口は大通りに面しているが周りは林まみれだ。


 私たちはポータルを利用してムエ教会に移動した。


 ムエ教会がある地域は牧場を生業としている。実は、先代の伯爵夫妻やお父さまの姉、私の叔母に当たる人もこの辺りに住んでいるらしいのだけれど、公爵さまが来るなら引っ込んでいると引きこもっているらしい。確実にエマールの血を引いているなと思った。普段は支部で仕事を回しながら、牧場で研究をしているそうだが、今日は支部にもいないんだと。


 「エマール伯爵、私はエマール領にはエマール邸とラッセルボックの孤児院、教会以外には古い建築物はなかったと記憶しているのですが。」


 レオンさんが私と手を繋いだままお父さまに話しかけた。


 「確かにそうだ、です、が、それが?」


 なんか、タジタジだな。話しかけられると思ってなかったんでしょう。


 「であれば、先代の夫妻はどちらにお住まいなのですか?」


 その質問にお父さまはビクッと体を震わせた。


 「それは......先代夫妻に会いたいと?」


 「いえ、単なる興味です。私の知る限り、貴族は古き建築物、もう作ることのできない昔から現存する建物に住むのが一般的です。ですから、先代が屋敷にも、もう一つの建物にも住んでいないというならば、それは大変珍しい事だと思っただけです。」


 レオンさんはそう言った。

 ふーん。昔に建てられたものは作れない。だったら作ってみよう、とはならないんだね。

 聞いたことある話では、ピラミットは現代じゃ建てられない、とか?それは機械を利用せずにとか人件費を考えるとなのか、本当に技術的に作れないのか。


 「はぁ。よかった......。先代夫妻は普段は支部に住んでいることが多いですが、そうでなければ、そこら辺の家のどこかに居候していると思います。」


 居候なんだね。

 家はないんだね。

 まぁ、支部が家なんだろうけど、なら、きっと外泊に当たるのかな。


 「なるほど。エマール領を見てきて、もう驚かないと何度も思いましたが、これはまだまだ......」


 レオンさんは驚いているようだけど、王都に行きたがらない時点でかなりヤバい貴族だと気づいてほしい。

 あと、私は古い建物よりも新しい建物の方が基本的に好きだ。


 「ムエ教会周辺にはご覧の通り牧場がありまして。乳牛や羊、鶏など殺して肉にするよりも、育ててずっと役に立つ家畜が多いのが特徴です。」


 お!!珍しくお父さまがガイドをしている。

 だけど、そんなことしても私のイメージを覆すようなことにはならないからね。


 「同じ牧場を管理する集団で暮らしていて、それが他の地域の集落に当ります。」


 ふうん。


 「また、肉は狩で手に入れることが多く、最後に視察する予定のニルンプカという地域では狩猟と採集を生業にしている集団がおります。おそらくエマール領で最も戦える者たちです。」


 なるほどね。

 戦闘集団で採集も行うとなると、とても有能な方々だな。

 採集ができるということは知識が豊富ということ。

 これは話を聞きたい。


 「セシル、何か企んでいるね?」


 「!?」


 「その顔、図星みたいだけど。はぁ。これは監視を強化しないと。」


 ナンダッテー!!

 絶対に話を聞きたいのに。

 仕方ない、合法的にしよう。

 本当ならば私がこっそりと行きたいところなんだけど。


 「姉さんがどうしたんですか?」


 ノエルがいいタイミングで帰ってきた。


 「伯爵の話を聞きながら何かを企んでいたんだ。実行を阻止しなければならない。」


 「姉さん、何を企んだの?」


 まだ確定事項でないから言えない。

 これはスルー推奨。


 というか、お父さま、いるなら助けてよ。

 と、お父さまの方に視線を向けたらすでに逃走済みで誰もいなかった。

 お父さま???自分だけで逃走だなんて卑怯じゃないんですかぁ?


 「目を逸らしても無駄だよ。姉さん、黙って動いちゃダメ。いいね?」


 いつぞやの天使のような笑みで普段よりもワントーン上げている授業よりもさらに上げたような声で話しかけた。

 顔が近い。


 「セシル、ダメだよ。俺に何かされたくなければ、黙って何かをしない、いいよね??」


 耳元で囁かないでください!!


 「何かって何ですか?」


 「ん??なんだろうね?約束破らなければいいだけの話でしょ??」


 そんな笑顔で微笑まれても、怖いだけ。

 なに?この密着度??

 またレオンさんとノエルに挟まれている。


 「レオンさん、手加減要りませんからね??」


 ノエルはまた無駄なことを!!


 「大丈夫。手加減しないし、セシルが痛かったり苦しかったりすることはしないから。安心して。傷モノになんてしない。ちょと理解してもらうだけ。」


 だったら何をする気なのか余計に怖くなってきた。


 「そんなことしたら僕が許さないよ。」


 ノエル、頑張れ!!だけど、行動の件についてはこちらの味方をしてほしい。


 「だろうね?それは分かってる。」


 レオンさんとノエルは仲がいいな。


 ムエ支部からムエ教会へポータルで移動した。

 牧場は広くて、放牧に近い形だった。というか、羊と牛と鶏が種を問わずに自由に生活している。

 超自由。そして住民も自由。マイペースな人柄なんだ。


 ここの国語の解答がユニークだった理由がわかった気がする。

 芸術系でも自由な発想に溢れているのがこの地域の特徴と認識しているが。


 良いか悪いかはさておき、開放感あふれているなと思った。

 私は......人に抑圧されないのは羨ましいけど、狭いところでひっそり本を読むのも捨て難いなと思ったりして。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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