閑話 : パトリスによるセシル手記
パトリス・フォン・エマール(セシルの父)によるセシルを観察した日記です。
娘が天使だ。
親馬鹿だという人もいるだろう。
否定はしない。
だが、贔屓目なしで見ても可愛いだろう、セシルは。
因みに、妻は女神だ。
別枠なのだ。
セシルは我がエマール伯爵家待望の長女だ。
使用人たちにも可愛がられてすくすく育つさまはもう、天使以外の何者でもない。それ以上か?
そう、セシルは長女だから、他と比較しようもないのだが、少し成長が早すぎる気がするのだ。
肉体的な成長ではない。それはむしろ遅いくらいだと思っているが、そのままでもいい。
精神的か頭脳的な成長が著しいのだ。
セシルにつけている庭師のイーヴが数を教えた時の食いつきは恐ろしく、その後何故か落ち込んだという報告を受けている。
そのときに、指が7本生えている理由を尋ねられたとも。
別の日には髪を束ねるように侍女のエマにねだったそうだ。あのときはとても可愛かった。顔がしっかり見えてセシルの良さが増し増しだったね。
当たり前のことを疑う、素晴らしい才能じゃないか。将来が有望だ。天才か、私の娘!
私のようになりたいから、私と同じ服を着たいと言った時は可愛さが溢れて死ぬかと思ったが、それ以上に!!セシルが着たときの、あのちょっとダボっとした感じ、そしてカッコイイデザインから可愛い顔が出ているこのギャップが可愛すぎて、そして喜んでくるくると回っているあのセシルが可愛すぎて、屋敷の人間全会一致で大量に服をつくった。それは当然すぎる帰結と思う。使用人たちもメロメロだったからな。親馬鹿でなくてもそうなる威力の可愛さ!!最高か!!
成長が早いならそれでもいいんだ。
喜ばしいことだ。
ただ、私たちがそれを止めないようにするにはどうしたらいいか。
本を与えよう。
好きなだけ本を読ませて、興味のある分野には最高の人間を用意しよう。
文字だってすぐに覚えてくれるだろうから、セルジュに頼んでおこうな。
うん、ひとまずはそれで良い。
あとは、セシルの反応を見てからだな。
そうだ!!
私は天才的なことを思いついてしまったかもしれないぞ。
妻に私の服を着せたらどうだろう?
セシルがあれだけ可愛かったんだ。
妻と私の服。
どんな反応が起きるか未知だ。
今度、寝る前に頼んでみよう。