勝ち取った休暇の過ごし方 1 ~球の展開図~
ノエルが無理を押し通して?思いがけず休暇を得たわけだが、何をしたらいいのかわからない。
私は困惑していた。
生まれてから、この謎設定に適応しようと努力を重ねてきた。
思いつきのままに識字率向上計画を実行に移した。
それまで自由に遊ぶということをした覚えがないのだ。
さて、どうしたものだろうか。
小説?とかもあまり唆られないし、研究とかを読み込んでたらいつもと変わらない。
「ここ数日くらい机から離れなよ。」
という、ノエルの助言もあって、何をしたらいいのか分からなくなっていた。
だから、その助言をした原因であるノエルの様子を見に行った。
しかし、彼は書斎でテストの分析をしていた。
「ノエル?ノエルが言ったんだよね?机から離れろって。お陰で私は何をしたらいいか分からないんだけど、ノエルは机で仕事してていいの?」
あまりの困惑に思ったことがそのまま口から出てしまった。
「いや、だって......気づいた頃には勉強していたし、その頃には授業の助手をやってて、そのままズルズルと....結局休暇をもらっても何をしたらいいのか...。」
「私も同じなんだけど。机につくなって言ったよな?」
怒ってはいないんだけど、ノエルが言えたことじゃないよね?
「「はぁぁぁ。」」
二人してため息をついた。
「さすがに危機感を感じたよ、姉さん、今日は机から離れて乗り切ろう。僕も努力する。」
「えぇ、がんばりましょう。」
私たちは場所を移動した。
とりあえず、授業をする講堂に場所を移した。あそこにいると勉強や仕事を始めかねない。
「何をするって、外で??ボール遊びとかかな?ボールあるかな?」
「そうだなぁ、縫い物とかなのかな。やったことないから分からないけど。」
「縫い物で、ボールとか作れんかな?」
「球体、できないことはないんじゃないかな?展開図が想像つかないけれど。」
「展開図は何となく分かるよ。こんな感じのやつがいっぱい、サイズが分からないけれど。」
私は黒板に簡単に球の絵と舟形の絵をいくつか書いた。長さとかがどうだったかな。見取り図から考えるに頂点どうしを繋ぐと、球の円周の半分になると思うのだけれど。
「僕がちょっとやってみるよ。少し粗雑でも内側でなんか、うまいこと調整すれば不恰好でもそれっぽくなると思う。」
「そうね、誰かに売りつけたりするわけでないから、そこまで気を遣うことないね。」
ノエルが、型紙?みたいな感じで試作してくれた。
確かに不恰好ではあったけれど、それなりの形になった。
「よし、これからちゃんと作るなら改良は必要だけれど、今日のところはこれで十分。問題は、縫ってもらうところだけど。姉さん裁縫できる?」
「いや。最低限知ってることは無いわけではないんだけど、ぐちゃぐちゃの問題作になるよ?ただでさえ、型紙がアレなのに。時間かかっちゃうし、それで今日が終わるね。」
「なら、依頼だね。誰だったらできそうかな?姉さんの侍女さんはエマだったね?僕の侍女のララとレアは裁縫できるだろうか?というか、今日は仕事があったはずだが、エマは次の授業でキツいから、なら、レアにしようか?」
「そうしましょう。」
レアに頼んで、指示通りにフェルトを縫ってもらい、中に綿をパンパンに詰めて、ボールが完成した。
型紙も不恰好だったので完成も綺麗ではないが、悪くは無い出来だろう。少なくとも、今日遊ぶ分には。
私とノエルは庭に出て、ボールを投げて遊んだ。キャッチボールだ。
「そうだね、前の数に2倍していこうか。私から1!!」
ポーン。
ボールが空を飛ぶ。
「2」
下から上に投げ上げてなるだけ取りやすく。
「4」
近い距離だからそこまでの失敗はないが。
やはり、安定しない。球体には程遠い上、ずっとボール遊びなんてしてないから。
「11(**)」
「うーん、22(**)」
「44(**)」
「32(10)なら64(10)。7x9=63(10)で49+14+1だから121(**)。」
「げ、121(**)なら右から2、4、2で、242(**)」
「うん、4、11、4、なら514(**)」
セシルは10進数に変換したりそのまま計算したりしながら答えを求めていく。
ノエルはそのまま計算をしていく。
二人の計算は心地よいペースで延々に続いていく。
「もう、かなり大きくなったね。なら、次は素数な。1とその数しか約数がない数。まずは、2だ。」
「なら、3」
また、新しいお題で、どんどんとキャッチボールは続いていく。
彼らは結局数で遊ぶことになっていた。
いつもの仕事よりは楽しく、心地よい、頭の回転を楽しんでいた。