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カクカクシカジカ

投稿遅くなりました

  ……もう、帰っていいかな。


 目の前で繰り広げられる父娘騒動を見て、そんな気持ちを隠せなくなり始めていた。


 「で、セシルさんに来てもらう件なんだけど……」


 そう王女が話し始めたのにも気づかないまま、私は虚空をぼんやりと見つめながら、作業をしていると、袖口にいたらしい瑞稀が腕を締め付けてくるのでハッとした。


 どうやら本題に入ったらしい。


 話を要約すると、


 エナム王国には『貴族は領民の生活を豊かにすることを第一とする』という憲法があるのにもかかわらず、私腹を肥やす貴族が絶えないらしい。しかしながら、全てを罰していては王国が回らなくなり王国自体が内乱の危機に陥るなど、問題が多いため、ある程度は見逃している。しかし、それでは看過しきれないほどに領民を虐げる貴族がいた場合には、見せしめとして討伐を行い、他の貴族にも改善を促すことになっているようだ。


 「今回は、その討伐のための調査に入る貴族を限定したいの。加えて、謀反を企てる貴族がいたならそれも見つけて欲しい。」


 ……とのことだそうだ。

 王女殿下にそう言われても本当に困る。


 「……私はそういう社交界に渦巻く陰謀とかとは無縁に生きたい平和主義なんですけど。」


 「というか、私はそういう頭の良さとか才能とか期待されても困るんですって。結局のところ、凡人に変わりないし、それに対する教育も鍛錬も、してきてないし、今後もするつもりがありません。」


 ということで、断ったはずなのだが、断れなかった。

 そう、断れなかったのである。


 曰く、だからこその違った視点の意見を聞きたいだとか。


 知らんわ。


 そういう場にいるだけでストレスなのに。


 知ってる?


 留学出るまでさ、家族と家で働いている人以外、あったことなかったんだよ?

 コミュ力期待できない。

 前世も今世も人間力は底辺なのですよ。



♦︎♢♦︎


 そして、断れずに今に至ります。


 王女殿下の後ろで控えるに至る。


 そもそもさ、一介の貴族が王族の命令をそう簡単に断れないんだよね。 

 だけどさ、謀反を起こすなんて面倒なこと、もっと嫌だ。血が流れるか、飢餓が増えるか。戦なんて反吐がでる。


 王女殿下の後ろで彼らの会話を聞き続けて、もう数十人かな。

 怪しい人はいるし、嫌いな人もいるけど、これといったことはないかな。


 そう思っていると、王女殿下が小声で告げてきた。


 「ちょっと、気になる子がいるんだけど、私が公に話しかけると問題になるから、ちょっと裏まで連れてきて。」


 なるほど、王族とは面倒だ。

 ただ話しかけるだけで気を遣うとは。

 あーあ、王族じゃなくてホントよかったー。


 ……って、私が連れて行くの?


 つまりさ、私がその対象に話しかけなければならないってわけでさぁ。


 え?


 私が?


 ちょっと、それはなくないっすか?


 だってさ、ずっと突っ立ってるだけでいいって言うからきたのに。


 はいもう一度繰り返しまーす。

 王族の命令は?

 ーーゼッターイ。


 ま、本当に嫌な時はブッチするけどね。

 面倒くらいじゃ聞かなきゃだよね。


 チッ


 『聞こえておるぞ』


 いや、別に瑞稀に聞こえたって問題ないけど?


 はぁ。


 王女殿下は去ってしまったので、仕方なくその当該人物に近づいた。


 とりあえず、気配を消して背後に立ったはいいものの、どう話しかけるべきか……。


 ふーむ。


 ま、とりあえずさ。


 「ねえ、きみ、ちょっと時間ある?」


 肩を突っついてそう尋ねてみた。


 「ヒィィィッ!!」


 当該人物ーー女性なのだが、彼女は見てはならないものを見てしまったホラー映画の登場人物のような怯えた表情をして私を見た。


 私って、そんな怖い?

 だって、子供だよ?

 見た目は子どもだよ?


 「コロサレルッ!」


 いや、殺さないけど?


 『笑笑』


 瑞稀さ、笑ってないで助けてよ。


 >>草

>>weed

>>笑笑

>>lol


 おい、忍者見張り組‼︎

 Chatで笑を連発するな。

 履歴が見にくくなるだろうがっ!


 「ちょっと建物の裏まで来てくんない?」

 

 >>ちょっと校舎裏までww

>>体育館裏まで笑


 『トイレに呼び出すか?』


 裏で茶化さないでくれるかな?


 「ハッ!これが噂に聞く突然の死ッ!貴族の社会は魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)し策謀と陰謀が(ひし)めく深淵なる社交界(ディストピア)。王宮には誰とも分からぬ死体が放置されているんだわ。」


 漢字が多い。

 ナニコノコ。


 「……面倒だから、さっさと来て。私も仕事なんだ。」


 「ヒイイイッ。コロサレル……ドナドナ…コロサレル。」


 「叫ぶなよ。私が悪者みたいだろう?」


 「ハイイイエ⁉︎」


 王女殿下の元へ連れていく間によく分からない言葉を呟き続けていた。


 随分と、パーティー会場から外れた建物裏。

 王女殿下が待つそこに適当に放り投げた。


 「ぐふっ」


 「セシルさん、扱い雑すぎない?」


 「……この人、めんどくさすぎて、丁寧に扱う気力も失せました。」


 『()もありなん』

 

 

投稿ペースが落ちています

すみません…

次回は頑張ります。


>> …… 固有能力『Chat』による会話

『』  …… 契約による念話による会話

「」 …… 口頭で行われている会話(=普通の会話)

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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