女神依存度
2023年
あけましておめでとうございます。
本年、初めての更新です!
「泡沫2022師走短篇集」読んでくださった方は既にご挨拶していると思いますが、本年もよろしくお願いします。
これは大変なことになってしまった。
私は、前世の記憶と亜人関連のことを説明したら、洗礼式のことは私が女神に査定を受けてましたって言ってサラッと終わる予定だったのだが…。
皆さんの感想がこちら
「会話…聞こえていたでしょう?特に前半部は普通にこちらの言語でしたし。」
「一応、聞こえていましたよ。」
『はい、ふわふわしていましたが、内容は全部聞き取れましたし。』
「…なんとなく聞こえてはいたが、頭が回らず後から思い出すことしかできなかった。」
「途切れ途切れで、ほとんど聞こえなかったが?」
「あぁ、女神とか単語は聞こえたんだが。」
「そうだな。」
「光で真っ白になって…なにも覚えていなくて。」
ブルナンどのはあの場にいなかったので、この中にはいない。
ざっくり分けると。
◎明瞭に聞こえていた
○なんとなく聞こえていた
△単語が途切れ途切れで聞こえていた
×全く聞こえておらず、フラッシュしか覚えていない
◎が、私、ノエル、レオンさん、瑞稀と佐助や楓も当てはまるかな。
○が、アズナヴール公爵、レオンさんの父だね。
△が、陛下とパルテレミー公爵とカステン辺境伯。
×が、第一王子殿下。
「瑞稀、この現象に覚えはある?」
女神のことなら瑞稀に聞くのが最も確実なのはわかっていたから、即話をふる。
「言っておったろう?あの場で思考できたのは数名、アレと対話できたのは我とお主だけだと。」
確かに言っていた…女神に頼りきりだとウンタラカンタラ…。
「それじゃよ。頼りきって居れば、あそこで意識を保ってもいられない。会話を聞き取れなかったのも無理はない…あれだけ固有能力に頼り切りではな。」
「…なるほど。つまり、説明しないと、本当に聞こえていなかったんだね。」
うわめんどー。
説明を省略できると思っていただけに、裏切られた感じがすごい。
「レオンさん…説明任せていいですか?」
「…まぁ、確かにこれくらいなら?全員の認識を一致させるところまではやってみよう。」
「ありがとうございます…。」
こうして私は説明を放棄したのだった。
私は、私専用のサブでなくメインのディスプレイを取り出し、作業を始めた。
♦︎♢♦︎
「セシリア!!」
ムッ!?私の作業を邪魔するのは何者か!?
あぁ、レオンさんね。
「説明終わった。女神がセシリアが前世の記憶を悪用して世界を滅ぼすような人物でないかを直接確認した上で、固有能力を渡したという流れをザッと説明した。あとは…セシリアが忙しくなりそうだって意味深な言葉を残していったことも。」
意味深な予言のことまで話したのか?
まぁ、アレは予言だし、どうしようもないけど。
「ありがとうございます。では、今日はこれでお開きですね。」
「そうだな、知るべきところは全て…「ちょっと待ってください。」
陛下がそう言うのをレオンさんが止めた。
せっかく帰れそうだったのに、何してくれてんの。レオンさんは誰の味方なのサ。
「…今のうちに、全部報告した方がいいと思うので。セシリア、忘れてるかもしれないけど、君のその固有能力の濫用も報告すべきだと思うんだ。」
あ、忘れてた。
「忘れてたって顔したね…?確かに、セシリアにとってはもう日常なのかもしれないけど、大変なことなんだから。」
「すみません。自分が実際に使えるようになったのは昨日だって言うのに、もう馴染んでしまいまして。」
前世はむしろソレありきで生きてきたし。
「陛下、セシリアはドワーフの街やそのほかの繋がりで、固有能力に関する有力な情報を持っています。」
レオンさんはうまく下地をつくってくれてるみたいだ。
けど、ハードルを上げすぎだ。
「そんな、大したことじゃないんですよ。ただ、固有能力を2つ以上使えるってだけで。」
場が一瞬にして凍りついた。
「あぁ、もしこの発見を発表したいなら構わないですから、私が発見したことにして、亜人関連は隠してください。それなら、公表してもいいと思ってます。」
これはちゃんと言っておかないと、契約的にもまずい。
「はあああああああ?」
「実際、私とブルナンどのと会話ができているのも、その恩恵ですし…。まぁ、色々問題は山積しているので、ただ使えるだけでは意味がないのですが。」
「意味しかないじゃねぇかおい!」
「重要なことをなぜここまで黙ってたんだ?」
ふぅ、大の大人が怒鳴ると怖いですよぉ?
怒りの感情を向けられていないとはいえ。
「動揺するのは当然ですが、落ち着きましょう。まず、この遠距離で連絡することもできるってことですか?」
仕切り直しをしたのはアズナヴール公爵…。
「はい。できます。教会の奥にある機器を利用して、これまでその教会で授与された固有能力を自分に入れることができます。問題は容量、1人に入る固有能力は限界があるということ。固有能力にも大きさがありますから、何個入るかは人と入れる能力によります。」
「昨日、教会の奥へ行った用事というのは?」
「まぁ、そのためです。問題点もあって、1つは先ほどの通り容量に限りがあること。2つ目にアクセス権は付与されないこと。3つ目に個々に合わせて調整し直さないと起動が遅すぎて使いにくいこと。です。」
「2つ目のアクセス権というのは?」
「正確に説明するのは難しいですが、具体例をひとつ挙げるとすれば、もし、司祭の固有能力を私が得たとしても、司祭のように洗礼式を仕切ることはできません。」
「特殊な事例では使えないものもある、ということか。」
「大まかにその認識で正しいでしょう。」
一問一答形式でどんどん話が進んでいく…。
「では3つ目は?」
「教会にある機器を利用して、個々の魔力や体質に合わせた調整を行わなければ、頭痛などの症状が出たり、能力を扱うのに無駄に魔力を使ったり、挙動が遅かったりして、実用に足らないということです。」
「調整というのは自分でできるのか?」
「技術があれば、自分のものも他人のものもできます。しかし、技術がなければ全くもってできません。」
「ちなみに、セシル嬢は?」
「初歩的なことは可能です。少なくとも、実用に足るラインまでは引き上げることが可能です。しかし、最善ではありません。まだ、手探りではありますが、勉強して技術を高めている最中です。」
「他にできるものは?」
「私が知る人間には居ません。各種族に何名か居ますが、彼らも試行錯誤の只中にいます。これについは最近確立した技術なので、どこも技術者が人手不足の状況です。人間の方には回せませんよ?」
「その技術者の養成にどれほどかかる?」
まぁ、当然の質問か…。
「土台さえあれば、基礎を身につけるだけなら、早ければ1週間もかからないでしょう。けれど、今ここで誰かにそれを身につけさせようとしているのならば、今の状況だと…数年単位でかかります。」
「土台が足りないと?」
「最低限の数学知識と論理的思考力が必要な上、現在確立している方法は開発者が英語使用者であることもあり、アルファベットを認識できる必要があります。さらに、10進数の習得も必須条件になりますから…ノエルでもあとしばらくかかりますね。ノエルは天才ですから、呑み込みが異常に早い。それでも足りないくらいですよ?」
「…それほどまでに差があるのか?」
第一王子はそう言う。
別に馬鹿にしたいわけじゃないんだ。
「私は14(**)年プラス今世の7(**)年と少し…毎日勉強をしています。それを強要するつもりは全くありませんが、この世界で私が授業をしているとはいえ、たったの週に1度。それで追いつけるなんて傲慢にも程があります。」
うん、そもそも学校というシステムが、日本の詰め込み教育が良いとも思っていないし、今は仕事をしながら、仕事を覚えながらの学習…随分実践的でいいと思っている。
「私が通っていた学校という教育機関は毎日朝から夕方まで、休息日に行なっている授業を5~6回、週に5日行います。もちろん、所謂、座学しかなかった訳ではありませんが、宿題も毎日でますし、誰もがそれ以外に勉強を当たり前のようにしていました。…私はそれがいい社会ともいい教育とも思いません。けれど、それだけやって学力を底上げしているのもまた、事実なのです。」
「まぁ、これで全部説明は終わりました。質疑応答は受けます。」
「…そうだな。遠距離で連絡をとるための固有能力のみ、我々に追加して、調整してくれないだろうか。」
国王陛下がそう言った。
「具体的に何人ですか?」
「ここにいる面々…と言いたいところだが、これは非常時のために、エマール家に関わる貴族家は各1名、王族は全員、頼めるだろうか?」
「…はい、と言いたいところですが、私はこれでお金を稼いでいるのです。こちらだけ特別扱いとはどうにも…。」
「お金?」
他の人たちが頭にハテナを浮かべたように感じて、思い至った。
「通貨という概念がないことを失念していました。お金、というのは価値を代替するものです。つまりは、対価なしでそれを行うのは気が引ける、ということです。そうですね…皆さんへの報告を怠っていた分、ここにいる5名くらいならタダでもと思っていましたが、思った以上に人数が多そうですし、割安にしますから、食料かなにかで支払いを要求します。」
「なるほど…褒美が欲しいと?」
「まぁ、そうなります。これは、貴族の仕事とは完全に別ですし。」
貴族にも義務はある。
それに関する仕事ならば無償労働もするのだが…。
否、この生活ができる、身分がある時点で対価はもらっている事になるのか。
「大量の食糧を得てどうする?」
「…そうですね、向こうの人たちに売ります。彼ら、食糧が1番喜びますし、売って金が入れば、私も彼らへ協力要請がしやすくなります。彼らも無条件に私に力なんて貸してくれませんから。」
要は、向こうで換金できればいいんだよね。
「それくらいなら構わんだろう。」
土地とか言われたら困るってとこかな。
「わかりました。先ほど言った方々ならば、人数制限なく受けましょう。ただし、洗礼式を経ていない方は私の意思に関係なく、このシステムの恩恵は受けられませんので、ご承知おきください。」
入れなければならないのは、音声・画像認識とchatとRoomか。
どれだけ使いこなせるかは当人次第だが…。
「教会の奥で行いますが、当人がいなければ始まりません。どうしますか?」
「我々だけは先に頼めるか?それ以外は後日…。」
「わかりました。そうしましょう。…ということになりました。ブルナンどの、教会までご足労願えませんか?」
『あ゛?なんでだよ。』
「私は、この方々の調整を行います。ですから、ブルナンどのには使い方のレクチャーを頼みたいのです。」
『お前がすればいいだろう?』
「あまり時間をかけたくないですし。私よりも、あなたの方が使いこなしているように感じました。」
最後に瑞稀が彼を睨めば、簡単に出てきてくれることになりました。
本日16:00ごろに短編を投稿予定です。
twitterのお題箱から人魚と人間の男の恋の物語です。
よろしくお願いします。




