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吸血鬼の得意とする魔法

今回の更新は1話です。

実は…200話目です!

 レオンさんとエマール邸の前で待ち合わせをして、王城へ向かった。


 「これが文官の制服…。」


 「似合ってはいるんだけど…これでは素通りなんてさせてくれないだろうな。」


 レオンさんの言葉は最もだった。

 こんな、なんでもない日の王城の執務室に貴族が集結したら、何事が起きたのかと騒ぎが起きるからお忍びで、とはいうが…お忍びにも難易度が存在する。


 …このタイミングで使いたくはなかったが。

 懐からある紙を取り出して…。


 「…ふむ。わかりました。瑞稀、これでいけそう?」


 「不格好だが、まぁ、フードを被れば問題なかろう。」


 レオンさんが目の前で何度も瞬きをしている。

 驚いてくれているようでなにより。


 あの紙には魔法陣が書いてあって、魔力を通すと任意の魔法を使うことができる。

 この魔法陣の場合は、他者から自分が成年男性に見えるようにする魔法が使える。


 この魔法陣の紙は使い捨てだから、何枚も持っている。

 そう、あの厨二病患者蔓延る魔窟より持ち帰ったものだ。


♦︎♢♦︎


 当然のことだが、王城の確認作業をしているものたちはわたしたちを素通りしていく。


 まぁ、変な困難もなく王城の執務室にたどり着いた。


 扉を開けて入った瞬間、警戒されたのがわかる。

 そうだね…レオンさんが今日連れてくるのはエマール伯爵令嬢、セシルだ。こんな成人男性らしき人物ではない。


 扉が閉まったのを確認してから、私は魔法を解いた。そして、懐にしまってあったメガネをつける。


 「対面で会うのは初めてだと記憶しています。セシリア=フォン=エマールと申します。」


 あぁ、驚いている。

 …本当はこんなところで見せびらかしたくないんだけど。


 吸血鬼が得意とする魔法の一種、変装魔法。

 私は、本当に基礎中の基礎しかできなかったから、身長や年齢、性別を変えるくらい。

 向こうの人たちは、誰かにそっくりにするとか、そういう芸当も可能らしい。


 「この度は、わざわざ時間を設けてくださり、感謝します。」


 ここにいるのは…私とレオンさんを除くと5名。

 国王1名、第一王子1名、公爵2名、辺境伯1名。


 まぁ、このくらいなら問題ないかな。


 「まず、話をする前にお願いがあります。」


 「なんだ、言ってみろ。」


 「では、申し上げます。私とひとつ契約していただけませんか?」


 「契約…?」


 契約…吸血鬼が使う魔法の超基礎となるもの。

 その契約を細かく定めることで様々な魔法を可能とする。

 契約の条件はとても厳しく、それを満たさねば発動できないことと引き換えに、普通の魔法では不可能な事象も可能となる。


 「ちょっとした約束事です。私が今回の件含めて色々と情報を話す代わりに、機密保持を約束していただけないかと。」


 第一王子が何かを言おうとして、国王に止められている。

 …大方、不敬だとでも言うつもりだったのか、けど、それは当然。むしろ、止めた国王の方が異常。


 「…エマール伯爵家に常識を求めるなと、求めるだけ無駄だと言ってあっただろうが。」


 …見逃していただけたのはありがたいが、正直、不本意。


 「報告させている以上、黙っていてくれ、というのも無茶な話ではないか?」


 レオンさんの父、アズナヴール公爵が言うのもまぁ、当然か。


 「別に全てを黙っていてほしいと願っているわけではありません。ただ…そうですね、私としてはせっかくなので共犯者になっていただこうと考えたまで。もし、それを約束していただけないのなら、…ここから黙って逃走しましょうか?」


 「それを持ち出されると、こちらが辛いねぇ。」


 フッ…貴族の振る舞いも交渉術もないが、こっちには念話もチャットもあるんだ。

 今回はチャットを使うまでもなく、私の腕にいる瑞稀から念話でどう受け答えしたらいいかアドバイスがとんでくる。


 「共犯者ってどういう…」


 第一王子は把握できていないようだが、それ以外は把握、してるのかな?


 「わかった、できるだけ希望に沿おう。」


 国王の鶴の一声で、次に進めそうだ。


 「ありがとうございます。ですが、私、どうも心配性で…口頭だとどうしても誤差も誤解も生じます。ですから、この紙に魔力を通していただけますか?」


 今回の契約には、私の情報を提供する代わりに、その情報を他の人に話さないことが定められる。

 私の情報の内容や、秘匿内容は細かく設定してある。瑞稀や専門家にも確認したから抜けはないはず。


 理解していないのか、ぼやっとしたまま、魔力を通した。


 全員が魔力を利用して、契約に合意したことを確認してから、瑞稀に防音結界を張るようにお願いした。


 「…私が言うのも変な話ですが、もう少し疑り深くなるべきです。」


 ホイホイ契約するもんじゃないよ、全く。

 私が詐欺師ならどうなっていたか。


 まぁ、私が情報を持っている以上、主導権は私にあって、断ることが難しかったのは理解しているし、この手の魔法は契約内容が頭に鳴り響いて契約者に返答を求める、つまり偽りで契約することが不可能なシステムになっているので心配は無用なのだが。


 この部屋は窓がないから覗きは不可能…

 防音結界をはり、侵入を防止したから、もう大丈夫だろう。


 「さて、話をしましょう。」

 

 ♦︎♢♦︎


 レオンは実はかなり驚いていた。


 話を始めるまでのお膳立ての流れを知らなかったというのがひとつ、それ以前に自分がなにもせずとも話がどんどん進んでいくことがひとつ、そしてセシルの意外な顔をみたというのがひとつ。


 実は、契約の可能性に唯一気づいていたのはレオンだった。

 レオンは、ブルナンとの昨夜のやりとりや、留学から帰ってきた後のセシルの様子や話し方、固有能力のチューニングなどから、魔力というものの有用性、特異性、になんとなく勘付いていて、魔力をわざと使うということになんかしらの意味があると考えるのは当然だった。


 「おや? レオンはいいのかい?」


 レオンの父、アズナヴール公爵が尋ねた。


 「そうですね…やってもあまり意味がないように思えますが。レオンさん、興味あります?」


 レオンは正直、興味しかなかった。

 だが、安易に頷いてはいけないと、頭の中で警鐘が鳴っていた。


 ♦︎♢♦︎


 「…正直、興味はある。けど、それって…」


 レオンさんは警戒しているみたいだ。


 レオンさんにお願いしなかったのは意味がないから。

 これからブルナンどのとノエルとにビデオ通話かける予定だし、元々この内容は会話してあったし。今回の適用範囲はここで話す内容のみだから、ぶっちゃけ意味ない。

 レオンさんとまぁ、ブルナンどのには誰かが多分、影で張り付いてるから口止めの必要もあんまり感じない。


 「私がレオンさんに頼まなかったのは、単純に意味がないからですよ。別に贔屓しているわけじゃありません。この情報の統制に関しては私の責任でやっているので、まぁ、必要があるかというとそうとも限りませんが。」


 私は近くにあった机にもってきたディスプレイのうち、サブ機を取り出して、皆に見えるように台を使って立てた。


 「洗礼式の話を手短に話したいのですが、どうにもあの話をするには前提知識が必要でして、その話からしたいと思います。…前提知識といっても学術的なナニかではなく、私がずっと人に隠してきたこと、皆さんに意図的に報告しなかったことです。それを話さなければいけません。長くなるとご承知おきください。」


 私は用意されていた椅子に促される前に座った。


 正直、もう足が限界だったし、誰も座れない雰囲気だったんだもの。

 私が座ったのを見て、他の人も座ってくれた。


 「一から説明したいのですが、とても面倒…否、私説明下手でして、質疑応答形式にしようと思ったのですが、なにぶん、わからなすぎるもので、代理でレオンさんにでも説明を投げよう…任せようと思いまして、助っ人も用意しました。」


 私はディスプレイの電源をつけて、ブルナンどのとRoomでビデオ通話を開始した。


 「聞こえてますか?」


 『あぁ、聞こえてる。そっちも聞こえてるか?』

 『姉さん?』


 「こちらもノエルの声まで聞こえていますし、ブルナンどのの視界でノエルが見えます。」


 ビデオ通話の問題というのがこれで、動画・画像の共有に使えるのが各々の視界のみというね。

 自撮り的なビデオ通話が不可能になっている。

 まぁ、あと数ヶ月したら多分解決するよ。


 「これはどういう…!?」


 驚いて声も出ないらしい皆さんをなんか乾いた目でレオンさんが見つめている。


 「そちら、防音は大丈夫ですか?」

 『あぁ、問題ない。手筈通りだ、です。』


 手筈通り、というか、楓と佐助に丸投げしていたのだ。

 彼らは今、アズナヴール邸にいて、一室を貸し切って、防音措置をとった上で通話している。


 「…そういうことです、なんか上手くやってください。」


 「これがエマール…」


 第一王子がなにか慄いているが、知ったことではない。

 私はこれから残してきた仕事を終わらせなければならない、という大義名分があるんだ。


 「流石に、これで投げるのはマズいだろう…。」


 レオンさんにそう言われては困る…、というか、レオンさんは本日全然話していないじゃないか。

 …こうなったら、瑞稀に丸投ゲフンゲフン…任せようじゃないか。


 とか思っていたら、念話で拒否が伝わってきた。


 『困ってんなら、アレ使えばいいじゃねぇか、ですか。』


 言葉遣いがおかしくなったブルナンどのが言う。流石に国王にビビったのか?


 「アレとは?」


 『知らねぇのか?前に話してたときに回ってきたぞ、そーいうのを説明する講義に使うスライド。確か…そうだ、これだ。』


 チャット欄に流れてきたのは、所謂リンクである。

 そのリンクをクリックすれば、閲覧専用でスライドが立ち上がるじゃありませんか!


 『それ、今のルームだったか?で共有した。』


 「救世主(メシア)はここにいた!!」


 めちゃくちゃ感動した。

 確認すると、超よくできたスライドで、言語も何種類か対応していた。さらにデザインがいい!あとでデザインの参考にしよう。


 「ブルナンどの…使いこなしすぎではないか?」


 レオンさんがそう尋ねた?

 確かに、思った以上に使いこなしている。


 『師匠たちと連絡取るのと新しい情報得るのとで結構使ってるからな。まぁ、あの中じゃ最低限って感じだけどな、…です。』


 「そうなんですね…意外と普及が早い。その情報いただきました!」


 スライドまで使って互いに講義なりコミュニケーションなり図っていたとは。まぁ、便利だし?

 あとで記録を…。


 「自分で話を逸らしておいてなんだが、話を始めないか?」


 レオンさんの声に我に返り、プレゼンテーションビューを開き、説明を始めたのだった。

200話も続いているとは…!!

私も驚いている所存です、はい。

読んでくださる方…本当にありがとうございます。


初期と比べて文章力とか向上しているといいな…。

展開スピードが落ちないように頑張ります。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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