セットアップ
本日は閑話を含む2話更新です。
閑話ではエマール伯爵邸の様子が見られます。
私は女神との会話から考えたことを瑞樹と共有した。
その後で、用意してきた器具を教会の設備に取り付け、作業を始めた。
「とりあえず、必要最低限の機能を入れないと。」
まず、最初に与えられた固有能力は消去不可能だから、エクセルは確定。魔改造はあり。
次に、ROOMという固有能力を入れて、あとはDOCとPPSMに加えて、Chatと画像認識系統。
ROOMは他の人との共同作業を可能にする、何かと連携して初めて要を為すもの。
DOCはDocumentの略で文書作成ソフト。
PPMSはおそらくだけど、●ower_●oint_Making_Slides の略で要はスライドを作成するもの。
Chatはそのままチャットである。
画像・音声認識系統は目で見ているものや聞いたものをデータとして認識できるもの。こういうとわかりにくいけど、Roomとかと連携させるとビデオ通話が可能。最近、遠隔でも可能ではないかと研究が進んでいる。
最後に、ひとつの固有能力としてではなく、固有能力に付随するいくつかの機能をまとめて組み込む。
計算機・時計・測定系(緊急時の応急処置用にちょっとだけ)。
「ひとまずはこれでいいかな。容量は危ないけど、整理したらもうちょっと小さくなるし。」
私の仕事は事務が多いからこういうのでいいんだと思う。
教会に行けば入れ替えることは可能だから、そのときはそのときさ。
なんでこんなに分かっている固有能力ばっかりなのかって?
実は、留学の最中にドワーフ連中がUSBメモリ的なものを開発しちゃって、向こうの固有能力全部持ち出してきたんだよね。ちなみに、ここに入っているものも、いま新しいメモリに入れ直している。
個人に与えられたアクセス権限によって固有能力を入れても使えないものがある。
例えば、"司祭"なんかは私が入れても使えないね。洗礼式を執り行うことはできないわけだ。
「よし!!荒削りだけどできた!!」
すぐに私はチューニングしてインストール&ダウンロードした。
私はワクワクしながら、自分専用のまっさらなディスプレイを教会の機器から外して、私に接続すると、画面に表示された。
そして、履歴0のはずのチャットに1つだけ受信があり、既読になっていた。
気になって、そのページを開くと、
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おめでとうございます!
本日はあなたが生まれてから7年7ヶ月7日です!
洗礼式を受けましょう。
あなたのための固有能力を用意して教会にてお待ちしております。
※当メッセージは送信専用アカウントから配信されています。ご返信されてもお答えできませんのでご了承ください。
※当メールの無断転載を禁じます。
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それは、今日の朝に夢で見た文章と全く同じ。
女神からのお告げというやつだった。
あのとき目が覚めてすごくがっかりしたけど、考えてみれば納得だ。
女神はこのシステムを利用しているのなら、こうなって然るべき。
ディスプレイがない以上、これを完全に理解していないとこの画面が頭にダイレクトに浮かばない。
おそらく、この情報がその人が理解できる何かに脳内で自動的に置き換えられるのだろう。
そして、これはきっと自動でプログラム通り送られるやつだ。
私はそれを理解してから、あのとき焼き付けられたIDか何かを入力して、新しいチャットページを開いてから、
「テストメール」
とだけ入力して送信した。
気が向いたら返事をする、と言ってたから、そのうち何らかのレスポンスがあるだろう。
「おっ、終わったか?」
佐助がそう声をかけてきた。
楓は詰将棋をずっとしていたらしいが、その声にこちらを向いた。
「ええ。約束通り、連絡先の交換をしましょう。」
連絡先交換
これはドワーフの街で既に知っていたことだが、連絡先を交換するにはふたつの方法がある。
①2人が直接会って同意の上で交換する。IDを教えるか、握手をして魔力を少し交換して登録する。
②共通の知り合いを通じて紹介で登録する。
女神のだけは特殊な例だろう。
以前、ID検索からフレンド依頼的なものを利用しようとしたら、はじかれていた。設定サイドにはなにもなく、システム上、拒否されるという感じだった。が、この方法で女神と連絡先交換ができた。
したがってこれは、女神が承認しないと使えない方法といえる。
私は佐助と楓と握手をして連絡先を交換、その上で楓と佐助が私を複数の知り合いと繋げてくれて、さらに、研究所のルームにも入れた。うん、これでどこでも連絡が取れるようになるというわけだ。
通知の設定もいじれるので、そこら辺は自宅に戻ってからで。
「…瑞樹は」
そう問うたら、既に自分で色々済ませていたらしく、連絡先交換まで既に終わっていたらしい。
「早くない?」
「お主も相当じゃぞ。我は何度目かしれない。だから、アクセス権を得た時点で、我は以前しようしていたセットをそのまま入れた。後で、必要かどうかの判断をして、新しいものも入れるつもりじゃ。」
「ちなみにChatは入ってる?」
「あぁ。ちなみに、契約時の我らの念話とは別経路じゃ。」
私と瑞樹は握手をして、連絡先を交換した。
「じゃあ、帰ったらでいいから入れてる能力教えてね。」
「もちろんじゃ。」
はーーーーーーーーーーー、疲れた。
もう、今日は帰って寝よう。
「よし、楓と佐助はまた王都の邸宅で、ね。連絡は入れるから。」
そう言うと、すぐにシュッと消えた。
「じゃあ、瑞樹帰ろうか。両親はまだ瑞樹の存在知らないから私に隠れて。」
瑞樹は首肯して、蛇の姿で私の手に巻きついた。
「セシリア?」
よし、帰ろうと思ったら、レオンさんとノエルが立ち塞がっていた。
「なんで、全て終わった帰ろう、みたいなことになってるのかな?俺ら、何も聞いてないし解決していないんだけど。」
「今日の用事は全て終了しました。つきましては、後で報告書を送らせていただきます。」
訳) 私は疲れた、もう帰りたい。
「今日はお帰りいただいたけど、明日朝からリアは王宮に呼び出されるよ。それでも作戦会議は不要?」
「明日?」
「だから、俺も詳しいことを聞きたいんだが。」
明日か…。
明後日とか明明後日は無理だったか。
なら、作戦会議は一理ある。正直、口裏合わせなきゃいけないことなんて色々ありすぎて困ってるくらいだ。
…けど帰りたい。
「…もう、私はお腹いっぱいです。帰らせてください。あとはリモートでよろしくお願いします。では。」
訳) もう嫌だ。けど作戦会議しなきゃなんないのは分かってるから、リモートで。私、寝ながら電話するし。
「リモートってなんだ?」
そこで私は思い至った。
チッ、レオンさん、それ系統の持ってないじゃないか、と。
私が以前レオンさんに追加したのは医療系の知識でROOMも音声・画像認識系も入れていない。
けど、女神と話した精神的疲労がひどい上に頭も使ったし、もうなんかやりたくなくなってきた。
そのとき、ふと思い出した人物がいる。
「ブルナンどのは?あの人、ROOM入れてた?」
「ロームか…、あやつは、入れてたな。通話もできるじゃろうて。」
「やった、それだよ!!レオンさん、エマール邸によって、あるものをブルナン殿に届けていただけませんか。それで、ブルナン殿と一緒にいてください。それで全ては解決します!!」
名案だ。
これで勝ったな。
「なにを言ってるか分からないが、なにかあるんだな?」
「ちゃんと作戦会議もしますし、大丈夫です。」
レオンさんは私とノエルを送り、そのときに部屋に持ち込んでいた予備のディスプレイを1台貸し出した。
レオンさんはちゃっかり私をエスコートしてキザなことをしていたが、そんなことよりも、家でダラダラできる喜びよ!!
その後、佐助を通じて、ブルナンと連絡先を交換、コンタクトを取り、時間を定めて音声のみリモート会議を行うことになったのだった。
今回のROOM参加者は5名←アカウントの数
私
瑞樹
ブルナンどの with レオンさん
楓
佐助 with ノエル
「明日のための対策会議を始めます。」
その作戦会議が始まった。




