表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/216

セシル 6歳・ノエル 4歳

 留学から帰ってきました、セシルです。


 私は6(**)歳になり、弟のノエルも4(**)歳になりました。


 これもいい加減面倒な気がしていますが、地球換算では6 x 1.5 = 9 歳なのです。


 ずっと留学をしていたせいで、異世界数が彼方に吹っ飛んでいますが、正直、問題はありません。

 だって、そっちの方が早いし?


 私の仕事は教科書作成が中心で、授業はノエルに任せてしまっています。

 あとは、授業の進度についてこられていない人がいないかの確認や、そろそろ苦手が出てきちゃうよね、辛いよね?という対策を取っている。


 他には、これから実施したいことの計画書の作成や、向こうで身につけた技術の確認、自分の勉強とやることはたくさんあります。



 留学から帰ってきてから、毎朝運動を取り入れるようになりました。

 向こうの生活の名残りみたいなものです。

 向こうでは体力をつけるためにトレーニングをしてましたから、それを続けているだけなのです。


 あとは、眼鏡をつけるようになったことでしょうか。

 初期に眼鏡をつくってもらって、すごく便利だったので、書類仕事をするときはつけています。

 他人の目があるところでは自重していますが、そのうちつけて出歩くと思います。



 「姉さん、今いいかな?」


 入ってきたのがノエル。


 まじで、1人で授業を運営しちゃってるのが怖いレベル。

 この子、2回目の人生だったりしないのかな、って疑っても仕方ないと思う。

 天才なの。本当に。可愛いし。


 「この部分なんだけど…僕もいまいちでね。論理的に組むところは問題ないんだけど、教えるにあたってはちょっと具体性に欠けると思うんだけど。」


 質問の仕方も本当に正確。

 分からない、ではなく、分からない部分をピンポイントで聞いてくる。

 ちなみに、今回の質問は新たにカリキュラムに追加することを検討中のプログラミング基礎の基礎である。


 「やっぱりそうか…。正直、それは私も持て余しているんだよ。この考え方は必要だと思うのだけれど、これを実践する道具が少な過ぎて。現在、その術をドワーフの街で探っているところなんだけど…。今年は断念かな。」


 私はソフトの方を多少いじることができても、ハードの方は全く分からない。

 これまでと専門領域が全く変わってきてしまうだけに、ドワーフの街も適用が大変だけど、彼らなら1年以内にどうにかする気がする。

 だって、私が行った固有能力のチューニングも私が留学を終えるころには、ある程度できる人たちがそれぞれの集落に誕生してたもの。


 検討中なのは、私も扱えたみたいな洗礼受託場(教会)にあるようなもの。あれのようなコンピュータを持ち運べるようにして作れないかと検討中。けど、それは難しそうだ。

 現在できそうなのは、新たにそれを教会に増設することくらいだろうか。


 「姉さんの方はどうなの?例の建物、できそう?」


 ノエルが私の状況を確認してきた。


 「うん、まぁね。土地は十分にあるし。それだけあれば、ドワーフたちがどうにでもしてくれる。あとは、報酬とかの用意かな。」


 検討中なのは、ドワーフの街の研究所の分室をうちの近くに建てることである。


 目的は、彼らとのより密接な関係、そして、授業を受け持ってもらうことである。

 部門によっては、もっと専門家の話を聞いた方がいい可能性があるし、多様な科目を選択できるようになる上、ディスカッションを中心にした少人数指導が可能になる。


 少なくとも、期間限定でそれを行って、興味の幅を増やして欲しいと考えていた。


 「それが検討できてからだね、こっちは。」


 いくつか検討しているものがある中で、際立つのがテストの企画である。

 テスト自体ならいくらでも行っているが、そのテストは特別だった。


 「うん、そもそも、私が固有能力を取得しないことには始まらないだろうし、内容ももっと詰めなきゃいけない。さらに言えば、国王陛下にも許可をもらって、最大限、領主さま方に協力してもらわないと不可能だろうね。」


 そのテストは、現状を危惧して企画したもので、1回限りの大仕掛けのものだ。

 大事なのは、限られた情報から正確に状況を把握する想像力、細かいところまで気づく観察力、そのほかもろもろ。

 ペーパーテストで測れないなにかを測るためのものだ。


 「でも僕は面白そうだと思うよ。レオンさんとブルナンどのもこちらに引き込むんでしょう?」


 「そうじゃないと流石に運営が回らないからね。」


 私は肩をすくめた。


 でも取り敢えず今年は、何事もなく穏やかに過ぎていくと信じています。


 7(**)歳になって、洗礼を受けるまでは…まだ穏やかな日常が続きますように。



♦︎♢♦︎



 数日後、レオンさんが私たちの屋敷を訪ねてきた。


 普通、家格が上のレオンさんたちのアズナヴール家に私たちが伺うのが正しいのだろうが、一般的なんて知らない。だって、家から出たくないもん、という我が家には通じなかったようだ。


 「久しぶりだね、セシル、ノエル。」


 レオンさんがキラキラと輝くエフェクトを伴って挨拶をした。


 「…オヒサシブリデス、レオンサン。ゴブサタデス。」


 私の反応にふんわりと笑った。


 正直、それが私に死をもたらすのだろう。


 レオンさんは絶賛成長期のようで、グングン成長が伸びて、声変わりもしかけています。

 第二次性徴期です。


 「相変わらず可愛いよ。会わない期間が長いのに愛おしさが増すばかりだ。」


 レオンさんはぎゅっと私を抱きしめて…

 …抱きしめてっ??


 「///なにしてるんですか??レオンさん?冗談も休み休みにしてくださいね?」


 「愛おしいからハグをする、問題なんてないでしょう?」


 「///問題しかないです。愛おしいとか、冗談でも破壊力すごいので、というか恥ずかしくないんですか?」


 以前から、そういう癖?があるのは承知していたところはありますが、年齢的に?その、つまり、もう子供じゃないんですよ、ってことです。


 「恥ずかしい?愛情表現とはこういうものだろう?」


 レオンさん、あなたは自分の魅力を自覚すべきです。

 身分、そして容姿もいいでしょう。

 絶対に、調子に乗る人が現れます。

 そして訪れる突然の死。

 絶対に刺されるから、絶対に、うん。


 ということをなんとか説明してみた。


 「まさか?セシリア以外にこんなことはしないよ。嫉妬の必要はないからね。」


 なんて返答された。

 ふざけているのかな?


 男性経験皆無の私は正直言ってキャパオーバーですよ。

 勘違いしないように予防線を張り巡らせても顔が熱いよ。


 「会えない時間が愛を育むって本当なんだな〜。」

 「なに言ってんですか?」


 あれれ?


 「会わない間に頭でもぶつけましたか?人格を入れ替えたとか。」

 「そういうセシルは遠慮がなくなったんじゃないか?それはそれで嬉しいが。」


 いや、遠慮とかじゃなくて、普通に心配なんですって。



 「……ラブラブもキリの良いところで終わらせてもらえますか?」


 この雰囲気を壊してくれた救世主はノエルだった。


 「そうだね、ノエル。ここにいても仕方がない。色々話も聞きたいし。」


 レオンはノエルの言葉に頷き、私を解放してくれた。

 そう、救世主はここにいたのです。


 「わかりました。セルジュ、エマ。」


 ノエルがパンパンと手を叩くとスッと現れる2人。


 「はい、ここに。」


 「レオンさんを迎える準備を。」


 「もう済んでおります、我が主。」


 さすがはできる執事と侍女。


 キビキビした雰囲気の彼らは立派な主従関係を築いていた。


 ノエルの雰囲気がなんか違うような…?


 「えっ…、ノエルこれなに? というか、エマもセルジュもどうしたの??」


 「なにって、別になんでもないよ?」


 「いつも通りでございます、お嬢さま。」

 「こちらへどうぞ、レオンさま、お嬢さま。」


 なんでもなくないよね?


 なんとなく、突っ込んではいけないような気がして、私はそこからそっと目を逸らした。

 

セシル7歳以降をガッツリ書きたいのでこの年の話は数話で終了する見込みです。

これまでに色々あった通り、"洗礼"の話が結構大きいので、これが終わらないと、主人公のスペックがあまりに上がらないというか、そう、困っているのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ