テストの企画
久々の投稿(2話)です。
セシルはドワーフの街へ戻ってきた。
「なにを考えているの?」
「ちょっとね…具体的なお金の使い道、かな。いくつか考えているのだけれど、もっと知識が欲しいかな。」
セシルは研究所のラウンジで会話をしていた。
ラウンジは誰でも利用することができ、研究者同士の交流の場にもなっている。
思いがけないアイディアを得るきっかけになることもあり、多くの人が利用しているのだ。
「経済とは回すもの。ならば、私がお金を貯め込むのも良くないと思うの。」
「別に個人の自由じゃない。確かにそうだけれど、経済の安定をあなたが考える必要はないのよ。」
「確かにそう。でも、うん、やりたいことがあるから、使う、が正しいかな。」
「やりたいこと?」
「私はこれでも人間の貴族だから領民のことを考えなければいけないの。それで、授業もやっているけど、それをもっと発展させられないかなって。」
「それって貴女のやりたいことなの?」
「うん…そうなんじゃないかな。結構楽しいし。ある種、研究に似ているんだよ。この教育を施したらどうなるかなって。」
「ふぅん。確かに、そう言われると面白いかも。だったら、研究資金利用したら?」
「それもいいけど、お金がかかりすぎちゃうかなって。」
「で、何を考えているの?」
ワクワク身を乗り出してその答えを待つ。
知らないうちに周りの研究者も集まってきて耳を傾けている。
「その、完全に構想、というか妄想の段階なんだけど、一つは自分以外の人が教えてくれないかなってこと。分野を細分化して、少人数指導をしてみたいなって。双方向だとなおいい。ざっくり言うと、ワークショップ形式で一回ごとに一つの疑問?についてディスカッションするの。もう一つは、ちょっと大々的な試験をやってみたいと。」
「前半はわかるよ。一応、ここでもやってるからね。後半は?」
「ちょっとした懸念点があってね。人間ってどうしたって権力闘争も正しい政治もできないと思う。何が正しいか、ってのは置いておいてね。だから、そうなったときに革命を起こせるような頭があればなって思ったの。地球の歴史で革命って起きているんだ。発起人は学者や記者ということで共通している。それは学があるかどうかなんだよね。おかしいって思えるかどうか。今後のことを考えるならば、そういう教育をすることが一番じゃないかと私は思ったの。」
「つまり、王が民を無碍にしたときに、それに気づいて政府を倒せるような人たちにしたい、ということね。」
「そういうこと。その中で私の懸念点は…」
セシルはいくつか懸念点を挙げた。
「これらを試験を通して学んで欲しいの。だから、内容としては…。」
考えていることをざっくりと挙げながら紙に書いていく。
「面白そう。」
「けど、時間も人も、色々と足りない。点数設定や課題設定にも一度実験が必要だと思うし、根回しも大変だ。なんなら国王陛下なんかも騙すことになるしね。内容の詰めも甘いよ。」
「だがよ、個人的にはこりゃ面白いと思うぜ。賭けてもいい。」
「遊びじゃないんですよ。」
「まぁ、そういう気持ちもあるんだけどね。」
セシルは苦笑いしていた。
「私が洗礼を受けた後、になるだろうね。私が洗礼を受ければ他とも連携を取れるから、この実行も幾分か現実味を帯びると思う。あとは建物だけど、プレハブっていうか…簡易組み立てで材料を運び込んで組み立て、みたいな。」
「それは可能だろうよ。」
「問題は経費と人材。給料はしっかり支払うけど、その上で生活の補償と。うん、労災は大丈夫だよね。正直、経費や人材の面だけでいえば、前半の方が大変だろうね。」
「ここから放映じゃダメか。」
「工事をしている人たちは亜人のことを知らない。ここの街のことも当然知らないんだ。現実的なのは研究室の出張所をエマール伯爵家の屋敷のそばに建てて、そこを授業用の建物とし、そこで授業を行う。顔が映せないならパワーポイントじゃ分からないか、黒板だけを映して音声だけにする、とか。問題は研究施設をどれだけ整備できるかってことになるか。」
「確かに難しいですね。」
「短期で交代ならありよ。なんなら、セシルと話すチャンスがあるんだし。出張所なら勤務形態にも問題はないしね。」
「…なんなら、これを短期で行った後でテスト、んで、他の人の内容をどれだけ共有できたか、ってならどうよ。」
「それは面白そうね。何も言わずに交流がどれだけ取れてるか、ね。」
会話は踊るように続く。
「問いに関して会話するなら、答えがない系の問題ですかね。」
「概ねそうかな。答えがあっても考えてやるならいいかな。」




