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天高くある架空の雲

 発端は、セシルの質問だった。


 「ここには教会はないのですか。雰囲気的に宗教とかへの信仰心は薄そうですけど、固有能力が存在するということならば、洗礼を受ける場所は存在するのではないかと。」


 そういうと、担当の人を連れてきてくれて、私を連れて行ってくれた。


 「一応、司祭の固有能力を持つアルショーヴルと申します。といっても、この街においては特別な役割を持つ者ではないのですがね。」


 謙遜をしながら自己紹介してくれたアルショーヴルさん。長いからアルヴさんと呼ぶように言われたのでそう呼ぶ。


 「アルヴさんは普段はどんな仕事を?」


 「しがない図書館の司書です。」


 弱腰な人だな…と思っていると、瑞稀が付け加えた。


 「ここでの図書館司書はエリート中のエリートじゃぞ?そして、中毒的に本が好きな本の蟲の集団じゃ。」


 一瞬で印象が変わった。


 なんか、怖い。


 「叡智の結晶のような奴らが体を壊すのは良くないとして、強制的に運動の時間が業務に組み込まれておるのが特徴的じゃな。奴ら、運動が嫌いだから。」


 あ、なんかすごいかわいそうになってきた。

 でも、健康を保つために適度な運動は大切だよね。

 

 「ここです。」


 案内された場所は六角形で中央に大きな鉱石らしきものが置かれている。


 「ここは重要拠点として、建て替えられても必ず丁寧に引越しされます。予備の施設も存在するのですが、壊れないに越したことはありません。この施設の仕組みを理解出来るものがいないので。」


 なんと。


 「なんの縁か、一定の周期か何かで転生者ってやってくるんですよね。勿論、それが全てじゃないでしょう。世界全体となると、意外と頻度が高いのでしょうね。その人たちがメンテナンスするんです。そして、新たな機能を付け加えていく。使用するのも転生者くらいですから。まぁ、確立された利用法もあるんですがね。」


 困ったようにアルヴさんが言う。


 「利用できないのはなんでですか?」


 私が尋ねると、少し間を置いていった。


 「…理解できないのです。」


 「??」


 「仕組みを全て理解する必要はありません。ただ、大まかに何が起こるのかをイメージできなければ、使用は不可能です。そのヒントは神話にあるという。だから、あなたにもお尋ねしました。」


 つまり、より多くのスマホの話を元にイメージできるようになることが重要と。


 「そろそろ神話の具体性もかなり増しましたので可能かもしれませんね。」


 苦笑しながらアルヴさんは言った。


 「そうなるといいですね。まぁ、まずは私が使えないといけないんでしょうけど。」


 大きな鉱石を見る。


 「瑞稀とかなら理解できそうだけど。無理なの?」


 「…無理じゃな。我は、我らは特殊でな。それらに干渉する権限を持たないのじゃ。ただ、契約している場合のみそのリソースを借り受けることができるがな。」


 よくわからないけど、無理らしい。


 けど、その理由はイメージうんぬん以前に権限の問題であると。


 「ふぅん。で、使い方について、どこかに残されていないのですか?」


 一応、使い方くらいはメモがあるだろうと尋ねてみた。


 「資料はあります。閲覧注意のところですから、申請が必要です。まぁ、セシルさんと瑞稀さまならば心配はありませんが、形式上は申請が必要になります。」


 「わかりました。では、申請を待ちますね。」


 私は申請が通るのをおとなしく待とうとした。


 けど、それで終わらなかった。


 「伝え聞かされている使い方があります。」


 そう言った。


 「天高くある架空の白い雲にはたくさんの情報がある。その雲は架空で現実にはないけれど皆がそう信じればある。情報が欲しかったら雲の上から取り出して、自分のものにする。自分が死んでも雲に残したものは消えない。また誰かが取り出して誰かのものになる。雲の上にあるものは雲を信じる皆のものである。奪い合う必要はない。」


 …天高くある架空の雲?


 「こんな感じですね。残念ながら、これでは鉱石との関係も分からずじまい。信じるとかそういった類はあまり好まれませんから、何かの隠語だと思うのですが。」


 そっか、そういうことなんだね。


 雲…即ち、クラウド。


 ならば、この鉱石はサーバーか何かか?


 なんにしろ、示唆してるのはクラウドに違いない。


 「人間は…」


 「?」


 「今、生き残っている人間はホモ・サピエンスという種類だ。少なくとも地球では。他の種と何が違ったのか。それが信仰の有無という。何かを共通して信じることができたから集団行動ができた。それが生き残ることにつながった。」


 「??」


 「信仰は意外と身近にあるもの。宗教もそうだけど、お金だって。共通して信じているからこそ、お金は価値を持つんだよ。」


 この場合も…。


 「何か、わかったのですか?」


 その問いに少し間を置いて。


 「そうですね。少し。核は掴めたと思います。確かに、地球にいた人間からしたら常識ですから。」


 おそらくは、ディスプレイがないのが最たる理由だと私は思う。

 ここまで、デジタルな部分を見てきたが、ディスプレイだけが恐ろしいほどに存在しない。


 ディスプレイがなければイメージが難しいのも尤もだと思う。


 そう、画面があればな…

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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