ドワーフの街 ~前編~
なんだか、よくわからない乗り物に乗って、やってきました、ドワーフの街。
まだ、地下にいるから、実感なんてないんだけど。
「こっちの昇降機の方が豪華なんだ。向こうは、バレないことが重視されているからな。」
なるほどね。
豪華にしたくとも無理だと。
目的を大事にする感じは好ましいな。
確かに、装飾も豪華で、なんというか、駅って感じだな。
階段と、エレベーターがあって、エレベーターに連れていかれた。
エレベーターは、広くて、前のと違って安心できるようなものだった。
暫くして、地上に着くと、そこは円型の建物で、背中合わせのように、エレベーターが並べられていた。
「<すご…。嘘でしょ。>」
思わず、感嘆を漏らしてしまった。
それも、日本語で。
実利主義なのか、飾られた雰囲気はないが、とても、実用的で、しっかりしている印象を受ける。
パッと見、王宮なんかよりも、ずっとすごい。
装飾は勿論、王宮の方がすごいんだけど、これを建てた人たちが本気でやったら、王宮なんか目じゃないね。
そして、ゆっくりとエレベーターひとつひとつを見ていくと、文字が書かれていて、そのうちの一つ、私が使ったものの文字を読むに、これは目的地を示していると思った。
"HUMAN"
エマール領でも、カイダタ牧場近くでもなく、人間、と書かれるあたり、人間の街との接点の少なさが窺える。
ここは所謂、ターミナル駅なのだ。
一つの路線に駅は一つしかないけど、それら全てがここで一つにまとまるから、ここを経由することで、色んな街に行くのだろう。
ここは経済的に潤うと。
中心地なんだな。
共通貨幣がドワーフ製なのも含めて。
外から大きな地響きが聞こえてくる。
「はぁ。奴らは…。」
瑞稀が呆れている…?
「何が来るの?」
「……」
私が聞いても、瑞稀は的確な答えを返さない。
「…ドーリ、おぬしは皆に言い聞かせておかなかったのか?」
「…いや、根回しはしたんだ。というか、したからこそ、というべきだろうが…」
要領を得ない。
というか、わからないことが多すぎる。
英語も、単語も、状況も。
なんか、騒いでるけど、私には何も聞き取れない。
瑞稀が私から抜け出して人型になった。
「ドーリ、今すぐに一息つける場所を教えろ。」
「えぇと、滞在予定の一番中央の宿です。」
「それかどこかとわれは聞いておる!!ここは一ヶ月もせんうちに区画も道も変わるのだぞ?」
「えっと、今ある街役場のようなところに旗が立ってますからそこから…えっと、目印は、というか、みたらわかる。」
「…セシルを歓迎する横断幕でも掲げておるのか…。しようのない奴らめ。これから1年も滞在するのじゃから、いつでも会えるだろうに。」
瑞稀が呆れて顔を顰めているのは分かるが、会話内容はまるで聞き取れない。
急いでいるのか、早口で、私に話しかける時とはスピードが全く違う。
「<セシル、少し飛ぶぞ。暴れなければ振り落とさん。大人しくしていろ。>」
瑞稀は私に日本語でそう言うと、私を脇で抱えて、ものすごい速度で走り始めた。
飛ぶように走っているから、一般的な走るとは全然違う。
すぐに建物を抜けると、建物の屋根の上を飛び跳ねながら渡っていく。
私には景色を楽しむ余裕なんかなくて、ずっと叫んでいた。
「<あそこじゃな?思った以上にはっちゃけておるわ。これでは一発で分かってしまうのう。>」
瑞稀は建物に窓から侵入、そして、やっと一息つくことができた。
なんだったんだ?
本当に。
ドワーフの街。
初っ端から心配すぎる。




