絡繰り
*注意*
セシル視点(ドワーフの街)の話では,
会話, 「」内の言葉は日本語で書かれていても, 英語で会話しています。
「」 = 英語
<> = 日本語
[ ] = 異世界語(筆談)
暫くの間、ルールが少し変わりますが、よろしくお願いします。
ドワーフが人間の職人のまちに建造した建物は見た目こそ他と大差ないが、細かく見ていくと、圧倒的な技術力の差が素人でもわかるだろう。
斜面の傾斜と建物の床の傾斜の差。
高床式になっている中で、地面と繋がっている部分が一つだけ。
断熱性を備えたログハウス?
などなど。
私も、その歴然とした差には気づいた。
だからこそ、私は"妖精"と呼称されていたドワーフに興味をもったし、"妖精"の姿を視認した人間はいなかった。
ドワーフのドーリがこの建物に侵入する様子を見たことはないが、おそらくは、地下道があるのだろう。
床には一箇所、色が違うところがあって、取手をつけられそうな仕掛けがあったから、ここを開けるとその道に繋がっている可能性が高いと見ていた。
端的に言えば、その予想(地下道を通っている)は当たっていた。
その地下道への扉?というか、蓋には鍵があって、その鍵も教えてもらった。
ダイヤル式ではなく、普通の鍵だ。
鍵を使って蓋を開けるとまた床が現れた。
思ってたんと違う
「セシル、その床に乗って衝撃に備えてくれ。」
私はドーリさんによる英語の指示をなんとか聞き取ってその通りに動く。
衝撃に備えろって?
手すりもないのにどうするのさ。
「じゃあいくぞ。」
ドーリさんも私と一緒に立ち、しゃがんで、地面にあるボタンを押した。
すると、地面が急降下した。
スピードはそれほどでもないけど、事前に聞いてないと驚く。
数秒して止まると、そこは地下道だった。
つまり、これはエレベーターである。
エレベーター
昇降機
えれべーたー
Elevator
うわ。
初めて見た。
初めて乗ったよ、今世で。
落ちたら危ないのだが、地下にはちゃんと壁というか、柵みたいなのがあって、安全に使えるようだった。
初っ端からどうかしてる。
「ドーリさん、上の蓋、どうやって閉めるんですか?」
なんとか英語を紡いで聞いてみると、
「エレベーターが動くと自動で閉まるようになってる。勿論、安全も考慮しながらだ。鍵は勝手に閉まる。」
と、説明がなされた。
なんということでしょう。
ちなみに、昇るときは別の絡繰りで蓋が開くらしい。
開ける分には鍵は必要ないそうだよ。
「セシルは驚きが少ないのぅ。つまらん。」
瑞稀が拗ねたように言うが、
「十分驚いてますって。確かに、地球にはエレベーターなんてありふれてましたけど、まさか、作っちゃうなんて…。人間のレベルを見ているだけに…。」
そして、もう一つ尋ねる。
「緊急時の避難経路ってどうなってますか。」
In emergency, 緊急時
evacuation route 避難経路
これ系統の長文を読んだことがあるっていうか、そういう単元があったから、覚えてたんだよね。
「階段がある。階段は50mに一つは用意されていて、この昇降機の壁も壊しやすくしている。」
なるほど、対策は取られているわけか。
うん、なんか、怖いように感じるけど、地下鉄ホームの方がよほど怖い気がしてきた。
地盤沈下とかの問題の原因に地下鉄があるのでは?と思っていた時期もあるから、微妙だけど、もぐらも穴掘るし、そこまで問題ではないかもしれない。(適当な想像。根拠なし。)
ドーリさんが小さく詠唱をして魔法を唱えた。
詠唱言語が謎だけど、なんの魔法だろう。
風が吹いて少し、空気が新しくなったような気がする。
つまり、換気の目的があるわけだ。
次に壁にある板に手をつけると地下道が照らされた。
これは、照明用の魔力供給装置なのかもしれない。
松明を地下道などの換気しずらい場所で使うのは良くないからね。
明るくなると、目の前にゲートのようなものと、コーヒーカップのような人が入れそうな木箱?のようなものがレールの上に規則正しく並んでいる。
「これに乗れ。」
ドーリさんに言われるがまま、静止しているそれに乗る。
1人1台のようだ。
ドーリさんが仕掛けを起動すると、それらは高速?で回り始める。
回るといっても、楕円、というか、もう片端が見えないので、直線が往復するような感じ?で、動いている。
要は、ロープウェイみたいな?
風をきって進むのは気持ちがいい。
風景を楽しめないのが地下の難点ではあるけれど、久々にこんな乗り物に乗って興奮しないはずがない。
酔わないように注意しつつ、楽しんでみる。
一つ一つの箱、乗り物には、緑と赤のボタンがついていて、赤にはSTOP、緑にはGOが書いてあるから、それ通りの意味だろう。ただし、この乗り物は、一つが停止すると、全てが停止する。つまりは、誰かが止まりたければ全体が止まる。これだと、多分、主要な乗り降りする場所にも停止ボタンだけついてそう。
しばらくすると、終着点が見えた。
おそらくは、そこが、ドワーフの街なのだろう。
さて、私は何を学び取ることができるかな。




