論理的思考
さて、前回の続きです。
A,B,Cの3名がいて、正直者が2人、残りの1人が嘘つきである。そして3名とも誰が正直者で、誰が嘘つきかは知っているとする。ここで、正直者とは常に真実をいう人、嘘つきとは常に真実と反対のことをいう人である。このとき、つぎのようなA,B,Cの証言が得られた。
Aの証言:Cは嘘つきである。
Bの証言:Aは正直者である。
Cの証言:Bは嘘つきである。
このような時に嘘つきを判定するのは一つ一つ矛盾を探していくしかない。
「あー。やっぱり、分からないというのが多いですね。共感します。他のに入れている人は勘かな?それとも自信かな?…では、根拠がある人以外、つまり当てずっぽうの人は分からないという黄色にしてください。…ふむふむ、根拠ありはほとんどいないね。でも、勘でもテストの空白を埋めるのはいいと思いますよ。根拠ありはみんなCかな?他もいるけど、Cが一番多いですね。…最初に答えを言いましょう。答えはCです。おめでとうございます。これからは解答根拠を説明していきますね。」
ノエルは問題が書かれていない部分の黒板を3つにわけた。
「これは一つずつやっていくしかありませんね。嘘つきが1人なので、Aが嘘つきだったとき、Bが嘘つきだったとき、Cが嘘つきだったとき、を試してみましょう。」
a ) Aが嘘つき
b ) Bが嘘つき
c ) Cが嘘つき
「まずは a) のときをみましょう。」
a ) Aが嘘つき
Aの証言:Cは嘘つきである。→Cは正直者である。
Bの証言:Aは正直者である。→Aは正直者である。
Cの証言:Bは嘘つきである。→Bは嘘つきである。
「A以外は本当なのでAの言っていることだけ反対のことが事実となります。なのに、CはBが嘘つきだと言っている。あれ?Aが嘘つきなのにBも嘘つきなら、問題の最初の部分、嘘つきは1人というのが成り立たないじゃありませんか。これを矛盾といいます。理屈の辻褄が合わないことですね。この言葉の由来については別の問題を解説するときにお話ししましょう。とにかく、これは理屈が合わないのでまちがいです。これでAは嘘つきでないことがわかりました。このように一つ一つ可能性を潰します。少し時間をおくので、Bが嘘つきでないと示してみてください。魔道具の電源を切ってもらって、できた人からつけてください。これがこの辺まで灯りが灯ったら説明を始めます。」
a ) Aが嘘つき
Aの証言:Cは嘘つきである。→Cは正直者である。
Bの証言:Aは正直者である。→Aは正直者である。
Cの証言:Bは嘘つきである。→Bは嘘つきである。
Bが嘘つきだと、この中に嘘つきがAとBの二人になってしまうため矛盾が発生する。
b ) Bが嘘つき
Aの証言:Cは嘘つきである。→Cは嘘つきである。
Bの証言:Aは正直者である。→Aは嘘つきである。
Cの証言:Bは嘘つきである。→Bは嘘つきである。
全員が嘘をついていることになってしまうため矛盾が発生する。
c ) Cが嘘つき
Aの証言:Cは嘘つきである。→Cは嘘つきである。
Bの証言:Aは正直者である。→Aは正直者である。
Cの証言:Bは嘘つきである。→Bは正直者である。
矛盾が発生していない。
「いかがでしょうか。このように証明していきます。黒板をご覧ください。これでCが嘘つきであることが確定しました。Cが嘘つきでないと説明ができないんですね。このような問題を論理パズルと呼びます。論理的な思考を高めるために皆で取り組んでいきましょう。」
「はい。出題者のセシルです。今回は嘘つきを見つけるものでしたが、これ以外にも頭を使う問題はたくさんあります。矛盾やダメな例を考えて証明していくのは一つの問題解決方法として武器にしてください。正解を見つけるのではなく間違いを見つけていくのです。皆さんにはたくさんの武器を持ってもらいたいと思います。敵、というか問題に対して、どのアプローチ、つまり武器を使ったらいいかな、って考えるためには、たくさんの武器を持っておく必要があると思います。その中の一つとして、間違いを見つけて、残ったのが正解、というやり方を装備してください。今回場合分け、というか可能性として3つを比べました。Aが嘘つき、Bが嘘つき、Cが嘘つき、の3つですね。今回は単純でしたが、問題が難しくなった時に、これらの可能性を少なく考えてしまう、つまり、可能性を見落とすことがあります。その場合は正しい答えに辿り着けませんので、ご注意ください。」
「ありがとうございます。では、先ほどと同じように、テストで解けた人は赤、理解できた人は青、まだ分からない部分がある人は緑、全然わかんないって人は黄にダイヤルを合わせてください。…理解してくれた人が多いですが、全員ではないみたいなので、これもまたゆっくり授業で扱いたいと思います。」
「続いての問題はこれですね。7x13(**)」
掛け算は九九ならぬ七七という一桁の掛け算を暗記してもらっている。
そして、筆算なんてやってない。
つまり、この問題は解けるはずがない。
「先に出題意図からですね。姉さん。」
「はい。この問題はこの先に勉強する大きな数の掛け算です。しかし、今回は解き方に関して道筋を示しています。これに則って解けるかどうか、ということですね。ポイントは掛け算というものを正しく理解しているかです。初歩の初歩に立ち返って欲しいと思います。今回の解き方の道筋は、こんなの知ってるよ!!って思った人が多いはず。なぜならば、授業の最初に説明したものだから。でも、基礎こそ真理、それを理解してもらいたかった。そして、規則性の話に通づるものがあるので、考えて欲しいと思いました。」
「僕もそう思います。考え方は最初にならったそれと同じ。暗記するまで、皆さんがどのように計算していたか、覚えていますか?足し算ですね。つまり、これは足し算の問題なのです。7x7から7x11(**)を求め、そこから7x12(**)で、最後に7x13(**)を求める。丁寧に7を足していくだけなんです。理解していただけたでしょうか。基礎とは全てである。難しい問題を解く時に難しい知識を求めがちですが、実際には足元の、基礎にあります。そこを軽視しないことを一番に伝えたかったのです。いつも基礎を大事に、真理を大事にして欲しいと僕も姉さんも願っています。初心忘るべからずという教訓についての短い文章がテストに載っていたはず。そこにもヒントはあったのです。」
今回のコンセプトを至るところに張り巡らせているから、国語の問題がヒントになることもある。
我ながら、コンセプトを守れたんじゃないかと思っている。(自画自賛)




