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テスト問題の解説

 「皆さんこんにちは、セシルです。テストはいかがでしたか。基本問題は少なかったので、思ったように点が取れなかった人が多かったかもしれません。でも、大丈夫です。ゆっくりと授業で解説して、解けるようにしていきます。今回の試験の意図は、知らない問題、初見の問題にぶつかったときにどう対処するかをみたいというものでした。その問題を避け、確実に点が取れるものを狙ってもよし、わからないなりに考えるもよし、考える際にはこれまでの内容と結び付けられるかどうか。あとは時間との兼ね合いを考えられるかどうか、ですね。その問題が解けたかどうかよりも、次に出題された時に解けるか、自分がそれにぶつかったときの対処はどうだったか、について考えてほしいところです。では解説する問題についてはノエルにお願いします。」


 私は出題者であるから、解説よりも問題の意図や願いを詳らかに説明したいと思う。


問. 規則性をもって黒と白の丸が並べられている。52(グーショウヌー)番目の丸を答えなさい。


●○○●●○●○○●●○●…


 「解説を行うノエルです。姉さん、セシルは解説の後に出題者として出題の意図を説明するので、そちらにも注目してください。まずは単刀直入に、答えは●です。具体的に説明していきましょう。こちらの黒板をご覧ください。」


 ちなみに52(**)=37(10)である。


 「この問題を解く方針は大きく2つ、いや、3つですね。①規則性を見出して計算で求める。②規則性を見つけてひたすらに書く。③当てずっぽうで2択。これらが考えられます。③は解いているとは言い難いですが、このような問題では分からなくとも解答欄を埋めるという選択肢があると僕は考えます。僕が解説するのは①の方法です。②の方法は途中から分岐すれば可能ですね。両方に共通している規則性というものを見つけていきます。」


 「問題には規則性を持って並べられている、とあります。ここは国語の力が問われますね。規則性があるとはルールに則っているとのこと。つまり、この並べ方には決まりが存在するのです。そしてよく見ていくと、●○○●●○が繰り返されていることがわかります。四角で囲ってみますね。こうするとわかりやすいのではありませんか。」


●○○●●○ | ●○○●●○ | ●…


 ノエルが黒板に記した。

 問題用紙に書かれていたのは13(10)個だったのでここで途切れる。


 「この並び方が繰り返されているのがわかりますね。ではこの直後、ここはどちらかわかりますか?…こういうときのために新作の魔道具があるのでしたね。手元にあります魔道具はこのようなときのために作成したものです。同じものをこちらに用意しています。側面にあります、電源をこのように入れてください。電源を入れるとこの部分が点灯します。確認してください。」


 ノエルが隣にある受信して点灯するものの一つに魔力をこめ電源を入れるとそこに白い光がたくさん灯されていく。

 これは電源が付いているものがいくつあるかを示しているもので、この白い光の数だけ電源をつけている人がいるということだ。そしてもう4つ似たようなものがあって、それぞれ赤、青、緑、黄の光がそれぞれのリモコンで発信した色に対応して点灯する。どれか一つのみを選ぶ仕組みにしているので重複はないはず。


 「では●と思う人は赤○と思う人は青にダイヤルを合わせてください。このように回すことができます。そして、合わせたところに応じてこちらが光ります。つまり、この光は人数を表すことになります。では手元のボタンを押してください。この問題の列のすぐ次にくるのはどちらだと思いますか。自分の予想をボタンで教えてください。」


 ノエルはこれの使い方について私が教えるまでもなく思い当たっていたようだった。授業をやっている人間として、有効な使い方がわかるからこそ、この魔道具作成に乗り気だったのだ。


 「青の光の方が多いですね…。そうです。答えは○です。規則性、つまり決まり事として、●○○●●○がありますから、●の次は○ですね。では一度その魔道具の電源を切ってもらって、あ、ちなみに、こちらの白い灯りは電源を入れている人の人数を表しています。こちらも随時利用していきますね。」


 「方針②についてはこのように次にくるものを予測しながら、延々書き続けることなんですが、今回は計算で求める③を行います。この規則性の一塊を周期と呼びます。この1周期は6です。なぜなら●○○●●○は6つですからね。これを1として、何周期あるかを考えます。2周期の最後は15(**)ですから、これは掛け算で求められることがわかります。これが意味するのは、6x(周期数)=最後のものと言えるでしょう。よって、求めたいのは52(**)番目ですから、6x6=51(**)なので6周期にあと1つ加えたものですね。よって答えは●だとわかります。」


 説明はざっくりとしているが、黒板に書かれた書き込みは細かく、わかりやすい。丸は書かないが、周期の区切りは全部書いている。うん、これでわからなかったら私にもお手上げだな。正直、ノエルの方がわかりやすいと思うんだよね。


 「再び魔道具を使って皆さんの意見を聞きたいと思います。テストのときもこの考え方で解けた方は赤を、テストでこの考え方をすることができなかったが、この説明を聞いて理解できたという方は青を、計算方法がわからない人は緑を、規則性がわからないという人は黄に合わせてください。」


 ノエルは分からない人をさらに二つにわけたみたいだ。


 「青が一番多いですね。で、次が緑で、一番少ないのが黄色と。…わかりました。計算が難点のようです。また、規則性もわかりにくいということがわかったので、今後の授業で扱う機会を設けたいと思います。ですが、すみません、本日はやることがたくさんありますので、次に進もうと思います。姉さん、セシルに出題した意図を聞こうと思います。」


 「はい。いかがでしたか。状況が変わっても、掛け算を使うという選択肢に持ち込むためには掛け算とはなにか、どういうときに適しているかをきちんと理解する必要があります。今回の問題ではノエルの言うように方針が3つ立てられたはずです。少なくともこの3つの中のどれか、つまり最後の適当にどちらかを書く、という選択肢にたどり着いて欲しかったな、と思います。この問題は2択のようなものなので、どちらかを書けば、まぁ、半分くらいは当たります。しっかりと問題を読み、空欄を埋めていただければと思います。次に、今回は解答欄に考え方を記す欄を追加しました。この問題はさっきも申しました通り、当てずっぽうでも当たってしまうんですね。ですから、しっかりと根拠を示せるか、をもう一つのポイントとしました。で、この解答根拠の重要な点は自分が分かっていること、自分の中で決まりきったこともしっかりと書くことです。暗黙の了解じゃありませんが、書かなければ分からないことを書かないという人が多いです。これは研究でも同じ。条件や判断根拠は漏らさずに全て書くことを意識してください。今回の問題は次の教科書で学ぶ割り算という新しい計算方法に通ずるものがあります。これに自力で辿り着けた人は自信を持ってください。また、今後数ヶ月間、教科書の内容はあらかた終わっていますので、今回のテストに出されたような問題を解けるように勉強していきます。これらの問題に似たものが普段のテストに出ると思って、繰り返し勉強してください。私からは以上です。」


 皆、困惑していると思うが、今回のように初見で解くのと、何度も何度もやった上で解くのとでは難易度が段違いだから心配する必要はない。


 「姉さんの言っていたこれと似たような問題ですが、授業ではゆっくり扱いますし、何度も数を変えて解くので、普段のテストとあまり変わらないと思います。今回、皆さんが大変だったのは初めて見たからです。次に見た時はもっと落ち着いて解けると思いますよ。リンゴの皮を初めて剥いた時は大変だったでしょう?でも、何度もやれば無意識にできるようになる。それと一緒です。心配しないでください。では、次の問題に参りましょう。」


問. A,B,Cの3名がいて、正直者が2人、残りの1人が嘘つきである。そして3名とも誰が正直者で、誰が嘘つきかは知っているとする。ここで、正直者とは常に真実をいう人、嘘つきとは常に真実と反対のことをいう人である。このとき、つぎのようなA,B,Cの証言が得られた。嘘つきは誰か答えよ。


Aの証言:Cは嘘つきである。

Bの証言:Aは正直者である。

Cの証言:Bは嘘つきである。


 「これはどの教科の問題かわかりにくいですが、僕は算数と思っています。この問題は知識ではなく、文章を読み解き、考える力が問われる問題ですが、いかがでしたか。また聞いてみましょう。答えがAだと思う人は赤、Bだと思う人は青、Cだと思う人は緑、分からない人は黄を押してください。いや、初見で見たら、誰でも、そんなもの知るわけないだろうっ!!って言いたくなりますよね。僕も最初はそうでした。姉さんも初めての時はそう思ったみたいですよ。でも、必ずわかるんです。皆さんはどうでしたか?」


 よくある論理パズルだけど、初めてみた時は「知るかっ!!」って思うんだよね。論理パズルの存在自体も知らなかったりすると。でも、論理パズルというだけあって論理がある。つまり、矛盾が発生するんだ。そういうことが他の問題で理解できていると、この問題もどこかで矛盾があるんだなって思える。でも、この問題じゃなくても論理パズルに触れたことがなければ、意味がわからないと思う。まぁ、当てずっぽうで埋めるよね。


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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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