叫びたい
「誰かにこれ、頼めないものなんですかねぇー!」
「うっせ、それが理解できんのはここにいるやつだけなんだよ。」
「魔道具って理解しないと作れないんですかぁ?」
「基本的にはそうだなっ!!だが、これならできねぇこともねぇがっ!!意味が分からなすぎて嫌になっちまうだろうがっ!!」
「古代系のならできるんですねっ!!というか、代わりに魔道具作ってくれる魔道具って作れないんですかっ!!」
「魔道具をつくる魔道具??意味わかんねぇ!!」
「姉さん、意味わかんないけど、賛成っ!!正直、姉さんこの仕事向いてないしっ!!その魔道具に任せれば良いだけっだからねっ!!」
「向いてないって…不器用なのは自覚してますっって!!」
「ってか、誰がその魔道具つくるんだっ!!」
「誰って!!」
「ブルナンどのにっ!!決まってるでしょうがっ!!」
さて、会話しながら作っているのは件の魔道具。
増産のための作業なのですが、魔物の蜘蛛の糸を回路のように繋いでいくから、正直辛い。
家庭科の裁縫でちゃんと針穴に糸を通せていないのに、幼い不器用な指でどうしようもない。
よって会話には終始怒りが紛れる。
まぁ、仕方ないよね。
頭使わない単純作業なんて私や彼らが最も忌み嫌うものなんだから。
さて、いいかげん現実逃避なんてしてないで、対策を考えるべきだと思う。
「誰かっ!!暇そうな人はっ!!いないかなっ!!」
「これでっ!!お茶会が無しになるならっ!!喜んでっ!!やるけどっ!!」
「あ゛ーっ!!せっかく政治の勉強やる気になったのにっ !!」
叫びながらやるのはまあ仕方ない。これくらい見逃してほしい。
「あぁ、大変そうだね。」
笑顔でレオンさんが言う。
それは私たちの怒りを煽る行為だと分かってやっているのだろうか。
一斉にレオンさんに怒りをぶつけ出した私たちはマトモだと思う。
「ははっ、酷いなぁ。あとで覚えておくように。とくにセシル?普段から色々募ってたんだ。仕方ないよね?」
なんか、黒い気がする。
気のせいかな、笑顔が黒い。
「ノエル、それが嫌なら今日1日で全内容を詰め込んでも良いんだよ?それにブルナンどの、年初めの夜会以外だって本当は義務なんだよ?」
私たちは震え出した。
スマホのバイブのように。
着信が来たわけではない。ただ、なんかやばそうなオーラを受信しただけだ。
冷や汗がダラダラとでる。
「まこっっとに申し訳ございませんでした。」
私たち三人が口を揃えて言ったのは仕方ないと思う。
「ノエルは2日で、ブルナンどのは夜会を一つ、セシルは数時間で許すことにするよ。俺は寛大だからね。それが済んだら綺麗さっぱり忘れることにするよ。」
これに口答えでもしたらどうなってしまうのだろうか。
やばいということだけははっきりと分かる。
私たちは震えながら黙々と作業を続けるのであった。
これから起きる制裁を恐れながら…。
レオンは本気で怒っているわけではありません。むしろ、彼らが好きだからこそ戯れるつもりで怒っているから、レオンなりの甘えです。ブルナンやノエルは分かってはいるが、それでもレオンが実行するのが分かっているからビビっている。笑いながらジョークのようにそれをするから逆に怖い。セシルは遊ばれていることに気づいていない。レオンがセシルを嫌うことは100%ありえない。セシルは八つ当たりしたから怒られるのは当然だと思っている。何をされるのかは分からないが、とても怖い。でも、不思議と暴力を振われたり、傷つけられたりすることはないと無意識に信じている。




