遊学
「これらをカリキュラムに含むのは当然として、経済と政治についても公民みたいな感じで学んでおきたいよね。」
「え?姉さん、これを授業に含むつもりなの?」
「当然でしょう?これは周知して皆が取り組まねばならない課題。知らなければ始まらない。とはいえ、これをそのまま説明するわけではありませんよ。それとなく問題意識を持ってもらえる具体例を持ってきてディスカッション、つまり討論してもらう形が適切と考えています。正直、政治や経済については私も勉強が足りませんので、できればどこかで習いたいのですが、この国の政治体制はともかく、経済に関しては期待できそうにありませんし…。」
Economyと黒板に書き込む。
「…その経済とやらはともかく、政治体制なら俺がなんとかできる。一応これでも宰相ができるくらいの教育は受けていると自負している。」
レオンさんやっぱりすごいや。
「ありがとうございます。では、早めに履修することとします。それに加えて幾つかの政治体制を学んでもらうことにしましょう。問題は経済。貨幣を発行しているなら最低限のことがわかるはずであるから、ドワーフとかの方が詳しいですかね。」
「…かもな。政治や経済を学ぶならドワーフのところかヴァンパイアのところが適切じゃろうな。まぁ、言語でいうとドワーフの方が幾分かマシか。ヴァンパイアの方は顔合わせも済んでおらぬからな。」
瑞稀の助言を参考にするのであればそうだよね。
「ん、ならできればそこに留学できるといいかな。短期集中で詰め込みたいし、教科書作成も終わらせたい。更に言えば、ドワーフの街には招待もされていたし、興味あるんですよね。技術とかもうありふれているから、ちょっとアイディアがあればいろんなものが形になりそう。」
「それなら奴らも喜ぶじゃろうて。」
うんうん。
まぁ、問題は山積しているんだけどね。
①授業をどうするのか
②亜人関係のことを何も知らない両親にドワーフの街の滞在をどう説明するのか。
①はノエルに任せればいいんだけどね。だって、ノエルってば超優秀。ノエルの負担が大きくなるのが不安。とても不安。過労で倒れないといいな。
②はもう、諦めよう。何を言われても知らないふりをしよう。
「姉さんが考えていることくらい想像がつくけど、僕の心配より両親への説明ね。」
やっぱりだめか。
「質問なんだが、俺が学べるのは、魔法が優れているのはどの集落なんだ。」
「そりゃ、オークの集落だろうな。ラテン語じゃよ。地球の現代では使われていなかったといわれる語じゃ。古い語だが多くの言語の礎となっているらしいぞ。我も少しは話せる。これがいくつかの言語を渡り歩いた中で魔法に最も適切なんじゃと。人間が使う魔法体系とは全くの別物じゃから大変だろうが、それが楽しいのだろう?」
「当然だぜ。」
わー、この人やばい人だ。変態だ。
ラテン語…もう使っている人いない言語な気がする…。
学術的には近代くらいまで使ってたのかな?近代、結構昔だよね?誰だよ、その言語を広めたやつは。
「セシル、お前にそんな目で見られるのは不本意だ。」
「ブルナンどのの言う通りだな。セシルの方が幾分ひどい。」
「まさか、姉さんはそこまで変態ではありませんよ。一般的なエマールの人間です。彼はそうではないでしょう?」
…ノエルまで私を少なからず変態と考えているのが少し、いや、かなり気に食わないのだが。
「大丈夫、どんなセシリアでも俺は好きだから。」
「…慰め方として間違ってると思いますけど。」
友人に対して、どんな変態でも友人だよ、というのは慰めになるんだろうか。
「仕事の負担については姉さんが気にしなくていいよ。教科書とかを並行してつくることはできないだろうけど、授業とその分析だけなら問題なくこなせるよ。姉さんに教科書を頼めるなら僕は問題ないよ。」
「ありがとう。助かる。教科書に関しては私が全て責任を持ちますから。よろしく。」
「…俺の仕事は政治体系に関する説明か…まぁ、問題ないだろう。今回の社交期間が終われば王宮に出仕する時間も長くなるだろうが、通常業務には支障はない。」
レオンさんもすごいな。
レオンさんは洗礼を終えたことで、仕事を多く任されることになるらしい。
…本来はそこまで仕事は多くないそうなんだけどね。
「やることが決まったならば、前進するのみです。」
さて、今日も始めましょう。
 




