地獄のお茶会??
混沌を極めるこのお茶会。
地獄と云わずしてなんと表現しようか。
お話といってもできることなんてない。
趣味の範囲が違いすぎる。
「セシル、絵を描くのが上手でしたよね?」
急に変なパスをしないでくださいっ!!
「いや、上手というほどのことでは…」
本当に、現代日本にこの程度の画力、どこにでもいますから。授業中の落書きレベルですから。
「デザインも面白くて私とても好きなの。なにか、服を描いてくださらない?」
確かに斬新なのかもしれない、この世界には。
だが、本来ありきたりなものであり、尚且つ、私はファッションに造詣の深いものでもない、むしろ、浅すぎる浅瀬だったから、参考にできるのは前世の漫画のみ。
「どんなものでしょうか。流石にイメージが一つもないと…。例えば、シチュエーション、どこに、どんな目的で、誰が着る服なのか。」
「そうね…着るのは私。場所は分からないけれど、パーティーとかではなく、気軽に着れるものがいいですわ。で、ついでにデートもできそうなものがいいわ。ドレスを着るのはとても大変じゃない?長時間着るとそれだけでも疲れてしまうわ。ですから、デートができて、尚且つ楽に着れるもの。なにか考えられないかしら…?」
デート、つまり男ウケするもの。うーん。モテない人には分からないや。でも、ある程度おしゃれで、カジュアルと。
でも、この世界ではカジュアルすぎるものってあまりないから。
ワンピースにジャケットっぽいもの、またはカーディガンを羽織らせる。
おそらく、コルセットをつけない、着心地を追求するなら、ゆるっとした方がいい。
スカートは足首くらいまでの長さだから、模様とかをつけて。二重にしてもいいかも。
イラストで描く分には自由だからね。
あとは、デートならペアルックもありと。
服を揃えるのはとても面白いはず。
…なんか物足りないな。
私の画力じゃ描ききれないけど、本来好きなのは柄がちょこっとだけ見えるやつだ。スカートのヒダからちょっととか、そういうやつね。あとは深い色とかかな。私は着ないけど。
「こんな感じでしょうか。素材とかパターン、型紙とか、そういうのはプロにお任せですね。正直分からないのでお手上げです。」
ササッと落書きを描いてみせた。
「セシルにも分からないことがあるのですね。」
「分からないことだらけですよ。私はあくまで専門を持ちませんから、基本的に疎い、あまり知識をもちません。」
「…私にはそうは見えませんけれど。でも、素敵な絵ですね。」
いや、全然素敵じゃない。
だって、影とか服の皺とかが描けないんだもの。途中、花柄とかいう適当な指示を文字で書いちゃってるし、スカートの広がりも少し違う。足に至っては描きたくないからとスカートで誤魔化した。
全世界のイラストレータさん、デザイナーさん、すみません。
「これ、頂いても?」
「どうぞ。ただ描いただけですから。」
「ありがとうございます。」
落書きを人にあげるのってちょっと恥ずかしいかもしれない。
「はぁ、姉さんはホイホイ人に渡す…。」
「姉上がそれを何に使うかなんて分からないのに…。」
ノエルにレオンさん、ため息なんかついて。大袈裟だよ?だって、落書きだもの。
さて、この話題がおわってしまう。
つまり、次の話題に困るということである。
「…そうですね。でしたら、遊びとかいかがですか?ほら、セシルってたくさんゲームを知っているでしょう?楽しいもの、ないかしら?」
気遣われているのが手にとるようにわかる…居た堪れない。
しかし、そうだね。
ゲームというなら、大人数でしかできないものをやろうか。
いつもの人数だとゲームにならないアレを。
レオンさんは、参加させない。意味がないから。
「そうですね。せっかく人数も多いことですし。私とレオンさん以外で3人、周りにいる皆さんを合わせれば12(**)人くらいになるでしょうか。それならできそうですね。」
「…人数が必要なゲームですか。なぜセシルとレオンは抜きなのですか。」
「私はゲームの進行役をしなければならない関係で参加できません。レオンさんは…レオンさんがいるとこのゲームが無意味になってしまいますから、参加できません。」
「セシル?」
レオンさんが不満そうにこちらを見ているけれど。
「…だって、ダウトのときもそうだったように、レオンさんが一人勝ちしてしまうから。これは他の人たちがゲームを楽しむために必要なんです。」
差別でも仲間外れでもない。まじでゲームが成立しないのだから。
「ならゲームの進行役というのはダメなのか?」
「進行役はゲームをしっかりと理解していないといけないので。少なくとも初回は無理ですね。」
「そうか…」
「レオンさんはゲーム中、一言も喋らないでくださいね。あと、目線とかも控えて。」
「そこまでしなければならないのか!!」
「はい。」
ベルさまがご機嫌良さそうに笑っている。
ブルナンどのもなんか楽しそうだ。
人の不幸は蜜の味、なんてね。
さて、少し準備しましょうか。
私はタイプライターも用いてカードを準備する。
そう、薄々お察しの通り、ゲームとは人狼である。
人狼ゲーム、それぞれで細かいルールは異なるが、村人or市民に紛れ込んんだ人狼を見つけるゲームである。会話などから人狼を炙り出すゲームなため、嘘を探知できてしまうレオンさんはゲームを破壊してしまうのだ。
さて、ゲームを始めましょうか。




