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イザベル・フォン・アズナヴール

 さて、休業期間に入ったわけだが、私たちには色々とやるべきことがある。


 ここまで長い道のりだった。


 課題を説明した後、たくさんの手紙が届いた。


 質問は多かったが全てノエルとレオンさん、そしてブルナンどのが片付けてくれたので私のもとまで回ってくる内容はなかった。


 その間に、私は読書感想文の添削内容を改めて確認した上で、テストを作成した。


 科目は国語と算数と混合だ。


 ちなみに研究という科目では事象に関する説明ではなく、実験方法や調査方法ごとに学習しているので、授業で扱ったことがない実験や調査を文章で出し、どの方法にあたるかや、どのような方法をとることができるかを考えさせる問題を取り扱うことにした。化学、物理、生物、などと分けない方法はあまり経験がなかったので苦労したが、なんとかなったのでよしとしよう。


 また、領地でも統計調査に関することが多かった。といっても、算数がまだ追いついていない部分が多いため簡単な棒グラフが中心。母数との関係などをなんとかわかりやすく説明したが、ちゃんと抽出できるだろうか。


 他にも文章を読みながら考えるような問題をたくさん出題した。知識はいらない。ただ、考えさせるだけ。


 そうそう、お金の概念も説明しながら出題することにしたよ。算数で掛け算を取り扱う上で、代金の合計を計算させる問題が出せないからね。


 算数のテストではまだ習っていないようなものを出す。ただ、導くための文章を備えてね。規則に則れば辿り着けるように、規則を見つけるように、が今回のテーマだ。傾向を読み取り、活かす。全てにおいて重要なことだからね。


 国語は、まぁ、この世界の古典?みたいなものはあまり見つからなかったけれど、貴族の学習の最終課題みたいな文章があって、その文章を出題する。貴族の皆さんも文字を読める、普通に話せるがゴールなわけで、高度ことなどせず音読して終わりなのだけれど(だから私もノエルも触れたことがなかった)、読んでみたら意外と内容が深い深い。これを正しく読み取れるかどうか、ということを大事にしたいと思う。




 うん、テスト作るって難しいねっ!!


 でも、それが終わってしまえば意外と暇になるわけで。


 私は再来年の教科書、というか学習内容を定めようと思っている。どこら辺から選択科目を作っていこうか、専門的な科目を作っていこうか、と考えているところだ。


 だが、実はちょっとだけ根に持っている貴族?娘たちの発言から公民的な授業を入れ込もうと考えている。理由は、私自身ももっとこの世界、というか王国の政治体制に興味関心を持つべきだし、民主制でなかったとしても、知った上で任せるという方がよりよいと思ったからだ。あとは、貴族も意外と忙しんですよ〜ってアピールか?


 公民?というとちょっと堅苦しいし古臭い。かといって、政治経済ってほどしっかりガッツリやるつもりはないため、現代社会くらいがちょうどいいと思うんだけど、現代っていうとスマホを持ちながら闊歩する時代という私のイメージがあるから却下。ネーミングも考えないとね。




 そして、しばらくは自らの勉強とカリキュラム作成に打ち込むと思っていたのだが。


 「失礼しますわ。ごきげんよう。ずっと一緒に食事をしているのに、あまり打ち解けられなくて残念でしたの。ですから、本日少しの間は私ともお喋りしてくださらない?」


 イザベルさま、レオンさまのお姉さまがいらっしゃった。

 いや、突撃してきたが正しいだろうか。


 「姉さん、随分前から相談されていて、数日前には決まっていたでしょう?僕も今日は予定を入れていないから、問題はないよ。」


 あぁ。そんな気もしてきた。

 流石にアポなしではなかったか。


 でも、なにを話せばいいんだ?

 このファッションにも流行にも気遣ってます、みたいな人と話せることなんて何もない。


 一流の雑談、みたいな雑談関係の本、全て読み込んでおけばよかったー。もはや遅いし、現実逃避甚だしいんだけど。それに、読んでたとしても対応できてなかった気がするけど。


 「改めて、イザベルです。最初から姉と呼んでほしいといってきたのに…残念ながら実現に至っていませんの。この機会に呼んでくださらない?」


 はい、最初から高難度の球を投げてきたー。


 よく考えてほしい。会話はキャッチボールだ。掴めない、投げられない、球を投げてどうするんだ。これはもはや、球ではなく弾だ。銃弾だ。火薬を原料にして飛ばしているに違いない。


 ほら、ノエルも困った顔をしている。


 「姉上、流石に二人が困惑しています。いきなりすぎますよ。」


 「会って初日に婚約を結ぶ男に言われたくありませんわ。ここ数ヶ月の間一緒に食事をしていますもの。」


 まぁ、そうだけどさ。会話なんてなきに等しかったじゃないか。


 というか、会場が私の部屋なのはなんで?


 いつもは使用人がゼロに等しいのに、今日はたくさんの人がいて、お茶やお菓子?を用意してくれている。


 私は飲み水があれば十分だったからね。


 普段、皆さんには朝の支度やお掃除をお願いしています。正直、自分でやるべきでしょうが、仕事を奪ってしまわないようにせめて自らのものは片すようにしてます。あとは感謝の言葉を大事に。


 そんな、人に慣れていない私からすると、授業参観かっ!!とツッコミたくなるほどに緊張している。


 で、なんの話をしていたっけ?


 「えぇっと…僕たち一応、伯爵家の末席でして…。」


 「えぇ、知っていますわ。ですが、貢献の度合いでいえば、社交に積極的でないところを抜きにしても公爵家に引けを取らないでしょう。それに、私の愚弟のことは"さん"と呼んでいるのでしょう?」


 それとこれとは次元が違う。

 レオンさんは様をギリギリさんに直したが、姉と呼ぶのはまた違ったハードルだろう。


 「だから、そうですね、イザベルお姉さまでは長いですから…ベル姉さんとでも呼んでくださいな。あぁ、でも、ベルさまでもいいかもしれませんね…。これはこれで…、ふふふ。」


 イザベルさま、をベルさま…ちょっとハードルが下がった?


 「ベルさま…?」


 「セシル!!可愛い。」


 いや、可愛いは違うだろう。

 そして、なぜ抱きつく。


 「姉上、離れてください。」


 「なんでですか?義妹を可愛がって何が悪いのです?」


 「私の婚約者です。」


 やっと離れられたと思ったら、今度はレオンさんに抱きしめられている。


 「私の前で猫など被らなくてもいいのですよ?」


 「知りませんね…なんのことでしょう?」


 姉弟喧嘩か…、あれ?うち、喧嘩したことないな?


 「あまりくっつくと嫌われるわよ?」


 「そんなヘマはしませんからお構いなく。」


 うーん、ノエルとは喧嘩しないからな。もはや、同志?みたいな。


 「えっと…では僕もベルさまとお呼びします。」


 「ふふ、少し仲良くなれた気がするわ。」


 「姉上、あまり二人を困らせないでください。」


 なんか、騒がしいな。

 お菓子とかお茶とか、こぼさないようにしないとな。


 お菓子…ご飯食べられなくなったらどうしよ?


 「ブルナンどの。お久しぶりですわ。」


 「少しはマシになったようで。」


 「あら?お妃教育の成果かしら。頭悪い人と会話したくないとかいう偏屈者とも会話が成立して嬉しいわ。」


 「チッ、これだから面倒だぜ。」


 さっきまで空気だったブルナンどのは不機嫌だ。


 なお、他の人がいるため、瑞稀たちは隠れている。


 で、なんの話をするの?

 絶対、間がもたない自信があるんだけど。


 「ふふっ、そんなに力まなくてもいいのよ?ちょっとお話相手になって、ちょっと親密になってくれればいいだけなのだから。」


 「姉上、"ちょっと親密に"なら用は済みましたよね?お帰りください。」


 「レオン、心が狭いわよ?」


 仲がいいんだな…。

 なんというか、微笑ましい?

 ちっちゃい子たちが戯れあっているのを見ているようだ。


 「セシル…その目線は甚だ不本意なのだが。」


 「??」


 なにを言っているのかな?


 「その顔はとてもカワイイけどさ。」


 最近、レオンさんが変なこと言うんだけど、恋愛小説にでもハマったのかな?


 あの手の台詞は現実で言わないって知らんのかな。


 まぁ、恋愛とかしたことないから分からないし、なにより、文化が異なるからね。フランスみたいなお洒落というか愛に生きる?というか愛と情熱の国、それはスペインだっけ?(全て独断と偏見です)は意外と口に出して伝える文化だった気がする。



 「…レオンってこんなこと言う子だったのね。ノエル…レオンはいつもこんな…。」


 「はい。仕事中はさすがにありませんが、報われないのがなんとも不憫で愉快…いや失礼。」


 「あらあら…」


 「聞こえてるぞ。」


 「姉さんには聞こえてないけどね。」


 「あらあら…」



 フランスといえばエッフェル塔、マカロン、その他お洒落だったり芸術だったりというイメージがある。

 スペインはなんか、赤い服着てダンス踊るやつ。フラメンコだったかフラミンゴだったか。そう、薔薇を咥えてやるやつね。とっても情熱的な雰囲気がある。パエージャとかアヒージョとかすごく美味しい。あと、アホはスペイン語でニンニク。

 どちらのヨーロッパの国で、スペインは地中海に面していたっけ?魚介のパエージャがあるくらいだから、海には面していると想像できる。ヨーロッパにはたくさんの国がある。世界史は得意でないけれど、ローマ帝国時代にはみんな統一されていたんだっけか?いや、違うかな。言語体系が似ているけれど、言語自体が異なることから推測して…で、コンスタンティノープルに遷都とか、キリスト教を容認するか否か、その前にギリシアのポリスがあるよね…フランスといえばフランス革命、イギリスといえばピューリタン革命と名誉革命。絶対王政からの脱却。名誉革命で大事なのは王族を殺していないこと。よってイギリスには現代にも王室は存在した。革命というならば、産業革命や宗教革命も外しては考えられない。宗教革命は確か、金があれば救われるというところから外れよう…


 「セシル、セシル。おーい、聞こえてる?」


 「…レオンさん??」


 あれ?なんだっけ?

 確か、宗教革命の話をしていて。あれ?


 なんでレオンさんに抱きつかれているんだ?


 「人の話を聞かずに考えに没頭するなんて、いけない子だね?」


 なんで耳元で言うんですかっ!!

 なんか、ゾワゾワってする。


 「さて、お話しましょ。」


 ホント、カオス。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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