表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/216

セシルの計略

 ダウトを始めると順調に手札が増えていく。


 百発百中の勢いでレオンさんが当てるからだ。


 わぁすごい。


 絶対に人狼とかできないわ。100%当ててくるし。(占い師の意味が恐ろしいほどにない。)


 ただし、ここからはどうかな?


 私はまず、自分の手札をシャッフルして自分でも分からないまま札を出した。


 「1」


 私の声にレオンさんは反応した。


 「ダウト」


 …確かに私の手札の中には1は1枚もなかったからね。嘘判定もできるだろう。


 次に回ってきたとき、私は同じように手札をシャッフルして自分で分からないまま札を出した。


 「4」


 レオンさんは反応しなかった。


 「ダウト」


 代わりにノエルが反応したが、それに対してレオンさんは反応がなかった。


 私がカードを捲るとカードは4でなかったため、私の手札が増える。


 だが、丁度いい。


 次が楽しみだ。


 「7」


 なんだか分からないままカードを出した。


 レオンさんの反応はなし。


 「ダウト」


 ノエルが反応するが、レオンさんの反応はなし。


 カードを捲るとそのカードは7だった。


 その後は普通にゲームを続け、レオンさんが一番に上がり、あとは二人で泥試合をした。



 結果をまとめると、


i )嘘の自覚(+) レオンさん(+) カード(+)

ii ) 嘘の自覚(-) レオンさん(-) ノエル(+) レオンさん2(-) カード(+)

iii ) 嘘の自覚(-) レオンさん(-) ノエル(+) レオンさん2(-) カード(-)


 のようになる。


 つまり、嘘の自覚があるかどうかが重要であって、嘘をついているかどうか自覚がない、本人にも分からない状況下では嘘を見抜くことができないといえるだろう。


 「…確かに万能ではない。むしろ、厄介ともいえるのではないか?」


 …そうかもしれない。


 「万能なものなど存在しません。どんな道具も使い方次第です。固有能力もまた、一つの道具として、使われるのではなく、使えるよう、考えていく必要があるかもしれません。」


 その固有能力は厄介なものともいえるかもしれないが、デメリットがない、懸念点がない道具など存在し得ない。

 必ず優れた点は欠点を内包するものであり、優れた点を持つが故に厄介なものである。


 「それは捨てられない道具なのでしょう?ならば、使いこなす他になにもありません。下手に怖がって知らずにいる方が、危険を招く可能性があります。固有能力が個々の資質によって与えられるものならば、レオンさんに資質があると判断されたということでしょう。即ち、使いこなせる可能性が高いということです。過度に恐るる必要はないかと。」


 ありゃ?上から目線だったかな?


 「僕も姉さんに賛成です。レオンさんはその能力に全てを委ねてしまわないからこそ選ばれたのでしょう。全ての考えを一つのものに依存するのはとても恐ろしいことです。数字だって本当に全て信じていいのか分かりません。あくまで一つの判断根拠となりうるだけです。最終的に判断するのが自分とわかっていなければ、全てを自分以外のせいにしてしまうでしょう。それが揺らがないこと、それが資質なのだと思います。」


 手柄は自分のおかげ、失敗は誰かのせい、これは有名なことだ。


 驕らない、責任譲渡しない、最終的な決定は自分、全てにおいてコンピュータ、AIと付き合っていく上で大事なことに一致する。AIにだって間違いはある。いや、間違いではない。参照する情報が適切でなかったり、目的に沿ったものでなかったり、合理的が故に倫理に差し障ったり、処理方法がことなったり、とても低い確率を切り捨てたり、結果的に良い成果を生み出さない可能性が存在する。


 この世界に生まれ、洗礼というシステムを知った。

 固有能力はコンピュータに近しいものなのではないかと思うようになった。計測系統が多いことや、自動的に計算を代行するもの、体力が伸びるものは例外としてよく分からないが、それらが多いように思う。

 固有能力などに依存した結果がこの荒廃した文明である。


 固有能力自体も諸刃の刃なのかもしれない。


 「あぁ。助かった。二人のお蔭だ。まさか俺の知らないところで別の検証が進められていたとは知らなかったが。」


 頭をポンポンってされた。


 これが兄とか先輩とか、年上の人ってやつなのか…。

 あまり親しい年上っていなかったから新鮮。


 「…女神さまはここまで見ていたのか…?」


 「レオンさん?」


 「いやなんでもない。」


 レオンさんは何か呟いたような気がするが、はぐらかされた?ようだ。


 「はいはい。仕事ですよー。ただでさえ押してるんですからね。というか、次の授業で姉さんから全体へ課題について通達するんでしょう?その準備も大詰めですよ。」


 ノエルが仕切ってその日は仕事に移行した。


 「資質だけじゃないだろうな…」


 レオンさんはなにかを呟いたが私は気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ